31.あの向こうの向こう側
『ふふ…』
朝食を食べた後、私は一人でにやにやしていた。やはり、ステータス欄に名前があるのは嬉しい。呼んでくれるのはマシロだけだけど、自分がしっかりと自分として存在しているような気になる。
【名前】フキル
【種族】ゴールデンハムスター
【ランク】F-
【レベル】1
【HP】211/211
【MP】200/200
【攻撃力】203
【防御力】210
【魔力】201
【素早さ】199
【器用さ】196
【固有スキル】木の実マスター、動物好き
【通常スキル】鑑定Lv4、体当たりLv1、かじるLv1、鎌鼬Lv4、正拳突きLv2、麻痺吐息Lv3、穴を掘るLv6、ハイジャンプLv2、電光石火Lv3、MP自然回復Lv2、隠密Lv2、水魔法Lv2、土魔法Lv2、聖魔法Lv2、製薬Lv2
【耐性】毒耐性Lv2、麻痺耐性Lv4、暗闇耐性Lv3、落下無効、衝撃無効、幻惑耐性Lv2、魔法耐性Lv4、炎耐性Lv4、雷耐性Lv3、氷無効
【称号】転生者、名付け親、スキル好き、小さな勇気、ツイントレントの加護
今の私のステータスはこんな感じだ。少しずつだけどステータスも上がってるし、スキルや耐性も増えた。ランクもレベルも上がらないけど、強くなれるのは大歓迎だ。
木の実マスターのスキル、ありがとう。
「フキルー、手伝ってよー」
『あ、ごめんごめん!』
マシロが木の実の殻を片付けながら、私に抗議する。そうだ、今は朝食にの片付けをしている最中だった。私は慌てて、手に持っていた木の実の殻をツイントレントの根元に運んだ。
朝食の片付けを終え、一息ついた私とマシロは空を飛んでいた。いつもみたいに木の少し上ではなく、もっと高い上空だ。マシロは進化してかなり大きくなったので、身体的な体力や力が向上し上空へと飛翔出来るようになったみたいだ。
「いつもと全然景色が違うね」
『うん、そうだね…』
普段から見ていた景色が格段に広がり、森の遥か向こうまで見える。森とは違う緑が広がる平原や青く澄んだ湖、恐らく人間が住んでいるであろう町まで。
私の小さな身体では大きなおおきなこの森も、この世界では小さなちいさな森の一つなんだと実感する。
『世界は、広いんだ』
ハムスターの私一人では、決して見ることが出来なかったこの景色。マシロが、私の世界を広げてくれた。
平原と湖、反対側の景色には山脈が広がり、山脈の麓にも小さな村がありそうだ。さすがに海は見えなかったけれど、きっと海もあるんだと思う。
人間もリラさんしか会ったことがないから、エルフや獣人、ドワーフなんかにも会ってみたい。私がまだ知らないことが、知らない世界が、この森の外にはある。
「ねぇ、フキル」
いつもより少しだけ小さな声で、マシロが控えめに話しかけてくる。私はしっかりとマシロの話を聞くため、マシロの頭の近くまで移動した。
『どうしたの?』
「あのね、ずっと考えてたんだけど…」
そこまで話すと、マシロは黙ってしまった。そのまま遠くに目を向けるので、なんとなく私も再び景色に目を向ける。
『…綺麗だね』
純粋に、綺麗だなと思う。森の木々や植物、花ももちろん綺麗だ。しかし眼下に広がる景色も負けておらず、見たことのないものにはやはり興味が湧く。
この景色を、この景色の先を、見てみたいと思った。
私はそっとマシロの頭を撫でた。さらさらとした羽が触り心地がよく、白く透き通った羽が光を反射しキラキラと輝く。
私には念話のスキルはないけれど、きっとマシロと同じことを考えていたんだと思う。
『一緒に行こうよ、向こう側』
「うん…!私も、フキルと一緒にこの景色の向こう側を見てみたい!」
ふわり、とマシロが更に上昇した。視界も高くなり、あんなに大きかった森の木々が小さく見える。肌に触れる風が心地好かった。
私たちは旅に出る。
いつか見た二羽の白い鳥たちみたいに、あの向こうの向こう側へ。




