第1201話 オリンピック強化合宿
6月に入り強化合宿へやって来ている亜美達。、
☆亜美視点☆
6月に入った。 6月頭、私達はバレーボールのオリンピック代表合宿へとやって来ています。 ここは東京のとあるホテル。 もちろん西條グループのホテルだ。 近くにある、やはり西條グループが運営する総合体育館的施設が合宿所である。
「ははは! 西條がいると色々と助かるな!」
「おほほほ」
小林監督も大助かりの様子。 何から何まで西條グループにおんぶに抱っこといった感じである。 さて、メンバーはワールドカップバレーの時と大差がないが、OHは田中さんが家庭の事情で出場辞退。 代わりにマリアちゃんが新規で加入している。
合宿中は基本的に朝から練習。 時折休憩を挟みながら15時ぐらいまで続く。 ゆっくり出来るのは夕方以降である。
「にしてもあれやな。 マスコミ多いな」
「まあ、合宿所や日程はバレてたからねぇ」
「それに、私達はオリンピックの競技の中でもメダルが期待されているものね」
「世界チャンピオンだものね」
私達日本代表は、ワールドカップで優勝を果たしている。 並み居る強豪国を抑え優勝した私達は、今回の大会は追われる立場。 相手国も私達のデータを集めて色々対策してくるだろう。 私達は今やそういう立場にいるのだ。 負けない為にはデータを越えるだけの成長をしなければ世界大会連覇は出来ない。
「よーし。 じゃあ今から指高測るぞー」
どうやらオリンピックの時にされる選手紹介画面で表示されるデータだね。 私は今のところ世界記録を保持しているよ。 最近は紗希ちゃんもかなり跳ぶようになっていて、私の世界記録も危ういよ。
「よーし神崎ー」
その紗希ちゃんの番だ。 今大会は我らが日本のエースに抜擢されてモチベーションも高い。
「とぅ!」
パンッ!
ざわざわ……
「紗希めっちゃ高くない?」
「え? え? 神崎さんやばっ」
周りがざわつく程のジャンプを見せた紗希ちゃん。 その高さは……。
「345! 世界2位!」
「きゃははは! 私ついに2位かー」
私の記録に肉薄する数字を叩き出す紗希ちゃん。 まだジャンプ力強化トレーニングを続けているんだろうか。
「よーし、次清水」
「はい!」
さて次は私だよ。 手にマグネシウム粉を付けて、助走を開始。 力強く踏み切って真っ直ぐ跳び上がり、腕、指をピンッと伸ばして、最高点に到達したところで壁に指先をタッチする。
ざわざわ……
「え、やっぱり清水さんもやばい」
また周りがざわつく。
「さ、351です」
「何ーっ?!」
「351って……」
ざわざわ……。
351はまたもや自己ベストの更新、つまり世界記録を更新してしまったようである。
「あんさん、そのままジャンプして月にでも行くつもりかいな?」
「いやいや」
「女子選手で350は異次元だぞ清水」
「ですよねー」
「亜美、実は男だったりしない?」
「女の子だよ?! 胸に立派なのが2つついてるでしょ?!」
「まあたしかに」
「まあえええやんええやん。 男子選手並みに跳べるんがおるやなんて、大きなアドバンテージやん」
と、黛のお姉さんが笑いながら言う。 すると監督も「その通りだ! これは最大の武器だ!」と大きく頷いた。 私の他にも紗希ちゃんもいて、月ノ木のWタワーは今や世界一のWタワーにまでなってしまったようだ。
◆◇◆◇◆◇
初日の練習を終えてホテルでゆっくり休む私達日本代表。 明日もみっちり練習があるので、疲れはしっかり取っておくに限る。
「うわわ……もうネットニュースになってるよ」
何気にスマホを弄っていると、先程の出来事がもうネットに流れてしまっていた。 まああれだけマスコミがいれば当然か。
「バレーボール女子日本代表 清水亜美 女子初350超えのジャンプを披露!」
