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第2244話 処世術

リビングで過ごす亜美達だが、弥生が気になる質問を麻美に。

 ☆亜美視点☆


「なはは。 亜美姉、希望姉、ヘッドセットありがとうー」

「どういたしましてだよ。 サイジョー製の超高性能ゲーミングヘッドセットだよ。 似たようなのは持ってるかもと思ったけど、性能は段違いだよ」

「そんなに凄いのかー」

「うん」


 藍沢麻美ちゃんは、我が親友の藍沢奈々美ちゃんの妹である。 いつも明るく「なははー」と笑っている元気な子である。 実は麻美ちゃんのこの明るく元気な姿は、私達の前で頑張って見せている演じた姿であるという事は知る人が少ない。 時折見せる思慮深い姿の方が素の麻美ちゃんなのである。 何故わざわざ明るく振る舞うのかは私にもわからないけど、幼稚園に上がった頃からこんな感じである。 それ以前は普通だったんだけどねぇ。



 ◆◇◆◇◆◇



 お昼前になると、大体のメンバーが目を覚ましてリビングへやって来る。 お仕事組は早くに屋敷を出て行ったよ。


「麻美っちー。 おはよー」

「美智香姉、もうお昼だぞー」

「あーい」

「寝過ぎやろ……」

「何をー……可憐が夜中に起きて大変なんだから」

「な、なはは」


 まだまだ大変な時期な様子。 もうすぐ私もああなるのか……。



 ◆◇◆◇◆◇



「そや麻美っち。 ウチ、あんさんに訊きたいんやけど」

「何ですかー?」

「あんさん、常にそのテンションで疲れへんのか?」

「んん?!」

「おう……」

「まあ、気になりますわよね」

「私達が初めて会った時にはもうこの感じだったわよん? 確かに気にはなるけど」


 と、実は皆がちょっと気になっていた事であるらしい。 麻美ちゃんは「ほへー」と、首を傾げるとやはり「なはは」と笑い。


「一人の時はちゃんとオフモードになってるから大丈夫ですー」

「オフモードがあるんか……」

「ありますよー。 しゃきーん」


 と、謎の擬音を鳴らしたかと思うと「すんっ」と無表情になり黙ってしまう麻美ちゃん。 まるで別人のようになってしまったよ。 風邪を引いた時がちょうどこんな感じになるのである。


「お、おう。 これがオフモードっちゅうやつか。 渚、見た事あるん?」

「ほんまごく稀に見るぐらいやけど……」

「なはは。 こんな感じにたまにスイッチオフするから大丈夫ー」

「さ、さよか。 にしても、何でわざわざ普段はそない騒がしいしとるんや?」

「んん?! ふ、踏み込むねぇ弥生ちゃん」

「いや、気になるやろ……」


 私達はこの麻美ちゃんが半ば普通だと感じるぐらいには慣れているのだけど、言われてみれば確かに気にはなる。


「んんー? 処世術ー?」

「そ、そうなの? だって、幼稚園児ぐらいの頃からそんな感じでしょ?」

「うむー。 どうすれば友達が沢山出来るかとか色々と考えた結果こうなったー」

「ええ……」

「まあ、確かに素の麻美って何かとっつきにくい気はするけど」

「自分でもそんな気はしてるー」

「そ、そやかてそこまで変わらんでも」

「うーむ。 そうかなー。 まあ、私はこの明るい麻美ちゃん結構楽しんでるし、最近はこっちのが楽なのでー」

「いつの間にやら素と演技が逆転しとるんか……」

「なはは!」


 私達としてもこの底抜けに明るい麻美ちゃんには色々と助けてもらったりするし、やっぱり明るい雰囲気が好きだから麻美ちゃんが嫌じゃないなら今のままで居てほしいと思っている。 それを麻美ちゃんに伝えると麻美ちゃんは「任せたまえー」と、胸を張るのだった。

