第2237話 暇つぶしにはこれ!
今日もお見舞いに向かう亜美と麻美。
☆亜美視点☆
9月13日の金曜日だよ。 今日も奈々ちゃんのお見舞いに行くよ。 麻美ちゃんが車を出してくれるから助かるよ。
「前田さんが昨日、大量の雑誌を買って持って行ったって言ってたね」
「うむー。 ファッション誌とか月刊バレーボールとかー」
ブロロロ……
「亜美姉は貧血とか大丈夫そうー?」
「うん。 大丈夫そうだよ」
「なはは。 お姉ちゃんが倒れてから、夕食の献立に赤身肉とかレバーとかほうれん草が増えたー」
「増えたねぇ」
貧血に対しては鉄分を多めに摂るのが良いとされている。 台所係の皆はそれを考えて、夕食を作るようになったようだよ。
「お姉ちゃんも凄い入院食食べてそうー」
「西條グループの病院だからね。 凄いのは間違い無いよ」
「フルコースとか出てくるのかなー?」
「さすがにそんな事は無いよ。 ただ、VIPの病室に入院していると、その患者さんに合わせた献立を出すよ」
「じゃあお姉ちゃんにも貧血対策の献立が出てるのかー」
「そだね」
ブロロロ……
◆◇◆◇◆◇
「お姉ちゃん、来たぞー」
「来たよー」
「話し相手!」
「うわわ」
「退屈過ぎておかしくなってるー」
「雑誌一杯買って来てもらったんだよね?」
「読んではいるけどね。 ずっと読んでると目が疲れてくるし」
「そっかー」
「そんな奈々ちゃんに、暇潰しの神器を持って来たよ」
「何よそれ」
「まずはこれ! 数独!」
「なはは」
「パ、パズル的なやつよね?」
「うん。 更に! クロスワード!」
「な、なるほど」
「そして最後はこれ! ジグソーパズル3000ピース!」
「疲れそー」
「ま、まあ暇潰しにはなりそうね」
「うん。 時間も忘れて没頭する事間違い無しだよ」
「あ、ありがとう」
「うむだよ」
奈々ちゃん、ありがた過ぎて泣いてるよ。 私の選んだ暇潰しグッズはやはり完璧だよ。
「はあ。 にしても、1週間も入院するって何よ。 貧血よ貧血」
「そこはありがたく入院させてもらいなよ」
「そうだぞー。 病院にいれば安心ー」
「まあそうだけど」
「うんうん。 このまま出産まで入院してるのもアリだよ」
「宏太と同じ事言わないでよ」
「あ、もうこのネタは使われてたんだねぇ」
「そうだ。 亜美、あんたも入院しなさいよ」
「そんな事言われたってねぇ。 私は母子共に健康だよ」
「ぐぬぬ」
「なはは。 道連れ増やそうとしてるー」
「一人だと本当に暇なのよ」
「まあ、それはそー」
「もうちょっとの我慢だよ」
「退院する頃にはストレスで頭おかしくなってそうだわ」
「宏太兄ぃの命が危ないー」
「あんまり叩いたりしちゃダメだよ」
「わ、わかってるわよ。 って言うか、別に普段も叩いてないわよ」
「うんうん。 よいしょっと」
この病院のVIP病室は、高級ホテルもびっくりなくらいの部屋になっているよ。 高級ふわふわソファーも完備である。
「今日は他に誰か来る予定あるのかな?」
「夕方には宏太と前田さんが来るはず」
「東京組はもう来ないかな? 可憐ちゃんに会いたいよ」
「さすがに毎日は来ないと思うわよ」
「そうだよねぇ」
仕方ないか。 まあ、その内また会えるよね。
「藍沢さん、お昼をお持ちしました」
「ありがとうございます」
どうやらちょうどお昼ご飯の時間らしい。 看護師さんが病室に入って来て、食事を配膳している。 それにしても、入院食とは思えない程の豪勢なお昼である。
