第2259話 並ぶ赤ちゃん
退院してきた新米ママ達。
☆亜美視点☆
11月27日の土曜日。 先日退院して帰って来た私は、愛娘の美夕を抱っこしながら「皆の家」へとやって来た。 マロンとメロンは夕ちゃんが連れて来てくれているよ。
「あーぅ」
「うん? 美夕どちたのかなー?」
「何か言ってるのか?」
「わからないけどねぇ」
赤ちゃんが何か意味のある言葉を口にする事はまずなく、自分の意思を伝える行動は「泣く」の一つである。 たまに笑っているような事もあるにはあるけど、何もしなくても笑っているので、何かよくわからないのである。
「着いたよぉ。 皆来てるかな」
「奈央ちゃんと紗希ちゃんは、しばらくはここに泊まってるんだろ?」
「うん。 だから、真希ちゃん、美希ちゃん、界人くんは居るはずだよ」
「かなり騒がしい事になってそうだな」
「だねぇ」
赤ちゃんはとにかく急に泣き出すのである。 美夕もそうだけど、お腹が空いたら泣き、オムツが気持ち悪くなったら泣き、ちょっと機嫌が悪くなっても泣く。 時間問わずに泣くので夜中も寝れないのである。 宮下さんの言う通りだね。 そして、そんな赤ちゃんが「皆の家」には集結しているのだ。 赤ちゃんの泣き声の大合唱になる事請け合いだ。
「おはよう」
「おはようございます」
「来ましたわね、美夕ちゃん」
「来たよぉ。 あ、美夜ちゃんももう来てるんだね」
「ええ」
「よいしょ。 美夕、ここで大人しくしておいてね」
「きゃっきゃっ」
「今は機嫌良いみたいだな」
「すぐにグズるよ」
現在、「皆の家」のリビングは育児仕様に改装されており、移動式ベビーベッドが設置されている。 赤ちゃん達は、「皆の家」内はこのベビーベッドを使って移動可能である。
「なはは。 可愛いのが一杯並んでるー」
「広大はまだ来てないね」
「もう来ると思いますわよ」
遥ちゃんは私達より少し早く、男の子を出産した。 今は自宅に帰り、旦那さんと育児に励んでいるが、日中は「皆の家」に来ている事が多い。 いつもベビーカーに赤ちゃんを乗せて、歩いて来ているよ。
「あ、遥達来たわよん」
少し待っていると、遥ちゃん達も到着した。 旦那さんも今日はお休みみたいだね。
「赤ちゃん皆勢揃いだな。 広大をベッドに移してと」
遥ちゃんは我が子をベッドに寝かせて、自身はソファーに座り一息ついている。
「ふぅ。 育児始まって3週間か。 あっという間だなー……」
「紗希ちゃんとこなんか、双子の育児は大変だろ?」
「なはは。 お姉ちゃん、一人っ子でも大変そうー」
「大変よ……」
「まあ、そうでしょうね」
「亜美ちゃんも、家の中で奔走してるよぅ」
「してるな……」
「みゃー……」
「なー……」
私もまだまだ手探りで子育て中である。 知識としては持っていても、実際やってみると戸惑う事も多いね。
◆◇◆◇◆◇
そんなこんなでお昼前になりました。 今日はお客さんが「皆の家」に来る予定なんだけど、そろそろかな?
ガチャ!
