第2246話 100点は遠い
今日も掃除の採点を受ける夕也だが。
☆夕也視点☆
月が変わり10月に入った。 10月1日の金曜日だ。 紗希ちゃんの出産が近いという事で、皆少し気を張っているようだ。 そんな中、俺は今日も掃除の試験を受けている。
「どうだ!」
「92点!」
まだ100点が貰えていない。 少しずつ良くはなっているようなのだが、麻美ちゃんと渚ちゃん曰く「まだ足りない」だそうだ。 厳しいなあ。
「あと8点ぐらいなら合格で良くないか?」
「亜美姉は100点取るまでダメって言ってるー」
「ぐぬぬ」
亜美は100点しか取れないパーフェクト人間だからなあ。 普通の人間が100点を取るのがどれほど大変かわからないんじゃなかろうか。
「というわけだからもうちょっと頑張れー!」
「おう……」
とりあえず今日の掃除は終わり。 「皆の家」へ行くとしよう。
◆◇◆◇◆◇
「おーう……」
「あ、夕ちゃん。 今日はどうだった?」
「92点」
「ありゃ。 残念だねぇ」
「早く合格しなさいよね」
「頑張っとるが」
「結果が出ない……」
「もうちょっとなんだよなあ……」
「麻美ちゃんの採点は厳しいねぇ」
「あと8点、何が足りないんだ……」
謎の8点。 一体どこをどうすれば良いのか。
「まあ、まだ時間はあるし慌てない慌てない」
「きゃはは。 でもさ、すんごい進歩じゃんね?」
「それはそうですわね。 何せ今まで0点どころかマイナス100点だったんですもの」
「マ、マイナス100点だったのか……」
「マイナスだと100点取れるんだねぇ」
「ぐぬぬ」
紗希ちゃんは「きゃはは。 頑張れ頑張れ」と、元気付けてくれるのであった。
「紗希ちゃんはそろそろ出産の準備とかしないとだよ」
「うむ。 入院セットは常に近くに置いてあるわよ」
「ジグソーパズルもあると良いわよ」
「奈々美はジグソーパズルにハマり過ぎよ……」
「意外と面白いのよ」
奈々美は先月貧血で倒れて入院して以降、ジグソーパズルに少しハマったようだ。 あまりに暇そうだから、皆してジグソーパズルを買って持っていった所為なのだとか。
「でも、実際陣痛始まってお産、出産まで行くとパズルなんてやってる余裕無いんじゃない?」
「それはそう」
「その辺は私達良くわからないよねぇ」
「ですわね。 ただ、一般的な人と違って事前に早めに入院させてもらえるから、その分暇な日は増えると思いますわよ」
「やっぱりジグソーパズルはあった方が良いわね」
「なはは。 じゃあ今の内に買いに行っておきますかー」
「そうね」
こいつら、皆して入院中にジグソーパズルをやるつもりらしい。 麻美ちゃんの一言で妊婦組が立ち上がり、皆で買い物に出かける準備を始めた。
「亜美姉の車なら皆乗れるー」
「じゃあ、麻美ちゃんに私の車を貸してあげよう」
「わーい」
麻美ちゃんに車のキーを渡す亜美。 そのまま麻美ちゃんと妊婦の方は「お買い物ー」と、謎に楽しそうに部屋を出て行くのだった。
「な、何だかんだ言うてストレス溜まったはったんですかね?」
「かもしれんな……」
妊婦組は最近、買い物も家事もさせてもらいない日が続いていたので、多少なりともストレスはあったのかもしれない。 たまにはああやってショッピングとかに出かけたいのだろう。
「麻美だけで大丈夫やろか?」
「ま、まあ大丈夫だろ……」
◆◇◆◇◆◇
皆が出かけてから1時間半程経過した頃。
「なはは……」
「いやー、買い込んだねぇ!」
「やっぱショッピングは良いわね!」
やたらと荷物一杯になって帰ってきた妊婦組。 確か、ジグソーパズルを買いに行った筈だが、手にはジグソーパズル以外の物も大量に持っている。
「ベビー用品とか結構揃えたつもりだけど、見に行くとあれもこれもってなりますわね」
「おむつ買い足しちゃったわー」
「哺乳瓶もねぇ」
「どんだけだよ……」
ちなみに我が家には既に子供の為に色々とベビー用品や服を買って用意してある。 あれで十分だと思うんだがなあ。 更に言うと、この「皆の家」では「キッズハウス」なる建物を増築中だ。 そこにはベビーベッドやらまで完備されるという。 必要な物は大体揃っているのだが。
「夕ちゃん見て見て、猫ちゃんパジャマだよ。 ベビー用のパジャマ! 猫耳フードが付いてて可愛いよ!」
「お、おう。 マロンやメロンに似てるな……」
「そうなんだよ! マンチカンモデルのパジャマなんだよ!」
「みゃー」
「なー」
二匹の猫は亜美が持っている赤ちゃん用のパジャマを見て首を傾げている。 亜美は亜美で「マロン達のパジャマじゃないよ」と、二匹を撫でている。
「そんなマロンとメロンにもちゃんと服を買って来たよぉ」
「みゃ!」
「なー!」
ジグソーパズルを買いに行ったはずだよなぁ……。
「これだよ」
ガサゴソと買い物袋から取り出したのはペット用の服だ。 猫用の冬服らしい。
「はい、着てみようねぇ」
「みゃー」
「なー」
亜美から溺愛されているマロンとメロン。 亜美から服を着せてもらっている。
「おお……可愛いねぇ。 ほわわーん」
「亜美姉、マロンとメロンを見てほわほわになってるー」
「いつも通りだろ……」
猫好きの亜美は愛猫のマロンとメロンが可愛過ぎて、大体あんな風になるのだ。
「他の皆は何を買ったんだ?」
「私はこのタブレットを買ったわ」
「タ、タブレット?」
「スマホだと画面小さくてね。 入院中にネットサーフィンするのにこの方が良さそうだわ」
奈々美はタブレットを見ながら「良いわねー」と、頷く。
「紗希ちゃんはそれはなんだ……?」
「何って、健康器具よん? 電気マッサージのやつ」
ブィィィン
紗希ちゃんが使うと何に使うさわからんが、多分ちゃんとマッサージに使うんだよな?
「は、遥ちゃんは?」
「私はこれ、握力グリップ」
「持ってるよな……?」
「最近物足りないからちょっと強力なやつにしたぜ。 これで入院中も鍛えられる」
何を言ってるんだこの人は……。
「奈央ちゃんのそれは何だ?」
「ポータブルシアターセット」
「ほう?」
「テレビがあれば何処でも映画見放題」
「スマホでよくないか?」
「テレビで見れるのが良いのよ」
何かこいつら、入院中もやりたい放題するつもりなんじゃないのか?
「ジグソーパズル買いに行かはったんですよね?」
「そだよ。 それもちゃんと買ったよ」
亜美は「んしょ」と言いながら箱を取り出す。
「6000ピース! 青一色の一色パズルだよ」
「それ、完成すんのか?」
「わからないけどやってみるよ」
亜美が持っている箱を見ると、完成図が真っ青な絵になっている。 これの何が面白いんだ?
亜美達は「これで入院中も安心!」と、意味わからない事を言っている。 俺にはわからないが大丈夫なんだろうか?
妊婦組も入院に向けて準備万端?
「遥だぞ。 入院しながらでも握力は鍛えられるからな」
「そんな時までトレーニングなんだね……」




