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第2258話 我が子と対面

今度は亜美にも陣痛が。

 ☆夕也視点☆


 11月18日の木曜日の朝。 亜美から連絡があり遂に亜美も陣痛が始まったとの事。 麻美ちゃんと共に病院へ向かう為、車に乗り込んだ。


「亜美姉もいよいよかー。 お姉ちゃんもそろそろだけど、西條先輩と蒼井先輩みたいに同時になったりしないかなー」

「そうそう起こる事でも無いだろ……」

「それもそー」


 ピロリン……


「おん? 奈央ちゃんからメッセージが。 ……佐々木君も連れて来てくださいだってよ。 何でだ?」

「ほへー」


 ピロリン……


「奈々美も陣痛始まった……って……どうなってんだよ!?」

「なはは! では先にペットショップへイクゾー!」


 そうそう起こる事でも無いはずの事象がそうそう起きているわけだ。 どんだけ仲良しなんだよあの二人は。


 ブロロロ……



 ◆◇◆◇◆◇



 ブロロロ……


「着いたぞー。 もう毎日来てるなー」

「たしかに」

「ふむ。 まだ二人共病室にいるのか?」

「さっき始まったとこらしーからねー。 まだ病室にいるはずー」

「なるほど。 じゃあ病室行くか」


 3人で病院の中に入り、もはや通い慣れた道を早足に歩いてVIPフロアを目指す。 部屋の前まで来ると、中から何やら叫び声が聞こえてくる。 これは亜美の声だな……。


「痛い! 痛いよ! 死んじゃうよ!」

「ちょっとは我慢しなさいよ……」

「ダメだよ! これはもう命の危険を感じるレベルだよ!」


 ガラガラ……


「あ、夕也達が来たわよ亜美」

「おおおぉぉ゛ぉ゛!」

「ダメね、これ」

「だ、大丈夫なのかこれ?」

「な、なはは」

「今、ちょうど陣痛の波が来てるとこみたいね。 亜美のはかなりキツいのかしら? この子の場合は大袈裟なだけかもしれないけど」

「じぬ゛よぉぉ゛」

「ったく。 亜美、来たぞ。 大丈夫か?」

「ゆ、ゆうぢゃぁ゛ん」


 涙目になりながら手をバタバタさせている亜美。


「あんま暴れてると、ベッドに縛り付けられるわよ?」

「……うぅ。 な、波が去ったよ……。 でもまた来るって考えたら恐怖でしかないよ!?」

「か、変わってやれたら良いんだが、そういうわけにもいかないからな。 頑張れ」

「亜美姉、大丈夫ー?」

「な、何とか生きてるよ……」

「死にゃしないわよ」

「奈々美はどうなんだ?」

「今は波が引いてるわ。 まだ間隔が長いから、分娩室入るのはだいぶ先よ」

「そ、そうか。 明日も仕事休んでるから今日は付き添える」

「ええ、ありがとう」

「私もずっと付き添うぞー。 二人とも頑張れー」

「ありがとう。 頑張るよ」


 亜美と奈々美はしばらくの間、交互に陣痛に苛まれながら過ごしていた。 本当にこういう時に出来る事って無いんだな……。



 ◆◇◆◇◆◇



 3時間後、相変わらず陣痛の波に悶えながらベッドに寝転がる二人を見ていると、亜美と奈々美のお袋さんが病院に到着した。


「あ、お母さんー」

「麻美も来てるのね。 奈々美、どう?」

「きつい」

「亜美も?」

「死ぬほど痛いよ……」

「同時に陣痛開始なんて、本当に仲良いわね」

「私達よりも仲良いわねー」


 亜美のお袋さんと奈々美のお袋さんも大親友だが、それよりも亜美と奈々美の方が仲が良いようだ。 まあ同時に出産しようってんだからなあ。


「どっちの孫娘の方が可愛いか」

「勝負ね、美那」

「血は争えないな……」

「だな」

「なはは!」


 何せ、同じような事を奈々美と亜美も言っていたからな。 どっちが可愛いかなんて競うなよな。 んなもんどっちも可愛いに決まってるんだからよ。


「さて、貴方達は少し休んでおきなさい」

「いや、でも」

「まだまだここから長いから、今の内に休んでおいた方が良いわよ」

「そうだよ」

「居ても出来る事無いでしょ」


 と、皆に言われた俺達3人は、仮眠室を借りて仮眠を取る事にした。 まだまだ時間がかかるという事なので、大丈夫だろう。



◆◇◆◇◆◇



「なはは……お姉ちゃん達、頑張ってるかなー……」

「ああ、頑張ってる」

「だな。 普段は気の強い奈々美も今だけは弱気になってるかもな」

「なはは」

「もう少しで俺も父親か。 実感無いなあ」

「しっかりするんだぞ、夕也兄ぃー」

「おう……というか、まだ掃除試験100点取れてないんだが」

「たしかにー……頑張ってくれたまへー」

「おう」

「お前、まだやってたのか掃除試験……」


 宏太に呆れられるのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 目を覚まして病室に戻ると、お袋さん達は「まだまだかかるから、皆で夕飯でも食べに行きましょうか」と誘ってきた。


