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第1200話 洗濯ぐらいは

5月も末。 亜美達の合宿が近付く中、夕也の方は……。

 ☆夕也視点☆


 5月ももうすぐ終わる頃。 大学の方では勉強に部活にと忙しくしている。 もちろんバイトもだ。


「夕也兄ぃー! 焼きたてメロンパンを食えーっ!」


 どどどどっ!


 昼の時間。 毎度の事ながら焼きたてメロンパンを片手に突っ込んで来る麻美ちゃん。 俺は振り向いて麻美ちゃんの動きから、焼きたてメロンパンの軌道を読む。


「ここだ!」


 見切ったぞ麻美ちゃん。 そう何度も口に焼きたてメロンパンを放り込まれてたまるか。 というわけで、今回は華麗に避けてみせる。


「なは?!」

「おお……」

「夕也が避けた?」

「先輩がついに攻略した?!」


 こう何度も口に焼きたてメロンパンを放り込まれていれば動きも見切れるというもの。


「麻美ちゃん敗れたり」

「なはは! しかーし! 食えーっ!」


 麻美ちゃんは急ブレーキをかけ、左足を軸足に回転する。 回転しながら俺の口に狙いを定めて焼きたてメロンパンを……。


「押し込むべしー!」

「ふごぉっ?!」

「あ……」

「隙を生じぬ二段構えね」

「麻美が更に上を行きよった」

「なははは! 私の攻撃を避けようなどとー」


 結局焼きたてメロンパンを口に放り込まれるのだった。 まあ美味いんだが、出来れば一回ぐらいはゆっくり味わってみたいものだが。


「んぐんぐ」

「あんたも慣れ過ぎて普通に咀嚼するのね」

「なははは! 私の訓練の賜物だー」

「いや。 まあ、そうなんか?」

「別にいらないスキルだよね?」


 黒川さんの言う通りなんだよな。 生きていく上でメロンパンを丸ごと一口で食べてしまう特技とか何の役にも立たんぞ。


「それよりもうすぐ6月ですね」

「梅雨とか鬱陶しいわね」

「だな」

「オリンピックの強化合宿もあるんですよね?」

「そうやで。 いよいよやなぁ」

「7月にはもうフランスだものね」


 そう。 女子達はバレーボールのオリンピック代表となっている。 来月には強化合宿があるとのこと。 ふむ。 またしばらく亜美と希望がいなくなるのか……。 という事はまた春人に色々と世話になる事になるのか。


「ふむ」

「何がふむなの?」

「いや。 俺もそろそろ1人で家の事やらないとなぁと」

「殊勝な事ね。 でもあんたはやめといた方が良くない?」

「家の中めちゃくちゃになるだけー」

「見んでもわかりますよ」

「今井先輩ってそんななんだ……」


 結構ボロクソに言われてしまうのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 夜。 取り込まれた洗濯物を畳む作業を手伝う俺。 奈々美に教えてもらった結果、これだけは出来るようになった。


「洗濯か……」

「んん? 洗濯がどうしたの?」

「みゃう」

「いや」


 まずは洗濯ぐらいは出来ようにならないとな。 洗濯機を回して干して、乾いたら取り込んで畳むだけ。 畳む作業は出来るわけだから、洗濯機さえ回せれば勝ったようなもんだぜ。


「亜美先生」

「……え? 先生?」


 俺が先生と呼ぶと、首を傾げながらこちらを向く。 可愛いなぁ、おい。

 って、今はそれはどうでもいいんだ。


「亜美先生。 洗濯機の使い方を教えてくだせー!」

「洗濯機? まあ、それは別に構わないけど……どしてまた急に?」

「俺ももうそろそろ家の事をちょっとぐらいは出来るようにならんとなって」

「おお……」

「みゃあ……」


 亜美は関心したようにパチパチと拍手しながら頷き始めた。 なんかちょっとバカにされてないかこれ?