「凄いねぇ」
「お昼でこれー?」
「そうね。 やたら鉄分豊富よ。 食後のサプリも鉄分だし」
「あ、あはは」
「いただきます」
奈々ちゃんは「入院中の唯一の楽しみだわ」と言いながら、昼食をゆっくりと味わうのだった。
◆◇◆◇◆◇
「宏太兄ぃが居たら欲しがりそうな食事だったー」
「だねぇ」
「実際昨日は俺にも食わせろとか言ってたわよ」
「さすが宏太兄ぃ」
「ブレないねぇ」
本当に宏ちゃんらしい。
コンコン……
「あ、誰か来たみたいだね」
「誰かしら」
ガラガラ……
「おう、今日も来たで」
「うわはは。 奈々美っち、話し相手になりに来たわよー。 って、亜美っちと麻美っちも来てるし」
「あーみー。 あーさーみー」
「可憐ちゃん! 会いたかったよ!」
まさか会えるとはだよ。 神様に感謝だよ。
「ワハハ」
「お見舞いの品と言ってはなんですが、暇潰しにジグソーパズル3000ピースを持って来ました」
と、新田さんがジグソーパズルの箱を取り出した。 奈々ちゃんはそれを見て少し表情が引き攣ったが何とか耐えて「あ、ありがとう」と、返す。
「ここに置いておきますね……うわ、既にジグソーパズル3000ピースがある……」
「亜美姉が今日持って来たー」
「まさかそないなもんが被るとはやな」
「本当だよ」
「ま、まあそれだけあれば退院までの時間は潰せるっしょ」
「そ、そうね」
奈々ちゃんはやはり引き攣り笑いをしながらそう答えるのだった。
◆◇◆◇◆◇
夕方だよー。 まだ居座っている私と麻美ちゃん。 東京組はさすがに帰ったけどね。 そろそろ帰ろうかと思っていると、新たな来客が。
「おう。 奈々美」
「今日も来ましたよ。 って、清水さんに麻美さんも居ますね」
宏ちゃんと前田さんである。 仕事帰りのついでに寄っているのだろう。
「私達はもう帰るけど、一緒に車で帰る?」
「お、その方が楽だな」
「ですね」
「じゃー、お見舞い延長ー」
宏ちゃんと前田さんも一緒に帰る事になった為、私と麻美ちゃんももう少し滞在する事に。
「奈々美さん。 今日はこれを持って来ました。 ジグソーパズル3000ピースです!」
「……」
「あ、あれ? 反応が薄いですね?」
「前田さん。 テーブルの上見てみて」
「はい? わっ、既にジグソーパズルが6000ピース分ある……」
「まさか、ジグソーパズルが被るとはな」
「亜美姉と東京組が持って来たー」
皆、思考が似通っているのだろうか? 奈々ちゃんは虚な目でジグソーパズルの箱を眺めながら「ひ、暇潰しには困らなくなったわね……」と、皮肉っぽく呟くのだった。
その後、30分程滞在した私達は、そろそろ面会時間も終わるという事で帰る事にした。 奈々ちゃんは「さて、ジグソーパズルをするかクロスワードをするか数独をするか……あー、時間がいくらあっても足りないわ」と、感情の篭らない声で呟いた。 こ、怖いよぉ。
◆◇◆◇◆◇
ちなみにその翌日。 またまたお見舞いに行った私と麻美ちゃん。 奈々ちゃんの病室のテーブルの上には、ジグソーパズル3000ピースの一箱が開封されており、既に半分近く完成しているのが見られた。 奈々ちゃん曰く「やり始めたら意外と楽しくて、時間を忘れて没頭した」との事らしい。 よ、良かったよ。
奈々美はジグソーパズルで暇をつぶすのだった。
「奈央ですわ。 ジグソーパズル3個って」
「何で皆で被るのよ」




