第2240話 デート延長
リアル脱出ゲームを続ける夕也と麻美。
☆夕也視点☆
麻美ちゃんと共にリアル脱出ゲームとやらに挑戦している俺。 多少はゲームをするようになった俺だが、今回リアル脱出ゲームとコラボしている「グレイの冒険」シリーズをやった事は無い。 ここは既プレイ済みの麻美ちゃんにお任せするしかないのである。
現在、二つ目の謎解きを終えて地下道へと入って来たところだ。
「チャーチャラチャラチャチャチャーン♪」
「ご機嫌だな麻美ちゃん。 その歌は『グレイの冒険』の曲か?」
「そうだよー。 フィールドBGMー」
「そうか」
俺も何となく知っているメロディーだ。 有名なゲームのBGMってのは、実際にゲームをプレイした事が無くても何故か知っていたりするんだよな。
「にしてもこの地下道どこに繋がってるんだ?」
「王様の寝室とか厨房とか、まあ色々繋がってるー。 本来は緊急時の逃走用経路なのだー。 今はそこを逆に歩いてるー」
「なるほどな。 何処に向かうんだ?」
「城の裏側にある裏庭だよー。 ゲームでは一応城内に入ったりも出来るけど、見張りが居てウロつけなくなってるー」
「あー、よくある、意味の無い行動は制限されるやつだな。 『今はこっちに行く必要は無い』とか出て戻されるやつだ」
「そうそうー」
麻美ちゃんとしばらく地下道を歩いて行くと、またもや扉が現れた。 麻美ちゃんはとりあえず扉を開けようとノブを動かすが、当然のように閉まっている。
「謎解きしないと進めそうに無いねー」
「原作だとここはどうなってるんだ?」
「地下道から裏庭に抜ける為の謎解きは、カンテラを使って火の点いてない燭台に火を点けるんだけどー」
「燭台には全部火が点いてるな」
「うむ。 だからここはオリジナルの謎解きがあるはずー」
「なるほどな」
「扉のロックも、牢屋の時みたいにタッチパネルに何かを入力して開けるタイプだから、同じような形式の謎解きかも」
「とりあえず探してみるか」
「おー」
二人で周りに何か無いかを探して回る。 すぐに麻美ちゃんが紙切れを発見した。
「やはり紙に問題が書いてあるのか?」
「うむー。 問題というより、『リューベック史』の抜粋文章ー」
「は? 『リューベック史』?」
「ゲーム内で見る事が出来る、リューベック大陸の歴史を綴ったものー」
「ほ、ほう」
わからん。 それはもう、かなりのコアなプレイヤーにしかわからんやつなのでは? このリアル脱出ゲーム、クリアした人達っているのか?
「で、何て書いてあるんだ?」
「リューベック史○○○年 ミュートハイム城が築城される」
「○○○年の所に入る数字が鍵を開ける答えか」
「033」
ピッピッピッ
麻美ちゃんは迷う素振りも無くタッチパネルに数字を入力している。 な、何とかって歴史の年表まで覚えてんのか……。 もう、普通のゲーマーってレベルじゃないなあこれ。 というか、作った方も簡単に脱出させる気ないだろ……。
「開いたー」
「す、すげー」
「なはは。 私からしたら簡単ー」
「何とか史ってのは有名なのか?」
「知る人ぞ知るってレベルー」
「つまりコアなファンにしかわからんって事か」
地下道から出て城の裏手にある裏庭に出て来たらしい俺と麻美ちゃん。
「原作だとここからは見張りの兵士が徘徊してるエリアで、スニーキングアクションを要求されるー。 けど、さすがにそれはやらなくていいっぽいー」
「つまり隠れたりしなくて良いんだな」
「うむー」
「残り時間は?」
「まだ80分あるー」
「そんなに長いのかこの脱出イベント?」
「んにゃー? もうちょっとで終わるはずー」
「え? 80分も残ってんだろ?」
「うむ。 謎解きがスムーズだからねー。 100分設定はこのゲームがわからない人に向けた設定だよー」
「これ、未プレイの人でも脱出出来るのか?」
「まあ、一応各所に謎解きのヒントは散りばめてあるっぽいから、知らない人でも脱出は出来ると思うー」
「そうなのか」
「まあ、時間はかかるだろうから、良い設定かとー」
麻美ちゃんからすればノーヒントで解ける謎でも、原作を知らない人からすれば何が何やらわからんもんな。
◆◇◆◇◆◇
その後もいくつかの謎を解きながら、特に詰まる事も無くミュートハイム城から脱出する事に成功した。
タイムは34分。 かなりの好タイムだという事らしい。 さすがは麻美ちゃんだな。
「なははー。 楽しめたー」
「まるでゲームの世界みたいだったからな」
「うむー。 マップの再現度が素晴らしかったー」
「そんなに再現度高かったのか?」
「うむー。 まあ、原作は昔のゲームだから見下ろし視点のドット絵だけど、今風にリメイクすればあんな感じになるー。 帰ったら一緒にゲームやろー」
「おう。 ちょっと気になるな」
「うむー。 じゃあ、とりあえずお昼行こー」
「おう。 で、その後は?」
「コラボショップとかもあるからその辺を見て帰るー」
「……ん? そんなに早く帰るのか?」
「まあ、目的はこの脱出ゲームに参加することだったしー」
「一日俺を借りてるのに、それじゃ昼過ぎにはデート終わるんじゃないか?」
「うむー」
ふむ。 せっかくの誕生日プレゼント代わりだというのに、半日もデートせずに帰るなんて麻美ちゃん的には勿体ないとは思わないのか?
「とりあえずお昼ー」
「お、おう」
さすがにやはり勿体ないな。 麻美ちゃんは特に気にしてる様子も無いが、せっかくだし他に何処か行きたい場所とか無いか聞いてみるか。
◆◇◆◇◆◇
カチャカチャ……
昼からハンバーグハウスでハンバーグを食べている俺と麻美ちゃん。 何でも「グレイの冒険」では回復アイテムにハンバーグが出てくるのだとか。 なるほど、そこもコラボを意識してあるのか。
「はむはむ」
「麻美ちゃんよ。 他に行きたい場所とか無いのか?」
「他にー? んむ……お台場の辺りはもう結構制覇してるしー」
「そうなのか。 いや、一日あるのに昼過ぎにはデートが終わるの勿体なくないかなって」
「まあ、確かにー。 それならばゲームセンターにでも行くー?」
「ふむ。 麻美ちゃんがそこで良いならついて行くぜ」
「なはは。 ではゲームセンターに決まりー」
「おう」
せっかくの誕生日だからな。 麻美ちゃんには楽しんでもらわねばならない。 昼過ぎに帰ったら、亜美もびっくりするだろうしな。
◆◇◆◇◆◇
昼飯を食べて「グレイの冒険」のコラボショップを見て回る。 色々なグッズが並んでいる。 このゲームをやった事は無いから何が何やらわからないが。 今日、帰ったら麻美ちゃんと一緒に遊ぶ約束したから、楽しみだな。
「おー、スーパーボムー」
「何かヤバそうなアイテムだな……」
「なはは。 ただのキーホルダー。 ちなみにスーパーボムは普通の爆弾で壊せない壁を壊せるー」
「そうなのか……」
麻美ちゃんはそんな色々なグッズを買い漁り、かなり満足そうな顔を見せるのだった。
脱出成功。 この後の予定を話してデート延長をするのだった。
「亜美だよ。 うんうん。 ゆっくりするといいよ」
「亜美は本当に甘いわね」




