24.木の実マスター
あまりに突然の出来事に、思考が追い付かず食べ掛けの木の実を落としてしまう。あ、勿体ない。なんて、そんな呑気なことを考えている場合ではない。
『…え?』
混乱する私を、心配そうにマシロが覗き込んでくる。違うのマシロ、大丈夫なんだけど、大丈夫じゃない…!
『見間違い…?』
私は確かに私を鑑定したはずだ。第一、ここには私とマシロしかいない。いったい誰を鑑定したというのか。
もう一度、改めて、落ち着いて、私を鑑定する。
【名前】なし
【種族】ゴールデンハムスター
【ランク】F-
【レベル】1
【HP】182/196
【MP】179/179
【攻撃力】182
【防御力】186
【魔力】183
【素早さ】181
【器用さ】178
【固有スキル】木の実マスター、動物好き
【通常スキル】鑑定Lv3、体当たりLv1、かじるLv1、鎌鼬Lv4、正拳突きLv2、穴を掘るLv6、ハイジャンプLv2、MP自然回復Lv2、隠密Lv2、水魔法Lv2、土魔法Lv2、聖魔法Lv2、製薬Lv2
【耐性】毒耐性Lv2、麻痺耐性Lv4、落下無効、衝撃無効、幻惑耐性Lv2、炎耐性Lv4、氷無効、魔法耐性Lv4
【称号】転生者、名付け親、スキル好き、小さな勇気、????の加護
………私だ。ゴールデンハムスターなんて、ここには私しかいない。
しかもさっきより攻撃力が上がってる…?な、なんなの…いつの間にこんなステータスに…?
何度もなんども鑑定してみても、これは間違いなく私のステータスだった。
種族、ランク、レベル、スキルに耐性、称号だって、元々私が持っていたもので間違いない。称号の名付け親や小さな勇気だって、なんとなくだけど身に覚えがある。
でも、ステータスやスキル、耐性については身に覚えがないものが多すぎた。いつの間にこんなにステータスが上がり、いつの間にこんなにスキルと耐性を身に付けたというのか。ランクもレベルも、この世界に来た時のままなのに。
バグかなとも思ったけど、試しに草むらに向かって腕を降り下ろしてみたら、草がきれいに切れた。それはもう、スパッと。恐らく、鎌鼬のスキルだ。
いったい私はどうしちゃったんだろう。
「ピュイー?」
マシロが心配して、嘴に木の実をくわえて私に持たせてくれる。お腹は空いてるけど、今はそれどころ、じゃ…?
ふと、私の視線はマシロが持たせてくれた木の実に釘付けになった。さっき私が落としてしまった、赤い色をした小振りの木の実。確か名前は、アキュイの実。
私は恐るおそる、アキュイの実を鑑定する。
【アキュイの実】レア度B+の食用可能な木の実。生のままだと甘く、火を通すと苦くなる。食べると攻撃力が1上がる。
…これか!この実の効果で、私の攻撃力が上がったんだ…!
初めて木の実を鑑定した時は、まだスキルLvが低かったせいか食用可能かどうかと味くらいしかわからなかった。まさかこの木の実に、そんな効果があったなんて…
アキュイの実…私が食事の際に、小振りで食べやすいからとよく食べていた木の実だ。アキュイの実の他にも、よく似た名前の木の実をよく食べていたけど、まさか…?
私は朝食用の木の実からアキュイの実とよく似た名前の六つの木の実を集め、鑑定する。
【ヒキュイの実】レア度Aの食用可能な木の実。固い殻の中には、とろけるように柔らかい木の実が入っている。食べると最大HPが1上がる。
【メキュイの実】レア度Aの食用可能な木の実。少し酸味があり、クセがある。食べると最大MPが1上がる。
【ディキュイの実】レア度B+の食用可能な木の実。甘みが強く、柔らかめの食感。食べると防御力が1上がる。
【マキュイの実】レア度B+の食用可能な木の実。ほんのりとした甘さに、まったりとした滑らかさが特徴。食べると魔力が1上がる。
【スキュイの実】レア度B+の食用可能な木の実。香辛料に近い独特の風味がある。食べると素早さが1上がる。
【デキュイの実】レア度B+の食用可能な木の実。苦みがあり、カリカリとした食感。食べると器用さが1上がる。
…通りでステータスが満遍なく上がっているはずだ。私はどの木の実も好んでよく食べていたから、偏ることなくステータスが上がったんだ。
おまけに、私には木の実の効果が二倍になる木の実マスターのスキルがある。通常であれば1しか上がらないところが、2も上がっているのだ。さっきは何故か3上がったけど、他にも何か木の実の効果が上がるスキルや称号を持っているのかもしれない。
この世界に来てまだ一ヶ月も経っていない私でも、毎食ステータスアップの効果のある木の実を食べ続ければ、いずれは高ステータスになる。
ゲームとかでよくある、宝箱や敵から低確率でドロップするアイテムみたいだ。まぁ、通常ならこんな数は手に入らないはずなんだけど…
私は今も木の実をぱくぱくと啄んでいるマシロを見る。思い返してみると、マシロもレベルが上がっていないのにステータスだけが上がっていることが多々あった。マシロも同じように、木の実の効果でステータスが上がっていたのだ。
「ピ?」
ディキュイの実を頬張りながら、マシロが私を見る。うんうん、今日もうちの子(?)はかわいい。順調にどんどん強くなってるね?
『…これ、他の木の実も何か効果があるよね?』
私のスキルや耐性の多さの要因は、恐らく何か他の木の実だと思う。
私は溜め息をつきながら、二十種類以上はある木の実を改めて鑑定する羽目になった。




