26.繋がる気持ち
進化したマシロを見て、あまりの神々しさに私は固まっていた。これでは魔物というより、神や精霊の類いの使いのようだ。
『綺麗になったね…』
あんなに小さかった小鳥が、こんなに綺麗に立派に成長してくれるなんて思いもしなかった。出会った時は私とほとんど変わらない大きさだったのに、魔物の成長の早さを実感する。
「…ねずみさん!」
『はいはーい?』
私が一人感傷に浸っていると、どこからともなく誰かに呼ばれた。せっかくマシロの成長を噛み締めているというのに、この小さな幸せの時間を邪魔するのはどこのどいつなのか。
いったい誰だろうと思いながら振り返ると、そこには誰もいなかった。それどころか、そもそも周りに誰もいない。じゃあ、今の声は…?
「私だよ」
頭の中に直接響くような声。でもその声はいつぞやのノイズ混じりの不愉快な声ではなく、まだ少女らしさを残した優しいソプラノの声だった。
音ではなく、頭に直接響く声。これは、念話だ。
『マシ、ロ…?』
目の前の、大きく成長したマシロを見上げる。するとマシロは、ゆっくりと頷いた。
「ねずみさんと、ずっとずっとお話ししたかったの」
マシロが目を細め、私の高さまで頭を降ろしてくれる。私は嬉しくてうれしくて、涙が出そうになって、マシロを思い切り抱きしめた。
「私を育ててくれて、私と一緒にいてくれて、ありがとう」
あぁ、この世界で、あなたに会えて本当によかった。
「大好きだよ、ねずみさん」
『私も、マシロが大好きだよ』
声の主は、マシロだった。進化をしたことで、マシロも兄妹たちと同じ念話のスキルを得たようだ。
マシロは嬉しそうに、私と話せるようになったことを教えてくれた。これからは、たくさんたくさん、お話ししようね。
「うん!ねずみさんとたくさんお話ししたい!」
マシロが私の首根っこをくわえ、ひょいっと頭に乗せてくれる。そうか、念話だと思ってるだけでもある程度伝わるんだっけ。
私はマシロの頭のてっぺんの丸まった羽を撫でながら、ふと気になったことを尋ねてみる。
『マシロの念話、なんだかすごく聞き取りやすいんだけど…もしかしてスキルLv高いの?』
「ん、そうだね…念話のスキルは、Lv5になってるよ」
『Lv5?!』
そりゃまた、得たばっかりなのに随分と高いね?というか…マシロ、自分のステータス確認出来るの?
「…?自分のステータスは、みんないつでも確認出来るよ?」
マシロ曰く、自分のステータスは誰でもいつでもどこでも確認出来るらしい。他人のステータスは特別なスキルやアイテムを持っていないと確認することは出来ないようで、魔物同士では生死にも関わってくるため他人に教えることは滅多にないそうだ。
私は鑑定スキルを持っているから、てっきりスキルがないと自分のステータスも確認出来ないんだと思っていた。
「えっ?!ねずみさん、鑑定スキル持ってるの?」
『…うん?』
どうも私の心の声は駄々漏れらしい。マシロに隠し事は出来ないな、するつもりもないけど。
『ということは、マシロのステータスとかもあんまり鑑定しない方がいい?』
自分の生死にも関わる大切な情報を、勝手に鑑定するのはあんまり良くない気がする。ステータスって、思いっきり個人情報だもんね。
「私のは大丈夫だよ、ねずみさんに隠すことなんて何もないもん」
…うちの子(?)がかわいすぎて、つらい。なんていい子に育ったの…
私はよくわからない感謝をしつつ、マシロのステータスを鑑定させてもらった。
【名前】マシロ
【種族】ホワイトフェザー
【ランク】D+
【レベル】1/40
【HP】72/72
【MP】70/70
【攻撃力】37
【防御力】41
【魔力】59
【素早さ】60
【器用さ】38
【固有スキル】聖なる光
【通常スキル】飛行Lv7、体当たりLv3、つつくLv2、氷魔法Lv4、光魔法Lv3、聖魔法Lv1、念話Lv5
【耐性】状態異常耐性Lv3、落下耐性Lv2、魔法耐性Lv3
【称号】????の祝福、白の祝福
すごい…!光魔法とか聖魔法とか、全然魔物っぽくないスキルばっかり!固有スキルも耐性も増えてるし、なんだか私の方が魔物っぽいスキルばっかりな気がする。
なにはともあれ、マシロの成長が純粋に嬉しい。
私はマシロの頭を目一杯撫でる。マシロは嬉しそうに、目を閉じていた。
「ふふ、ねずみさんを守るために、私頑張ったよ」
小さなハムスターの私に甘えていたマシロは、いつの間にか立派に素敵な魔物に成長していた。
この世界はまだまだ知らないことばかりだけど…私も、マシロを守れるように頑張らなきゃ。
これからもよろしくね、マシロ。