「は、離れて大丈夫なんですか?」

「大丈夫大丈夫。 産まれるの多分夜中よ。 分娩室に入るのも21時とか22時になると思うわ」

「そ、そうなんですか?」

「ええ。 私も美那も経験済みだし、それぐらいわかるわ」

「な、なるほど」


 まあ経験者がそう言うんだから説得力はかなりあるが。


「なはは。 じゃあ車出すんで何処かへ食べに行こー」

「だな。 腹が減っては戦は出来ないからな」

「妊婦は今も食べないで頑張ってるけどね」

「うっ」


 そんな中で俺達は呑気に飯を食って行ってて良いんだろうか? まあ、このまま食わずに待っていて、俺達が先に参ってしまっては意味が無いしな。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕飯を外食で済ませて、更にはスーパー銭湯で風呂にまで浸かってから病院へ戻って来た俺達だが、病室ではまだ二人が寝ていた。 とはいえ、陣痛の間隔がかなり短くなってきたらしくそろそろだろうと、お袋さん達が言う。


「もう呼んでも良いと思うわよ」

「呼ぶよぉ゛!」

「そうね……」


 二人してナースコールを押して、看護師を呼び出す。 もうかなり憔悴しているが、本当に大丈夫なんだろうか? 看護師が確認に来ると、俺達は病室から追い出されたが、すぐに亜美と奈々美が分娩室へと運ばれて行った。


「ここから3時間から4時間ね」

「ま、まだそんなにかかるのー?」

「ええ。 さ、私達も分娩室前に移動しましょ」

「はい」


 亜美達の後について行き分娩室前へ移動する。 時間は22時。 本当に夜中になるんだな。


「俺も緊張して来た……」

「だな」

「なはは……私もー」

「貴方達、父親になるんだからしっかりしなさい」

「は、はい」

「う、うむ」


 そんなこんなで分娩室の前で待ち続けること3時間……。


「今井さん。 今、お子さんが産まれましたよ」

「!」


 分娩室から出てきた助産師さんから無事出産が終わった事が告げられた。


「もう少しお待ちください。 すぐに会えますから」

「は、はい」

「亜美姉、よく頑張ったー」

「おめでとう、夕也君」

「あ、ありがとうございます!」

「後は奈々美だけだな」

「奈々美ももう少しのはずよ」


 しばらくすると、中から呼ばれたので分娩室へ入る。 そこには疲れ切ってやつれた亜美に抱かれた小さな赤ん坊の姿があった。


「夕ちゃん……私、頑張ったよ……」

「おう、よく頑張った!」

「美夕、パパだよ……」

「パパだぞ」


 と、声を掛けても特に反応は無いのだが。 それでもやはり我が子との初めての対面なので感動も大きい。


「父親になったんだな」

「私も母親になったんだね……奈々ちゃんは?」

「まだみたいだな」

「そっか」


 俺達は先に病室へ戻る事になったので、赤ちゃんと一緒に移動を開始。 亜美のお袋さんもついて来ながら「私、この年でお婆ちゃんになったのね」と、ちょっと不服そうだった。 病室に戻ると亜美は「疲れたよ……」と、小さく呟いて目を閉じる。


「お疲れ様ね。 少し休みなさい。 私達がここにいるから」

「うん……」


 亜美は小さく頷くと、そのまま眠りにつくのだった。


 その30分後には奈々美も無事に出産。 病室へと戻り、亜美と同じく眠りについた。


「どっちも可愛いー……なはは……美夜ちゃん、私は麻美お姉ちゃんだぞー」

「おばさんの間違いだろ」

「ぶー……」


 麻美ちゃんも可愛い姪っ子にメロメロなようだ。


「二人共、これからは夫婦で協力してこの子を育てていくのよ」

「はい」

「わかってます」

「私達も、力になれる事があれば力になるから」

「頼らせてもらいます」


 ようやく親になったという実感が湧いて来た俺と宏太は、気を引き締め直すのであった。

こちらもまさかの同時出産!


「遥だ。 これで皆無事出産だな」

「良かったよね!」

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