第1192話 ゆりりん再訪
白山大学でバレーボールの練習中の亜美達。 だったのだが?
☆亜美視点☆
今日は大学でバレーボール部の練習に参加。 部員の皆さんは私と奈央ちゃんとマリアちゃんを見て「代表の練習は大丈夫?!」と心配している。
「大丈夫ですよ」
「来月強化合宿がありますので」
「そ、そう? 大会の事は気にせずオリンピック優先で」
「はい!」
「わかりましたわ」
「オリンピック頑張ります」
そういえば6月には東日本インカレがあるんだっけ? ただ今回私と奈央ちゃん、マリアちゃんはメンバーには入っていない。 完全に日本代表の方に集中出来るようにとの配慮である。 とはいえ練習の方は自由参加なので、今日は軽く調整に来た次第である。
そんなこんなで1時間程練習していると、どうもキャンパスの方が騒がしい事に気が付いた。 一体何が起きているのかと思い、体育館から外を覗いてみる。
「何でしょう? あの人集りは」
「何だろうねぇ? 多分中心にいる人を囲んでるんだろうけど……」
「ゆりりんー!」
「サインくださいー!」
え? 今ゆりりんって聞こえたような。 もしかして姫百合凛さん?
「ちょっと行ってみましょ」
「そだね」
というわけで、一応確認する為に人集りの方へ向かう。 近付いて行くと「皆さん落ち着いて下さいー」と聞いた事のある声が聞こえてきた。
「うわわ、あの中にいるの、本当に姫百合さんだよ」
「何をしに来たのかしら……」
とりあえずは姫百合さんを人集りの中から救出する為に私達も人集りに突撃していく。
「うわわーっ! 押し出されるー」
「痛い! 痛いですわよ! ちょっと! 叩かないでくださいます?! 私を西條奈央と知っての狼藉ですか?! 警察呼びますわよ?!」
何とかかんとか人集りの中心まで移動した私達は、姫百合さんを挟むように立ちはだかり人集りから守る。
「あ、清水さんに西條さん。 助かったー」
「『助かったー』じゃありませんわよ……変装もせずに目立つ格好で何しに来たんですの?」
「ちょっと仕事で近くまで来たから寄ってみたの。 清水さんと西條さんいるかなと思って」
「いやいや、講義に出てるとは限らないじゃない」
「そうだけど、とりあえず」
本当に姫百合さんってこういうとこあるんだよねぇ。 とにかく一旦体育館に避難して更衣室に匿う。 話し合った結果、今日のところは練習を切り上げて一緒に帰ることにしたよ。 マリアちゃんも一緒に帰ることにするみたいだ。
「姫百合さんはとりあえず変装して」
「はい」
奈央ちゃんがヘアゴムで姫百合さんの髪型をイジる。 更に私の伊達メガネと、マリアちゃんが持って来た帽子で簡単な変装をさせる。 まあかなり雑だけどこれが限界だ。 何とかなると信じよう。
◆◇◆◇◆◇
何とか騒ぎにならずに帰る為に、奈央ちゃんが西條家の私有車を呼んでくれたおかげで、何とか問題無く「皆の家」へと帰って来ることが出来た。
「はぁ、どっと疲れましたわね」
「だねぇ」
「芸能人って大変ですね」
「あははは……そうですね」
「あまり無茶苦茶しないでね」
「はい……ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
「まあ良いじゃない。 それよりせっかくだから皆も呼ぼうよ」
「皆そんな暇してるかしら……」
……、
んでんで20分後……。
「皆暇なんですのね」
「なははー」
「暇とか言わないでよね。 あ、姫百合さんこんにちは」
「こんにちは」
結局呼べば皆集まるのである。
「あれ? あれれ? 佐々木君はお仕事?」
「あー、あいつ本当に何も教えてないのね……」