「洗濯機ねぇ。 良いよ。 明日教えてあげよう」

「おお! 頼みます! 亜美先生!」

「別に先生はいらないけどねぇ……」


 と、少し苦笑いをしながら洗濯物を畳む亜美であった。 にしても、畳む速さ異常に速いな……。 やっぱ何やらせても人間離れしている。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌日の朝。 俺は洗濯機の前に立っていた。 亜美にこの機械の使い方を教わる為だ。


「何て威圧感だ……強敵のオーラだ」

「何を言ってるの? ただの洗濯機だよ?」

「はぅ。 先が思いやられるよ」


 心配になったのか、希望まで様子を見に来ている。 まずは亜美から説明を受ける。


「洗濯機に洗濯物を入れる前に、衣類についているタグのマークを確認しないとダメだよ。 ポケットの中身を確認するのと一緒にやっちゃおう」

「タグ? マーク?」

「衣類の中には手洗いを推奨している物もあるんだよぅ。 マークを見ればわかるようになってるよ」

「ほう」


 知らなかった。 何でもかんでも洗濯機に放り込む物だと思っていた。


「まあ言ってもうちには手洗い推奨の衣類はほとんど無いよ。 基本的にはポケットだけ確認で良いかな」

「了解だ」


 亜美が昨日着ていた服やら下着やらが今日の洗濯物か。


「はぅ。 あんまり見られたくないね」

「あはは、そだねぇ」


 やはり恥ずかしいものらしい。


 確認を終えて、いざ洗濯機へというタイミングで、亜美がストップをかける。


「どうした?」

「希望ちゃんのその服だけは別にして洗うよ」

「何でだ? 一緒に洗ってやれよ。 希望だけ仲間外れにするなよ」

「はぅ。 色落ちだよぅ」

「色落ち?」


 また知らない単語が出てきて。 洗濯ってそんな難しいのかよ。


「希望ちゃんのその服は色落ちしやすいんだよ。 色落ちっていうのは読んで字の如く、衣類の染料な洗濯する事で落ちる事だよ。 他の服と洗うと、他の色に溶け出した染料が伝染っちゃうからね。 特に白い物なんて一発だよ」

「な、なるほどな。 色落ちか。 覚えたが、それの見分け方って?」

「簡単だよ。 洗剤を目立たないとこに付けて、ちょっとしてから白い布で拭いてみるだけ。 白い布に衣服の染料がついてたら色落ちする物だよ。 まあ、そんなにないけど。 うちだと希望ちゃんのこの服ぐらいかな」

「面倒かけますぅ」


 色落ちも覚えた事でいざ洗濯。 洗濯物を放り込み、洗剤を適量投入。 洗濯のモードを選択して……別にダジャレじゃないぞ。


「この注水口の蛇口の栓は常に閉めてるからね。 洗濯前には開けて最後は閉めるように」

「了解!」


 栓を開けて洗濯機の蓋を閉め。


「スタート!」

「はい、良く出来ました。 あとは洗濯機が止まるまでやる事は無いよ」

「ふははは! 楽勝じゃないか! 洗濯機め、口程にも無い奴だったな」

「洗濯機に喋る口は無いよ」


 亜美は呆れたような顔で冷静に言われてしまうのだった。 あと数回は亜美が後ろについて作業をする事になるが、大丈夫そうだと判断されたら洗濯は俺の仕事になるようだ。


「教えれば出来るもんだねぇ」

「ねー? 私はまたてっきり、洗剤はこぼすわ水が溢れてくるわで大変な事になると思ってたよぅ」

「希望は俺を何だと思っているんだ?」

「過去の実績を鑑みればそれぐらいは想定されて然るべきだよぅ……」

「何せ部屋を掃除したら、掃除する前より汚くするからねぇ……これは次は掃除をマスターしてもらう方が良さそうだね」


 とりあえず洗濯を完璧に出来るようになってからという話ではあるが、こうやって少しずつ出来る事を増やしていく努力はしたいと思う。 尚、この後の洗濯物を干す段階で洗濯物を落しまくり、再度洗濯させられる事になるのは別の話だ。

洗濯をマスター? した夕也。 これから洗濯は夕也の仕事。


「奈々美よ。 あいつもやれば出来るのよね」

「でも洗濯物落としてまた洗ってたよ。 やっぱり家事やると鈍臭いんだよ」

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