第2238話 快気祝い
何だかんだパズルにハマった奈々美。
☆奈々美視点☆
「……」
病室に備え付けられているテーブルにジグソーパズルを置き、無言で集中していると時間を忘れる事が出来る。 ジグソーパズルばかり持って来られた時はさすがにどうしたもんかと思ったけど、これが意外にアリなようね。
「……! このピースはここね!」
ピースがピッタリハマった時の快感もあり、割と楽しんでいるわ。
「2個目のパズルが完成するのは時間の問題ね」
ちなみ、パズルばかりではなく、たまに数独やクロスワードもやりつつ気分を変えている。
「ハマってるねぇ」
「私達がお見舞いに来てるのに無視してパズルしてるー」
「ふぅ……ごめんね、やり始めると熱中しちゃって」
「それは良いんだけど、私達が帰ってからやらないと、すぐに終わっちゃうよ?」
「そうだぞー。 二日前に買ってきたパズルがもう2個終わりそうになってるー。 やり過ぎー」
「た、たしかにハイペース過ぎるかしら? でも、今日ってもう15日でしょ? 18日には退院するし、それまでには全部完成させたいわ」
「も、戻ってからでも出来るよ」
「それもそうね。 退院しても家事とかやらせてもらえないし、暇潰しにはなるわね」
「うんうん」
とりあえず今手を付けているパズルは入院中に終わらせて、残りは退院してからにでもしましょ?
「そうだー。 『ミルフィーユ』の新曲の練習、三人で始めたよー」
「私が居ないのに?」
「お姉ちゃん、歌は上手だから少し遅れても大丈夫だと思うー」
「うんうん」
「レコーディングはいつやるの?」
「奈々ちゃんが帰って来て落ち着いてからだね」
「了解。 一応私もここで練習しとくわ」
この病室、防音も完備してあるのよね。 多少は声を出しても大丈夫な造りよ。
「暇潰しがまた増えたねぇ」
「そうね」
その前にパズルよパズル。
◆◇◆◇◆◇
そんなこんなてわ18日。 ようやく退院日よ。 ジグソーパズルは3個中2個を完成させたわ。
「お姉ちゃん迎えに来たぞー」
「ありがとう。 ようやく帰れるわね……」
「なはは」
「クロスワードも10ページもやってしまったわ」
「凄いー」
「暇だと何でも集中出来ちゃうもんよね」
「なるほどー」
「皆は特に変わった事とか無い?」
「変わらないー。 もうすぐ私の誕生日ー」
「ちゃんと覚えてるわよ。 20日には夕也と出かけるんでしょ?」
「うむ」
私が倒れるちょっと前にそんな話をしていた覚えがあるわ。
「お姉ちゃんが入院続いてたら、夕也兄ぃと出かけるのやめてたー」
「何でよ?」
「お姉ちゃんが心配でそれどころじゃないー」
「貧血だっての……ま、退院出来たし別に良いか」
「うむー。 予定通り出かけて来るー」
「夕也に迷惑かけるんじゃないわよ?」
「わかってるー」
ブロロロ……
◆◇◆◇◆◇
久しぶりに「皆の家」へと帰って来たわ。 で、帰って来ると何故かリビングでは皆が忙しなく動き回っていた。 東京組もいるし……。
「な、何してんのこれ?」
「お姉ちゃんの快気祝いの準備ー」
「な、なるほどね」
どんな事でもすぐに宴会にしてしまう私達のいつものアレね。 まあ、祝ってくれるのはありがたいけど。
「にしたって、東京組まで来てるとはね」
「快気祝いはやるって話してあったからー」
「だから退院日を聞いてきたのね」
「なはは」
「おう、藍沢さん帰ってきよったな」
「おかえりなさいだよぅ」
「ただいま。 昼間っから宴会の準備?」
「騒ぐのは夜からですよ」
「奈々美はゆっくりしてろ」
「だぞ。 病み上がりだからな」
「ジグソーパズルでもしててください」
「ジグソーパズル、もう2個終わらせちゃったわよ」
「凄……」
「まだ一個あるけど、まあすぐ終わるわ」
何かやってる内にコツとかわかってきたのよね。
「入院中にジグソーパズルの達人になっているー」
「別に達人になったつもりはないけど……」
「クロスワードと数独も結構やってあるよねぇ」
「よほど退屈してたんですね……」
「まあね……。 てかマリア、あんた一回もお見舞いに来なかったわね」
「すいません。 家事の方を優先してしまいました」
「まあ、そこは別に良いけど」
「でも、私は行かなくて良かったと思います。 実は私もジグソーパズルを持って行こうかと思っていたので」
「あんた達、暇潰しはジグソーパズルしか無いと思ってるわけ?」
「わ、わかりやすくて良いかと」
「はあ」
私にジグソーパズルをやらせる新手の遊びでも流行ってるのかしら……。
「とにかく、今はゆっくり休んでおいてください」
「わかったわよ。 パズルよりクロスワードでもやっておくわ」
帰ってきてもやる事は入院していた時と変わらないわけね。
◆◇◆◇◆◇
夜になると、毎度おなじみの宴会が始まる。 東京組は暇なのかしら? もうすぐシーズンも始まるでしょうに。
「にしても、何この食事……」
「鉄分の多めの献立です」
「へ、へぇ」
ホルモンだとかほうれん草だとか、まあ色々凄いわね。 私達妊婦以外のメンバーはこれで良いのかしら?
「うめー!」
宏太は何でも良さそうね……。 他のメンバーも特に気にしてはいないらしく、普通に夕飯を食べている。 まあ、気にしないなら良いか。
「ていうか、台所係の監督の紗希。 あんた、もうちょっと栄養バランスを監修しなさいよ」
「きゃはは。 たしかにそうね。 明日からちゃんと見るわ」
「頼むぜ。 さすがに毎日これじゃ俺達も滅入る」
「ま、毎日こうなの?」
「奈々美が入院した日からずっとこうだぞ」
「だはは! 極端やな」
「まったく……」
ちょっと私が貧血で倒れたらこれだもの。 やり過ぎだってのよ。
「まあせっかくの快気祝いや。 ぱぁっとやろや。 んぐんぐ、ぷはぁやで!」
妊婦である私達と違って、弥生は構わずにお酒を煽る。 相変わらず焼酎をグビッと飲んでるわ。
「で、私達はこの鉄分豊富な野菜ジュースと……」
「あ、あはは……」
「一応普通の飲み物もありますよ」
「あ、そう」
とりあえずまずはこいつを飲むしかないわね。 うん、以外と美味しい。
「しかしあれね。 今度皆で健康診断受けた方が良いわね」
「あ、それは賛成だよ」
「まあ、既に会社で受けてる人はやらなくて良いけど」
「うんうん」
また何かまた大袈裟な話になってきたわね。 まあでも健康診断は悪いことじゃないし反対する事も無いわ。
「というわけで、近い内に予定しますから必要な人は私にメールを入れといてね」
既に会社で受けてる人もいるみたいだから、希望者のみ実施という事になったわ。 私も一応受けておこうかしらね。
◆◇◆◇◆◇
宴会が終わり寝室へ戻って来た私。 妊婦組は基本的にはパートナーと二人で寝る事で、何かあった時に対処出来るようにしている。
「ぐがー」
「これで何かあった時に対処出来るかしら……」
宏太は既に爆睡していて、とても役に立つとは思えないわ。
「はあ。 ま、いっか」
私も久しぶりに自分の部屋でぐっすり眠るのだった。
無事に奈々美もいつも通りの生活に。
「紗希よん。 良かった良かった。 あ、パズル買って来る?」
「もういらないわよ……」




