第2266話 模倣サーブを返せ
ミアの操るネオドライブ系の模倣サーブに苦戦するアルテミス。
☆麻美視点☆
クリムフェニックスとの試合の1セット目。 まだ序盤ではあるものの、ミアさんが操る西條先輩のネオドライブサーブの模倣。 それを上手く拾う事が出来ずに苦戦しているー。
「また来よるで、ミアの模倣サーブ」
「またネオドライブ系のサーブだー」
助走距離を見れば一目瞭然ー。 西條先輩が開発したネオドライブ系のサーブは、威力を上げる為に助走距離を大きく取るという特徴がある。 わかりやすいー。
でもわかりやすいのはそれだけで、サーブそのものは中々見切る事が出来ない厄介なものだ。 何せ、回転の掛け方次第で色々な変化球になるのだから。 ドライブ回転による下方向への変化、横回転によるスライダー変化にシュート変化に加え斜め回転まである、正に変幻自在のサーブだ。 それだけでも厄介なのに、仮にボールに触っても超スピンにより、大きくバウンドしてどっかに行ってしまうのだ。 無茶苦茶強いサーブなのだー。
「嗅覚を研ぎ澄まして、サーブの種類を読み取るのだー……」
ミアさんから感じる匂いは……。
「むっ! スラッシュサーブだ」
スラッシュサーブはネオドライブサーブ系の一つで読んで字の如く「/」の方向に鋭く落ちるサーブだ。 かなり前の方に落ちるサーブだ。
パァンッ!
「佐伯先輩の方に来ますー!」
「見たらわかるわよ!」
それもそかー。
佐伯先輩はボールの変化をしっかりと見極め、身体を低くく沈める。 基本姿勢が出来ているー。
「っと!」
パァンッ!
「おお!」
ひ、拾ってるー!? 佐伯さん、あのサーブを普通に拾ってるよー!?
「ナイスやな和香はん!」
「まあね」
や、やりよるー。 この人、自分は凡才だとか言っておきながらもスパイク技術やトス技術、更にレシーブの技術も持っているとか、この人の方が亜美姉の代わりに相応しいのではー?
「ボケっとしてんと麻美もバックアタックに入らんかいな」
「おー」
あまりにびっくりして忘れてたー。 すぐさま眞鍋先輩の背中側からバックアタックに向かう。
「渚はん!」
「おっしゃ! エースの力見せたる!」
力強く踏み切ってジャンプし、攻撃に移る。 相手ブロックは控え選手に変わっており、渚なら十分抜く事も可能だー。
「おらあ!」
パァンッ!
ピッ!
「ナイス渚! それに佐伯先輩もー」
「何とかミアはんのサーブは終わらせられたな」
「次は私も拾うぞー」
「私ももうミスしません!」
「その意気よ」
ローテーションして、次なるサーブは渚の出番。 スコアは5-5で互角の展開。 亜美姉達が居なくても、今のところは戦えているー。 とはいえ、やはり総合的な力はクリムフェニックスの方が少しばかり上かー?
「はっ!」
渚のサーブは小細工無しのパワーサーブ。 しかし、後衛下がったミアさんはすかさず新田さんの模倣を始め、リベロプレーヤーに変貌を遂げる。 な、何と厄介な選手かー!
「拾いまス!」
「あれ、反則でしょ!」
「今更どすえ」
世界大会で何度か対戦して、ミアの力は嫌という程沁みている。 アメリカの天才の名は伊達では無いー。
「でも、ミアさんがレシーブすれば高速連携はしてきませんね」
「うむー」
その通りなのだ。 ミアさんにさえサーブを拾わせられれば、トスを上げるのは正セッターの浜中さんになる。 浜中さんは高速連携を成立させられる技術は持っていないので、それを警戒する必要が無いのは助かる。
「宮下さん!」
「はいよー!」
パァンッ!
ピッ!
