第22話 第三界 相川裕也⑤
俺たち十八人も参加させてもらって、魔法使いの皆さんたちと一緒にアルティエロさんの話を聞いた。
「『第七界』の賢者、村上美沙さんが発案した山羊モドキを倒す方法を、順にすべて申し上げます」
順にすべて……えっと、案その1、案その2程度ではなく、倒すためのアイデアがたくさんあるってこと?
俺だけじゃなくて、魔法使いの皆さん方がざわざわしだす。
「案としてあるだけで、実行不可能である場合もあると思います。ですが、聞いた後で、どの案が実行可能か皆さんで検討願います。途中、ご意見などありましたら挙手願います」
アルティエロさんが話しだして。
第一案は山羊モドキに毒食わせてしまえということだった。
「毒?」
「ええ。山羊モドキが生き物である以上、毒を食わせれば死ぬか体調を崩すかはするでしょう」
「で、でも、毒を食べさえるなんて、どうやって……」
木星サイズのどでかい魔物の口に、どうやって毒を入れるんだ?
「『第三界』の地球の手前の別の『界』の地球を毒化すれば、山羊モドキは勝手にその地球を食べる……体内に取り入れるでしょう……というのが、美沙ちゃん、えっと、『第七界』の賢者の言葉です」
む、村上さん……なんつー案を出すんだよ。
まあ、でも、地球を食べる魔物なんだから、地球を毒化すればいいのか……って、そんな大量の毒ってどこにあるんだろ?
俺が思ったのと同じことをみんな思ったらしい。アルティエロさんは続けた。
「『第七界』の産業廃棄物、核物質、各種の毒。なんだったら、爆弾とか何とか、全部、有るだけ。食わせる予定の地球にまとめておいておけばいいんじゃないかって、これも美沙ちゃんが」
マジか村上さん!
ええと……、使用済み核燃料。高レベル放射性廃棄物つーの? 俺もよく知らないけど、核燃料施設で核エネルギーで電気とか作った後、再利用ってのもするみたいだけど。
高いレベルの放射性廃液とかが発生しちゃうから、液体のままにしないで固めて、高レベル放射性廃棄物とかにして、五十年とか地上管理施設で冷却や保管した後、地面に埋めるしかできないんだっけ?
それ、日本とかから持ってきて、どこかの地球に埋めて、山羊モドキに食わせたら……。うわあ、すげ!
「いやでも、どこから高レベル放射性廃棄物なんてものを盗んでくるのよ」
「魔法使いの皆さんだったらひょいって盗めるんじゃない?」
「大量の廃棄物、転移させるのって危険じゃないの?」
魔法使いの皆さんはきょとんとしているけど、俺たち十八人は、ああだこうだといい始めた。
「山羊モドキ、高レベル放射性廃棄物で倒せるかもしれないけど、それを運ぶ魔法使いさんたちの体が危険だと思います。被ばくして、細胞傷ついて、DNA損傷。細胞死とか、がん化の危険が」
うんうんと十八人で頷けば、アルティエロさんが「あ、それ!」と言った。
「美沙ちゃんの第二案。山羊モドキの身体を魔法か何かでがんにかからせるって」
「うげっ! 第一案と第二案、リンクかよ! 高レベル放射性廃棄物で山羊モドキの細胞傷つけてがん化させるのか! えげつなさすぎる!」
俺は思わず叫んだ。
第一案、前振り? ダブルで採択しろって? うげー。
「いや、別に、美沙ちゃんがえげつないんじゃなくて、そう言う方法もあるって……提案」
アルティエロさんは村上さんを庇う発言するけど。
フツーに考えてエグイし危険!