「だはは! ウチらが来たで!」
「きたデ!」
「騒がしくしないでちょうだい……」
「うわはは……」
「すいません……」
「でス」
「子供達は勢揃いしてるのか?」
もちろん、東京組の皆さんである。 私達の子を一目見ようとやって来たのだ。 東京組の皆はベビーベッドの方へ向かい、赤ちゃん達を覗き込む。
「ほう、どの子も可愛ええな」
「ソヤナー」
「これが紗希の双子かいな。 うへー、ほんま二人ともソックリやん」
「どっちがどっちかわからないですね」
「紗希っちはわかる?」
「右で寝てるのが姉の真希で、左が妹の美希よん」
「そうなんですカ」
「親にはわかるんだな……」
「まあね」
「可憐、皆可愛いわねー」
「かーいーねー」
「お姉ちゃんになるのよ、可憐」
「おねーちんー」
可憐ちゃんには、赤ちゃん達がどんな風に見えるんだろうねぇ。 まだ、皆のお姉ちゃんとしての自覚なんて無いだろうけど……。
「皆、大人しいやん」
「たまたまですわよ」
「一人泣き出したら大合唱だよ」
「そ、そうなんだ……」
「みゃー……」
一人が泣くと、何故か皆釣られて泣くんだよね。 そうなるともう大変である。
「にしても皆揃うて11月出産かいな。 ほんま仲良えなあんさんら」
「しかも同じ誕生日が二組っしょ? 有り得ないって」
「それに関しては私も同意だわ」
「あはは。 確かに同時期に妊活始めたけど、まさかこんな事になるなんてね」
「誕生日を祝うのは楽だけどね」
と、紗希ちゃんは笑いながら言う。 皆まとめて誕生日パーティーが出来るから、確かに楽ではある。
「本当、皆可愛い顔してるわ」
「でス」
東京組もしばらくは並ぶ赤ちゃんを眺めては、顔を綻ばせていた。
◆◇◆◇◆◇
「てな感じで、結構大変なのよね」
「まあ、その辺は慣れかしら。 今の時期はまだマシで、生後半年ぐらいからが一番きつかったわ」
「夜泣きが凄かった時期だなぁ」
「そうそう。 半年から10ヶ月ぐらいがピークだった」
「そ、そんな凄いの?」
「可憐はまあまあ凄かったわよ」
「ママー、だっこー」
「はい」
可憐ちゃんはもう随分としっかりしている。 もう2歳だもんね。 多分ベッドで寝ている小さな赤ちゃん達の事も認識はしているだろう。 ただ、あの小さな「赤ちゃん」というものが何者なのかまでは理解出来ていないかもしれない。
「あかちゃん、みたい」
「ん? 赤ちゃん見る?」
「みるー」
可憐ちゃん、赤ちゃんに興味津々みたいだね。 可憐ちゃんぐらいの歳になると、色々な物事に興味を示すらしい。
「かーいーね」
「可愛いね」
「可憐ちゃんも可愛いよぉ」
「かれんも、かーいーねー」
「ほわわーん」
「何か癒されるわね、この空間」
「ですわね」
ペット達もいきなり増えた赤ちゃん達を受け入れてくれているようで、たまにベッドで誰かが泣くと私達を呼んでくれる。
「皆でなら、子育てもそんなに苦にならない気がするね」
「だな」
「わかんない事あったらいつでも訊いてちょーよ。 先輩ママ美智香さんが色々教えてしんぜよう」
「た、頼もしい……」
「きゃはは。 美智香っちがバレーボール以外で頼もしく見えるなんてね」
「うわはは!」
「はあ、調子に乗らんで……」
「美智香姉はいつもこうです」
「あ、あはは」
◆◇◆◇◆◇
さてさて。 東京組が千葉へ来たのは、何も赤ちゃんを見に来る為だけでは無い。 今日の夜には、遅ればせながら奈央ちゃんの誕生日パーティーが行われるのである。 私達元妊婦組も、勘を取り戻す為に少しずつ家事復帰をしている。 私と紗希ちゃんは、台所係のサポートに回るようにしている。
「具材の下処理は終わったよぉ」
「ありがとうございます!」
と、こんな感じだ。 たまにマロンが来ては私を呼ぶのだけど、美夕が泣き出したら呼びに来るらしい。 本当に賢い猫なので、美夕の子守りを任せても良いのではないだろうか?
これからが大変な子育て。
「亜美だよ。 美夕可愛いよ」
「早速親バカ発動してるよぅ」




