第1199話 山登りをしよう
名古屋から戻って来た奈々美から話を聞く亜美。
☆亜美視点☆
私は今、緑風へやって来て、名古屋から帰って来た奈々美ちゃんから色々な話を聞いている。 奈々ちゃんと麻美ちゃんは今日はシフトに入っている日だよ。
「なはははは! お姉ちゃん心配し過ぎー」
「そうだよ。 いくら宏ちゃんでもたった2週間ぐらいで浮気したりしないよ」
「まあ、そうなんだけどさぁ……でもよ? 部屋から女の人の声が聞こえて来たら疑うでしょ? もし夕也の部屋から知らない女の人の声が聞こえて来たらあんたどう思う?」
「呼び出して話し合いを始めるねぇ!」
「たしかにー!」
「私の事言えないでしょうが……」
私はその状況を想像するだけで怒りが込み上げてきたよ。 奈々ちゃんの行動にも納得だよ。
「でも結局はやましい事はないんだよねー?」
「まあ一応ね。 良い人だったし、むしろ宏太の身の周りの事をお願いしてきちゃったわ」
「それはどうなんだろうねぇ?」
あまり宏ちゃんに近付かせると、仲良くなって……みたいになるかもしれないよ。
「大丈夫なの?」
「大丈夫だと思うわよ? あの人、宏太の事は尊敬するペットシッター程度にしか思ってなさそうだし、3ヶ月ぐらいでどうにかなる感じではないと思うわ」
ふうむ。 何だかんだ言って名古屋に行ったのは正解だったっぽい。 来月にも名古屋へ行く予定らしいのでその時の話を楽しみに待つとしよう。
「そだそだ。 明日何だけどさ、皆で早速山登りをしようって話になったんだよ」
「お姉ちゃんも行くでしょー?」
「山登り? 何処へ?」
「電車に乗って月見山へ行くよ」
月見山とは私達の住む街から電車に乗って、隣町や市内とは逆方向へ行った先にある山だよ。 標高は400mで登山難度もそこまで高くはない。 小学生の頃のレクリエーションで登った記憶もある。
「月見山ね。 了解」
というわけで奈々ちゃんも山登りに参加決定である。
「一応本番想定だからリュックにある程度荷物を積んで登るよ。 登山靴も履き慣らす為に履いて来てね」
「了解了解」
「なはは! 皆で山登りー」
私達は体力には自信ありの集団である。 結構健脚だしね。
◆◇◆◇◆◇
翌日だよー♪
電車に乗り月見山の登山口前までやって来た私達。 皆は先日買った登山装備であるリュックや靴を持ってやって来ている。 手袋もしているし、飲み物もOKだよ。 一応本番想定だから行動食として飴玉と羊羹を持って来たよ。
「さーて、では早速行きましょうか」
「なはは! イクゾー!」
「麻美、そっちは登山口と逆よ」
「こっちだー!」
見えてる登山口にすら気付かない程の方向音痴らしい。 一人で山登りさせたら遭難しそうだ。 絶対一人では行かせられないね。
「あんたはすぐ逆に行くんだから先頭を歩かないの」
「ぶーっ……りょーかーい」
ちょっと不満そうな顔を見せるも、大人しく先頭を奈央ちゃんに譲る。
「ささ、登りますわよ。 ちょこちょこ休憩を挟みながらゆっくり行きましょう。 本番想定ですわ」
さて月見山登山開始だよ。 標高400m程の山。 正直言ってこれくらいは余裕で登れないと夏の富士山なんて無理無理だよ。
「周り見るとお年寄りとか多いですわね」
「そうね。 ハイキングとかが趣味のお年寄りも多いのかしら?」
「運動にもなるし足腰も鍛えられそうだからなー」
と、遥ちゃん。 遥ちゃんは歳を取ったら山登りとかしてそうだね。
登り始めて数分。 少しずつ山道も険しく勾配もキツくなってくる。 お年寄りが登れるからと侮るなかれ。 普段から登り慣れてない人間は、このくらいの難易度でも大変なものである。
月見山の山道は特には整備されていない。 たまに岩がゴツゴツした場所を頑張ってよじ登ったりする必要のある場所もあるよ。 お、お年寄りも登る山なんだよ。 お年寄りの皆さん、結構パワフルだねぇ」
「ふぅ」
「結構荷物の重量だけでも体力を奪われるな」
「登山慣れてる人はリュックの中身の重量をグラム単位まで軽量化するって聞いたけど、本当に影響あるんだね。 これは良い経験だよ」
「やっぱり実践に勝るトレーニングはありませんわね」
「たしかにだよぅ。 富士山に登る時はもっと切り詰めないと」
「必要な物とそうでないものを取捨選択出来るようにならないとだねぇ」
「ですね。 山登り、意外と奥が深い」
春くんも心なしか楽しそうだよ。
◆◇◆◇◆◇
山登りも半分を過ぎた辺りだろうか。 開けた場所に出た所で少し休憩をする事にした。 リュックに入れてあるお茶をグビッと飲み、飴玉を口に含んで舌でコロコロと転がす。
行動食っていうのは登山の途中、歩きながら軽く食べられる物だ。 登山というのは長時間に渡り継続して運動をするものであり、スタミナ切れを起こす事もある。 そうならない為のエネルギー補給用である。 基本的には歩きながらパクパク食べられる物が良いとされている。 今私が転がしている飴玉や、リュックのサイドポケットに入れてある羊羹。 ラムネ菓子なんかも良いとの事。 あとカロリーメイ○なんかも良いよ。
と、色々調べたら書いてあったよ。
休憩を終えて登山再開だ。 ここから頂上まであとは一気に登り切ってしまうよ。
「なーははなーははー山のーぼりー♪」
「麻美ちゃんは元気だね。 疲れ知らずって凄いよぅ」
麻美ちゃんの体力ってどうなってるんだろう? 以前にも爆笑しながら1000m走るという事をやっていた。 謎である。
「マリアちゃんは山登りとか大丈夫?」
「はい。 これぐらいなら問題ありません」
マリアちゃんも富士登山計画に参加する仲間の1人。 体力の程はどれくらいのものかはわからないけど、私達の後輩だ。 柔な鍛え方をした覚えはない。
「佐々木君や紗希、東京組はちゃんとトレーニングしてるかしらね?」
「宏太は仕事が忙しいけど休みの日に山登りするみたいだよ」
「何だかんだやる気になってるみたいだねぇ」
「なはは。 宏太兄ぃは意外とマジメー」
そう。 宏ちゃんはあれでマジメなのだ。 紗希ちゃんの方は弥生ちゃんに聞いて、京都の山をいくつか登ってみると言っているらしい。 東京組は忙しい中時間を作っているのだとか。 夏の本番に向けて皆頑張ってるよ。
さて、山を登りようやく頂上に到着。 頂上は展望台となっており、休憩スペースも用意されている。 私達はそこに座って、持参したお弁当を突く。
「んむんむ。 山の上で食べるお弁当は格別だね」
「ですわねぇ。 でも富士登山には持って行かないようにね? 結構な重量になるから」
「わかってるよ」
「それよりどうでした皆?」
「まだこれぐらいなら余裕あるよー」
「だなー。 まあ富士山はこうは行かないだろうがー」
そういう事である。 富士山はほぼ半日山登りをし、慣れない環境で寝泊まり、翌早朝に頂上を目指して登るという過去な登山になる。 それを成す為のトレーニングである。 また定期的に山に登って身体を慣れさせていかないとね。
まずは軽い山でトレーニング。
「希望です。 山って空気が綺麗で良いよね」
「富士山ってどんな感じだろう?」