「え?」
「実はあいつ……くっ」
「惜しい人を……」
「え? え?」
何か夕ちゃんと春くんが変なノリを見せる。 さすがに姫百合さんも心配そうにしているよ。
「別にどうしたってわけじゃないわよ。 ただ、今はこの町にいないだけ」
「いない?」
「今働いてるペットショップから名古屋の支店へヘルプで行ってるんだよ。 夏まで名古屋から帰って来ないよ」
「そうなんですねー。 佐々木君、何も教えてくれなかったよ」
「私は一応連絡した方が良いって言っといたんだけど」
「まあ仕方ないか。 あとで連絡して文句言ってやります」
「あはは、良いねぇそれ」
姫百合さんもさすがに怒っているみたいだ。 まあそりゃそうだよねぇ。 友人だと思ってるのに何の連絡もないんじゃねぇ。
「なはは! 宏太兄ぃは最低な男ー」
「そこまででは無いと思うけど」
最低って程ではないよね。
「で、どうして姫百合さんが?」
「仕事で白山大学の近くまで来たらしいんだけど」
「なるほどな。 相変わらず行動が読めない子だな」
「本当だよ……」
変装もせずに入ってくるんだもなぁ。
「まあせっかくだし、宴会にしましょー!」
「ま、また宴会するんですか?」
マリアちゃんは呆れたように奈央ちゃんを見ている。 もうどんな事でも理由をこじつけて宴会するんだよね。 姫百合さんも明日は空いてるらしく、宴会にはノリ気になるのであった。
◆◇◆◇◆◇
夜。 宴会を楽しんでいると奈々ちゃんのスマホに宏ちゃんから電話が入った。 どうやら毎日これぐらいの時間にちょっと電話しているらしい。
「もしもしぃ? 宏太ぁ?」
「何だお前。 酔ってんのか? また皆でドンチャンやってんだな?」
「そうよー。 てかあんたさー、結局ゆりりんに名古屋行きの話してなかったでしょー?」
「別に3ヶ月ぐらいだし良いだろ……」
「佐々木君っ!」
「な、何だ? 何でゆりりんの声が聞こえてくるんだ?!」
「ゆりりんは怒ってますよー! 何で教えてくれなかったのー!」
「うわ、ゆりりんも酔ってやがる……」
姫百合さんからめちゃくちゃ文句を言われる宏ちゃん。 さすがに悪い事をしたと反省したのか謝っていた。 姫百合さんも一応は納得したらしく「よろしいー。 許してしんぜよー」と、ちょっと酔ったテンションで許していた。
宴会が終わると皆はノソノソとゾンビのように自室へ歩いていく。 私は今日は控えめにしておいたのでそこまでは酔ってないけどね。
「ほんま先輩達は片付けもせんと……」
「なははは。 でもゆりりんが酔い潰れてるとこなんて初めて見たし良かったー」
「トップアイドルもアルコールには負けるんですね」
後輩組3人が散らかった部屋の片付けをしてくれているので、私も手伝っているよ。
「ゆりりん、宏太兄ぃの住んでる場所聞いてたねー」
「さすがの宏ちゃんもそれは教えなかったねぇ」
「あんなんいきなり来たら周りが大騒ぎになるさかいなー」
「今日の白山キャンパスも相当でしたからね……」
あれは中々におぞましい光景であった。 よく無事に帰って来れたよ。
「それにしても姫百合さん、まだ宏ちゃんの事好きだったりするのかな?」
「ありそー」
「あの感じはまだ惚れてるって感じやねー」
「え? 姫百合さんってそうなんですか?」
「そうなんだよ。 びっくりだよね」
一応決着はついているんだけど、まだ姫百合さんの方では火が燻っている可能性が無いとは言えない。 なんか変な事をまた起こさなきゃ良いんだけど。
ゆりりんがやって来ると何か大変。
「遥だ。 ゆりりんってトップアイドルの自覚あるのかねー?」
「変装しないしよくわからないよねぇ」




