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異世界転生ハムスター  作者: 森林 木々
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29.小さな世界

たくさんのブックマークや、感想やレビューまで書いて頂きありがとうございます。仕事の都合上更新頻度にムラはありますが、お付き合い頂けて嬉しく思います。ゆっくりですが、これからも彼女たちのこれからにお付き合い頂けると嬉しいです。


 ツイントレントとの対談(?)が終わり、私とマシロは再び辺りをぶらぶらしていた。称号の????となっていた箇所は私もマシロもばっちりツイントレントになっていたし、どうやら私が彼らを認識していなかったからわからなかったらしい。????がなんなのかずっと気になっていたのですっきりしたし、ツイントレントの祝福と加護の効果もわかった。

 ツイントレントの祝福と加護は、どちらも木の実や植物系のアイテムの効果がそれぞれ1.2倍、1.5倍になるというものだった。私の場合は木の実マスターのスキルの効果も重複されるので、2倍×1.5倍で木の実の効果は実質3倍になるらしい…私、どんどんハムスター離れしていくなぁ。


「あれ、どこかに向かうの?」


『うん、会ってお話ししてみたい子を思い出したの』


 私が急に方向転換を始めたので、隣を歩いていたマシロがこてんと首を傾げる。大人になっても骨格はそのままなので、動作は変わらないみたいだ。かわいい。

 せっかくマシロを通じて他の魔物や動物と話せるようになったので、久々に額に三日月型の傷を持つ鼠に会いに行こうと思う。前に会った時はお話し出来なかったし、スライムたちに襲われていないか気になっていたのだ。


 いつもスライムを倒していた場所に向かうと、マシロが私を頭の上に乗せてくれた。


「こっちの方が楽だし早いでしょ?」


『ふふ、確かにそうだね』


 小さな私ではマシロと歩幅が合うはずもなく、マシロも以前より遥かに大きくなったので移動がかなり早くなった。私たちの行動範囲、かなり広がるなぁなんてことを考えていると、あっという間に三日月鼠の巣穴に着く。


『今日も留守かな?』


 ひょいっとマシロの頭から飛び降りて、三日月鼠の巣穴であろう穴を覗く。差し入れしていた木の実はいつもなくなっていたし、引っ越しとかはしてないと思うんだけどな…


「…ここの茶色のねずみさん?」


『ん、そうだよ。マシロ、ここのねずみさんがどこに居るか知ってる?』


 茶色のねずみさんと言っているし、マシロも見たことがあるのだろうか。私は結局初めて出会った時から会えていないから、マシロはいつ会ったんだろう。


「そこにいるよ?」


『え?』


 いるの?


 マシロが指す方向を見ると、一本の木があった。そしてその木の枝の先に、額に三日月型の傷がある茶色の鼠が居た…前に会った時よりも、遥かに大きなサイズで。


『………ん?』


 あれ、なんでそんなに大きくなってるの。確かに私より一回りくらい大きかったけど…前のマシロくらいあるね?

 …まさか、


『…魔物?』


「………うん」


 ………うん。






「いつも木の実ありがとう!だって」


『あ、いえ、どういたしまして』


 キャッキャと喜んでいる自分より遥かに大きな三日月鼠に怯えながら、私はぺこりと頭を下げる。大きい、近付くと思ってたよりもかなり大きい。


 マシロが念話で声をかけてくれると、三日月鼠はするするっと木から降りてきてくれた。そうして私は安心確実なマシロ様の通訳により、三日月鼠と対話していた。

 三日月鼠、実は私たちがいつもここに来てレベル上げをしていたのを知っていたらしい。どうして顔を見せてくれなかったのかを尋ねると、私が見慣れない魔物(マシロのこと)を連れスライムと戦っていたので、自分も攻撃されるのではないかと隠れていたそうだ。まぁ確かに、マシロも突然他の魔物が現れたら、びっくりして魔法を使っちゃうかもしれないもんね。

 私が毎回巣穴に木の実を差し入れしていたのも気付いてくれていたみたいで、三日月鼠はようやくお礼が言えたと喜んでいる。


「チュチュ!」


『わぁっ?!』


 三日月鼠が両手を差し伸べてきたので反射的に握手しようとすると、軽くて小さい私はひょいっと持ち上げられしまった。三日月鼠はそのまま私をぎゅむっと抱きしめると、両足でステップを踏んで小躍りを始めた。たぶん感謝の気持ちなんだろうけど…私は恐るおそる、マシロを盗み見る。


「ピュイ…」


 やっぱり!ちょっと、マシロ怒ってるって!三日月鼠さーん!!


 普段穏やかなマシロが、なんとも言えないジト目で三日月鼠を見ている。いつの間にか通訳止めちゃってるし。そういえば以前私がリラさんに持ち上げられた時も、不服そうにしてたなぁなんて思いながら、私は三日月鼠の腕をつつく。


「チュ?…チュー」


 ようやくマシロのジト目に気付いた三日月鼠が、そっと私を地面に下ろしてくれた。(この後すぐにマシロが私を頭の上に乗せたのは内緒だ。マシロさんは大人になったんだから、そんな子どもっぽいことはしない。断じて)


 この後は三日月鼠と、この辺りの魔物や食べれる植物など他愛ない雑談をした。三日月鼠は意外と博識で、私がスルーしていた植物の効果や価値について教えてくれた。わざわざ鑑定しなくて済むので助かったし、行動範囲の広い三日月鼠の方がこの森に詳しそうだ。私とマシロのこれからに役立てられそうだし、色々教えてもらおう。






 結局この日は夕方まで三日月鼠とお喋りして、私たちはツイントレントの待つ巣穴まで帰ってきていた。帰る時にまた木の実を差し入れると喜んでくれていたし、お礼までもらってしまった。恐らく人間の落とし物であろう革のショルダーバッグで、マシロが斜めがけするのにちょうど良いサイズ感だ。木の実やアイテムなんかも入れられるだろうし、バッグの側面についているポケットには私も入れそうだった。空を飛ぶ時とかに便利かもしれない。

 ツイントレントと三日月鼠に色んなことを教えてもらったし、万能なバッグももらえたし私たちにとっては大収穫な一日となった。夕食も食べ終え、そろそろ寝ようかと思った時、


「あ、そっか…」


 大きくなったマシロは、もうどう頑張っても巣穴に入れなくなっていた。寂しそうに巣穴の入り口を見つめている。さすがにツイントレントたちもこれ以上は根を動かせないだろうし、マシロが入れるほど地面を掘り起こすのも無理そうだ。


『私も一緒に外で寝るよ、マシロが居れば大丈夫でしょ?』


「…うん!」




 ふわふわのマシロの羽に包まれて、星空を天井にして眠る。魔物に襲われる心配もないし、なんだか贅沢な睡眠になりそうだななんてことを思いながら、私たちは眠りについた。




 この世界はきっとずっともっと広くて、まだまだ知らないことがたくさんある。

 いつか夢見た()()()に、私たちは近付いてきたんだ。




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