そうは言っても、強力なアタッカーばかりのクリムフェニックスの攻撃を止めるのは容易ではないー。 あっさり決められて5-6に。
「やっぱり強いですね……まるで世界戦です」
「そら当然でっしゃろ。 こっちもあっちも、世界大会の代表メンバーばかりなんよ?」
「そ、それもそうですね」
まあ、クリムフェニックスの方はその代表メンバーの中でも特に上位のメンバーが集まっているけどー。 少しばかり差があるのはこちらはわかっている。
その後のラリーは何とか取れたものの、更にその後は2点連取されてしまった。
さて、ここで今シーズンからのルール改正を説明させていただくー。 何と、テクニカルタイムアウトが廃止されたのだ。 国際大会やプロリーグではテクニカルタイムアウトはなく、通常のタイムアウトに統合されている。 各チーム二回取る事が出来るタイムアウトだが、大抵のチームは今まで通りリードしているチームが8点、16点に到達したタイミングでタイムアウトを取り、ワンプレー後に負けているチームが即タイムアウトを取るというのが、既に全チーム間の暗黙のルールになっている。 何せ、タイムアウトの時間は30秒間しかないからねー。 二回連続で取らないと水分補給に作戦会議なんかやってられるかー!
というわけで、まずはクリムフェニックス側がタイムアウトを取る。
私達もベンチに戻り、水分補給を行う。
「どうですか?」
「やっぱり強いー」
「まあそうでしょうね。 何せ世界トップレベルのメンバーが揃ったチームですから」
「そうね。 でもまあ、戦えないレベルじゃないわ」
「そやね」
「今のところ良い勝負ですからね」
「そやけど、相手の方が一枚上ってのは変わりまへんで。 気ぃ抜いたら一気にやられるわ」
「うむー」
やはり眞鍋さんはわかっているー。 こちらは割と全力で頑張って何とか食らいついてるのに対し、あちらにはまだ余裕がありそうだ。
「さて。 とりあえずコートに戻ってワンプレー消化しましょ」
「おー」
「今のうちに作戦まとめておきますね」
前田さんがタブレットを操作し始める。 前田さんの作戦で力の差を何とか埋めたいところだね。
その後のワンプレーな何とか取り、離されずに済んだ状態でタイムアウトを取るー。
「帰ってきましたね。 作戦を伝えます。 と言っても多分もうわかってると思いますが……。 サーブでミアさんを狙える時はミアさんを狙って下さい。 ミアさんが狙えない時は適当で良いです。 ミアさんが狙えない時は大体こちらの麻美さんが前衛にいるので、ブロックと雪村さんでしっかり対応。 佐伯さんもここからはオールラウンダーで動きましょう」
「りょーかーい」
「はぅ!」
「わかったわ」
やはり佐伯先輩にもオールラウンダーの素質はあるようだー。 割とどんなプレーも器用にこなすからねー。
「何とか食らいついていきましょう」
「おー!」
さて、1セット目中盤開始ー。 サーブは佐伯先輩の番だ。 相手チームのミアさんは前衛に移動していて、サーブで狙うのは少し難しいかー?
「ミアさん狙いね」
「ほへ」
佐伯先輩はそう言うとサーブを放つ。 何と、アンダーサーブでー!? 確かにそれならば前にいるミアさんも狙いやすいけど。
「どうせ普通に打っても新田さんに拾われるならこれで良いのよ」
と、佐伯先輩。 な、なるほどー。
「拾いまス」
予定通りミアさんに拾わせて高速連携を封じる。 こうなると浜中さんのトスになるので、匂いで誰にトスをするか読む猶予が増える。 これは月島先輩に上がる!
「月島さん!」
「おっしゃ!」
マリエルさんと天堂さんがブロックに向かう。 二枚ブロックはクロスを開けてのジャンプ。 月島先輩からの匂いは、ブロックを避けてのクロスだ。
「こっちだ!」
「おらあっ!」
パァンッ!
亜美姉直伝のレシーブが上手くハマって成功!
「ナイス麻美!」
「ホンマに亜美ちゃんの代わりが成立しとるやん!」
「なはは!」
「笑ってんと走りなはれ」
「おっと」
私もちゃんと攻撃に参加! お返しの同時高速連携を渚が決めてスコア8-8に追いつくのであった!
佐伯和香の活躍で同点に。
「奈々美よ。 アンダーサーブってより斜め下からボールの腹を叩いてるわね」
「軌道が普通のアンダーサーブより低い山なりになるね」