多分だけど、最近はマリアちゃんや遥ちゃんとトレーニングルームでトレーニングしたり、登山する為に足腰を鍛え始めた効果がここに現れたのかなと思われる。 それにしても350超えかぁ。
「私は一体どこまで跳ぶつもりなんだろうねぇ」
中学、高校時代から私の高さには皆が注目していた。 バレーボール選手の中でも決して身長のある方じゃない私にとっては、このジャンプ力は高身長の選手と戦う上では必要な物であった。 しかし気が付いたらその高さは、どんなに身長の高い選手よりも高い場所にまで到達してしまった。
「これから何を目標にして跳べば良いんだろうねぇ」
◆◇◆◇◆◇
夕飯の時間だよー。
私達はホテルを出て外食に行く事にした。 ホテルの食事でも良いんだけど、皆で集まってワイワイする事を優先したよ。
「にしても、清水さん本当すんごいわよね」
「宮下さんも凄いよ」
「うわははは! 知ってるー!」
謙遜しないんだね。
「実際その身長で350の高さが出るって、あんさんとんでもないで?」
「だよねー」
「清水さんが腕伸ばして立って2メーターちょいってとこやろ? つまり140ぐらいは浮いてるっちゅうことやん?」
「千沙っちの頭飛び越えられそうじゃん」
「残念ながらつま先がおでこに突き刺さります」
突き刺さるんだね。 でもそうか。 小学生の小さな子ぐらいなら私は飛び越しちゃうのか。 怖っ。
「そやかてその高さがあったら攻撃にブロックに大活躍やな、清水さん」
「それはどうかわからないけど、頑張るよ」
高さが有利になるスポーツである事は疑いようもないけど、それだけで決まるスポーツでない事もよくわかっている。 高さにかまけて基本を疎かにするつもりはないよ。
夕飯を終えた私は、夕ちゃんに電話して少し話した後、ホテルのロビーへやって来た。
現在は私達に貸切となっているこのホテル。 当然ロビーで見かける顔も日本代表選手しかいない。 その中にはマリアちゃんも居た。
「やほほ、マリアちゃん」
「こんばんは清水先輩」
「どう? 初日終わったけど疲れてない?」
「大丈夫です。 これぐらい何ともないです」
「頼もしいねぇ」
マリアちゃんは代表の強化合宿に参加するのは2回目。 練習メニューも私と同じでオールラウンダー用のメニューで、あれこれやる事が多くて大変だと思うけど、しっかりついてきている。 さすがと言ったところだよ。
「先輩はまた記録を更新しましたよね?」
「あはは……私自身もう限界だと思ってたんだけどねぇ。 まだ伸びてびっくりだよ」
「私もさすがにびっくりですよ……目標がまた遠ざかっていくような、そんな気がしました」
「マリアちゃん……」
こんな時、目標になっている私がどう言って上げるべきなのかわからないでいる。 優しく慰めても上から目線で何だか嫌味ったらしいし、かと言って対等に扱うのもマリアちゃんをバカにしたみたいで良くないし。 私は本当にマリアちゃんを凄い子だって思ってるけど、私が言うとそれは……。
「なははー。 マリアー。 亜美姉に追いつこーなんて100万年早いぞー」
そんな時、どこで話を聞いていたのか麻美ちゃんがそんな事を言いながらやって来た。
「藍沢先輩……100万年はもう死んでます」
「なはは。 だから諦めろー。 無理なんだよ、この人に追いつくのはー」
「あ、麻美ちゃん……」
「嫌です。 諦めません。 100万年の差、必ず埋めます」
そう言ってマリアちゃんは部屋に戻って行った。 お、怒ったんじゃない?
「マリアみたいなのはこういう焚き付け方が良いのだー。 煽られて強くなるタイプー。 なーははなーはは」
わけわからない歌を歌いながら自販機で飲み物を買ってくる麻美ちゃん。 人間観察が得意なだけあり、マリアちゃんの扱いも上手いようだ。 ありがとうだよ麻美ちゃん。
また世界記録を更新してしまう亜美であった。
「奈央ですわよ。 そろそろ亜美ちゃんだけどシャレにならなくなってきましたわね」
「ええ……」




