第1187話 前日
送別会は終わり。
☆奈々美視点☆
宏太の送別会も終わり、皆も自室へと散って行く。 というわけで私は自室に戻る……わけじゃなく宏太の部屋へ。
「おん? どうした奈々美?」
「寝る前にちょっとね。 明日は私達バレーの練習だからいないし、顔を合わせる時間もあまりないから」
「何だ、寂しいのかー?」
「うっさい。 それより中に入って良い?」
「おう、入れ入れ」
宏太の部屋に入ってとりあえずソファーに座る。
「弥生に言われたのよね。 離れてても電話とかで話は出来るけど、一緒に居るうちにしか出来ない事もあるって」
「まあ、そうだな」
「てなわけだから、ちょっと殴らせなさい」
「出てけよ! 何でそーなるんだよ?!」
「3ヶ月よ? 3ヶ月もストレス発散出来ないなんて、私おかしくなるわ」
「代わりなら夕也がいるだろ?!」
「夕也は亜美が怒るのよ……」
「知るか!」
宏太は「そんな事なら部屋から出て行けー」と私をソファーから退かせる。
「何よ。 私と話したくないわけ?」
「お前、俺を殴りに来たんだろ?」
「冗談よ冗談。 まったくもう……」
「お前が言うとマジにしか聞こえねんだわ」
「そう? で、本当は添い寝でもしたいなあと思って来たのよ」
「添い寝? お前にしちゃ珍しいな」
「まあね。 3ヶ月会えないわけだしちょっとでもさ」
「寂しがり屋め」
「うっさい。 さ、寝るわよ」
「あいよ」
と、いうわけで今日は宏太と添い寝するのだった。
◆◇◆◇◆◇
翌日の朝。 私は昼からバレーボールの練習がある為早めに起きてちょっと体を動かそうと思う。
「まったく、気持ち良さそうに寝ちゃって」
布団の中では宏太がまだいびきをかいて眠っている。 叩き起こすのは可哀想だからもう少し寝かせておきましょ。
宏太の寝室から出ると、寝癖を手櫛で直しながら歩いていた亜美と鉢合わせる。 亜美はこちらに気付いた瞬間に、ニヤリとほくそ笑み。
「奈々ちゃん、昨夜はお楽しみだったねぇ?」
「お楽しみしたわよ。 悪い?」
「あはは、いやいや。 良い事だよ。 明日からしばらくは会えないんだから。 奈々ちゃんは今日は無理して練習出なくても良いんだよ?」
「出るわよ。 こんな事ぐらいでサボってられないっての」
「そかそか。 奈々ちゃんがそう言うならそれで良いよ。 目一杯楽しんだみたいだし」
と、やはりニヤニヤしながら洗面所まで並んで歩くのであった。
「宏ちゃんは?」
「まだ寝てるわよ」
「そか。 私も明日までに宏ちゃんと一杯お話ししておかないとねぇ」
「何か話すことあるの?」
「まあ、何かしら話題はあると思うよ」
亜美もこれで宏太とは仲が良く、夕也程ではないけど良く話をしている。 普段はどんな話してんのかしらね?
「歯磨き終わりだよ」
「はいはい。 ご苦労様」
「さて。 朝ご飯の支度支度」
亜美はそのまま「朝ご飯だよー♪」と歌いながらキッチンへ向かった。 朝から元気ね、あの子は。
私は歯磨きと洗顔を終えてトレーニングルームへ移動。 朝食前に軽く運動ってわけよ。
「おお、奈々美か。 おはよう」
「おはようございます先輩」
トレーニングルーム常連の遥とマリアはもうすでに体を動かしている。 早起きしてまでやるようなことかしら? って、私も人の事は言えないわね。
さて、外に出ずにロードワークが出来るルームランナーで15分くらい汗を流して、朝風呂浸かって朝食にしましょう。
「ていうか2人はいつもどんなメニューやってるわけ?」
「曜日によって違う」
「そうですね」
「ちなみ今日は背筋トレーニングだ」
「そうなのね。 遥はわかるけど、マリアはどうしてまた?」
「世界と戦うにはフィジカルだと蒼井先輩が……」
「まあそりゃあった方が良いけども、別になくても何とかなるわよ? マリアぐらいなら技術も劣ってないし」
「そうなんですか?」
「いや! フィジカルは大事だね! 世界の屈強な選手のスパイクに負けないためにトレーニングあるのみ」
「マリア。 遥は筋肉バカだからこいつの言うことをあまり鵜呑みにしちゃダメよ?」
「はい。 ですがやはり多少はパワーアップしたいですから」
「マリアがそう言うなら別に良いけどね」
ルームランナーをスタートして一定のペースで走り始める。
「実際パワーや体幹があるに越した事はないわ。 遥はもう筋トレが趣味みたいなもんだから参考にはしない方が良いわよ」
「は、はあ……」
「ほっ……良いだろー、趣味筋トレでも」
「女らしい趣味持ちなさいよね。 彼氏まで趣味筋トレってどうなのよ」
「そ、そうなんですか、蒼井先輩?」
「え? ああ、そうだよ。 ジムで知り合ったんだ。 趣味筋トレだからこその出逢いさ。 趣味筋トレも良いもんだろー」
まあ筋トレが趣味だからこその出逢いだし、その出逢いから婚約にまで辿り着いたわけだし。 確かに捨てたもんじゃないわね。
◆◇◆◇◆◇
汗をかいてお風呂で汗を流し、リビングに集まり朝食の時間よ。 皆集まるとやっぱり壮観ね。
「宏ちゃん宏ちゃん。 明日は何時に出るの?」
「ん? そうだな10時ぐらいには出るつもりだ」
「10時だね。 駅まで見送りに行くよ」
「別にそこまでしなくても良いんだが」
「行くったら行くんだよ」
「さ、さよか」
皆も何だかんだ言って駅までの見送りには参加するらしい。 宮下さんが言ってた通り、宏太は案外愛されているらしい。
昼から私達はバレーボールの練習よ。 西條グループの体育館を借りてみっちり練習。
「マリア!」
「はい!」
パァン!
「良いですわよー」
マリア、ここのところパワーも付いてきて良い感じだわ。 何より左右どっちの腕からもスパイクを打てるのは強みね。 右利きらしいけど、左手でも右手と遜色のないスパイクを打てている。
「マリアちゃんは凄いねぇ。 それなら通用するよ」
「ありがとうございます。 ところで清水先輩も左右どっちでも打てますよね?」
「打てるねぇ。 でもフォームが崩れちゃうのが嫌だからあまりやらないよ」
「亜美姉のフォームはまさに理想だからねー。 教科書に見本として載せるレベルー」
「いやいや。 私が教科書を見て練習したんだよ」
亜美のプレーは基本に忠実。 サーブ、トス、レシーブ、スパイクどれを取っても。 基本を極限にまで極めた正に完璧とまで言えるプレーなのよね。
「てやや!」
パァン!
やっぱり綺麗なフォームだわ。 私も見習わないといけないのだけど、私の場合力押しでやっちゃうからフォームがどうとか考えてないのよ。 ただ最近は私も基本のフォームをマスターする為に練習中よ。
「っ!」
パァン!
とまあこんな感じ。 やっぱり基本に忠実な方がボールに力が伝わってパワーのあるスパイクが打てるのよね。 今までどんだけ無駄な力を使ってたのかしら?
「アタッカー陣は皆調子良さそうですわね。
「みたいね。 バンバンボールちょうだいよ奈央」
宏太が名古屋へ発つまで後少し。
「奈々美よ。 名古屋ねー。 私も一回行ってみよいうかしら?」
「良いねぇ」