 弥生ちゃんも苦笑いをしながらも「そやな」と、納得するのであった。


 にしても幼稚園児にして既に世渡り上手だったとは恐れ入るねぇ。



 ◆◇◆◇◆◇



「……ふむ。 これはここね」

「おお、奈々美やるわね」

「伊達に入院中ずっとジグソーパズルで遊んでないわよ」

「な、なはは」


 私達妊婦組、あまりにま退屈過ぎて皆でジグソーパズルを囲む。


「何かコツでもあんの?」

「感覚よね。 何かピースの色合いとかで何となくこれかも、みたいな」

「麻美ちゃんみたいな事言い出したよ」

「匂いはしないわよ……」

「私もパズルからは匂わないー」

「あ、そうなんだね」


 何でもかんでも嗅覚でどうにかするわけではないようだ。 ま、そりゃそうだよね。


「パズル、中々暇潰しには良いわね」

「クロスワードとか数独もあるわよ」

「私もそろそろ入院準備するし、いくつかあっても良いわね」


 と、紗希ちゃん。 出産前に病院に入院することが可能なので、私達は割と気が楽だよ。 本来は陣痛が始まったらとかって話だけど、私達は奈央ちゃんのおかげで予定日前から病院に入院させてもらえるのである。 助かる助かる。


「紗希ちゃんはいつぐらいから入院予定なの?」

「10月24日からよん」

「すでに部屋も準備出来てますわよー」

「まだ1ヶ月あるやん……」

「あっという間ですわよ」

「きゃはは。 さすがに緊張してるわ」

「紗希でも緊張するんだな」

「当たり前じゃん。 遥は私を何だと思ってんのよ」

「スケベ大魔王」

「大体合ってるけど!」


 大体合ってるんだねぇ……。 自認してるんだねぇ。


「また入院するのね……」

「な、奈々ちゃんは嫌そうだね」

「嬉しいものじゃないでしょ」

「そりゃそうか」


 私は今まで入院なんてした事無いから、実はちょっと楽しみだったりするよ。 私が入院する時は奈々ちゃんや遥ちゃん、奈央ちゃんもほぼ同時期だろうから、話し相手にも困らないし不安も和らぐよ。


「でもまあ、人の親になるなんてだいぶ先だと思ってたけど、もうそこまで来てるのよね……」

「だねぇ。 私なんて子供産むとすら思ってなかったからねぇ」

「そうなんか?」

「うん。 だって、夕ちゃんと結婚出来るとは思ってなかったからね」

「何か面倒な事になってり時期があったものね……」

「なはは」

「はぅ」


 本当に良くまあ今の形に落ち着いたものだよ。


「うわはは。 可憐はちゃんと皆の『お姉さん』になれるかしらね?」

「んー? おねーさんー?」

「そうそう」


 そっか。 可憐ちゃんは皆の「お姉さん」になるわけだ。 とはいえ、まだまだ何もわからないだろうけど。 自分より小さな子供達を見て、可憐ちゃんはその時に何を思うのだろう?



 ◆◇◆◇◆◇



 本日もプールで体力トレーニングを軽くこなした私達妊婦組。 程よく疲れたところでリビングでのんびりである。


「んで、東京組はまたいつまでいるのよ?」

「明日一日ゆっくりして明後日帰るで」

「私はさすがに明日帰るわよ……大君一人だし」

「旦那はん浮気しとるんちゃう」

「してないし」


 三山君はその辺は大丈夫だと思うけどねぇ。 宮下さん、何だかんだ言って良い奥さんだし。


「ワハハ。 タケシタはどないヤ?」

「あれにそないな甲斐性あらへんやろ」

「ワハハ」

「信用されてるんだかバカにされてるんだか……可哀想な彼氏さんね」

「どないせい言うんや……」


 気になる弥生ちゃんと武下さんの恋路。 うーん、何か進展が欲しいね。

麻美は世渡り上手なのか?


「奈央ですわよ。 あれが処世術ねー。 まあ、あれのおかげで明るくていいけど」

「うん。 でもどんな麻美ちゃんでも私は好きだよ」

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