「えっと、それから第三案、第四案……」
アルティエルさんが言うたびに、俺たち十八人でああだこうだ言って。
ま、巨大ロボットにはみんなで笑ったけど。木下なんか目をキラキラさせてたけど。木下は巨大化系好きだよなーでも無理だよなー。
結局。第一案の核か、第二案のがん化しかないのかなーて思ったら。
「あ、そうだ。最後にもう一つ案がありまして……。美沙ちゃんの提案してくれた話……、転移とか、太陽にとかを、オレなりに『第七界』で検討したときに……これはできるんじゃないかなって思ったんですけど」
まだエグイ案があるのかーって、ちょっとげっそりしたけど。
「山羊モドキは『界』を転移します。転移する際には必ずどの『界』でも地球の側に転移完了する」
うんうん、ま、そうだよな。食い物目がけて転移しているんだから、わざわざ遠くに転移する必要はない。
「で……、山羊モドキが転移するときの、転移軸を、魔法使いたちで、ずらす」
「へ? ずらす?」
「はい。地球から別の『界』の地球へ転移させるのではなくて、その転移の軸をずらして太陽のど真ん中に出現するようにします」
えーと、今いる『界』を食べて、別の『界』に転移しようとする山羊モドキの、その転移先を変えるってことだよな。
地球の側に転移完了させるんじゃなくて……、太陽の中にぶち込むって。
うわ……それって、山羊モドキを燃やすってコト?
つまり、火あぶりの刑?
え、えぐすぎー!
でも、周りの魔法使いさんたちがざわざわし始めた。転移の軸をずらすにはなんて、紙を取り出して計算し始めた人たちもいる。
あちこちで、議論なんかもし始めて。
「『第三界』だけでも『界』を転移できる魔法使いは二十五人くらいいる。他の『界』の転移魔法使いを集めて……百人規模で転移軸をずらせば。更に、百人規模で力が足りなければ、俺が、魔法使いたちの魔法を、増幅・強化します。だったら、山羊モドキを太陽に突っ込ませることくらいできるんじゃないのかなって」
木星サイズの魔物を、太陽で、燃やす。焼き尽くす。
えっと……理科の教科書とか資料集の知識……。太陽って地球の何倍だっけ? どのくらいの火力?
聞いてみたら佐倉さんが「太陽は木星の大きさの約十倍よ」とぼそっと答えた。
「自分の体の十倍の火で包み込まれたら……、いくら魔物でも……燃えるわよね」
「……太陽って、温度、何度だったっけ?」
「表面温度で……ええと、六千度? 中心部分は一千五百万度とかで、えーと、ナノフレア? 爆発現象起こしているところって百万度くらいだったけ?」
「ひゃくまんど!」
「正確には覚えていないけど……。多分、そんな感じだったかな?」
「燃えるっていうよりも……なんて言うか、核融合反応とか、磁力線によるエネルギー伝達の嵐の中にぶち込む……、おそろしいわー」
でも……、食うか食われるかだったら、仕方がないか。俺たちだって、死にたくない。食われたくない。
だったら、やるしかない。
それに、これまでは山羊モドキに対抗なんてできないから、自分たちの地球は食われて、それで火星とかに逃げるしかないって思っていたところに、こんなエグイ対応策をアレコレ提案されて……。
「結論。村上さんてエグイわー」
そう俺がほざいたら、みんな笑った。
でも、助かる希望が見えて、対抗策も考えられるようになったってことで、魔法使いさんたちのやる気ががぜんアップした。
俺も何かできるかな?
できるのなら……、山羊モドキが『界』を転移して、太陽に突っ込むそのときを見たいなって思った。
ちゃんとこの目で、見届けたいなって。
見届けて、それから俺たちの元の世界に帰りたいなって。
そう思ったんだ。
☆ ☆ ☆
『界』を渡れる魔法使いとか、計算している人たちとか、タビオさんとかものすごい忙しそうで。
でも、イズラさんもランカさんも『界』を渡る魔法は使えないし。
暇な人で『界』を渡れる魔法使いとか……いないかな?
アルティエロさんに相談してみたら。
「……教えてくれるかどうかはわからないけど。『第六界』にオレの姉の婚約者が居て。名前はジルベルト・デ・ヴィスコンティ。あいつなら……今、暇っていうか、オレの姉の精神的ケアしているだから……、教えてもらえるかもしれないけど」
どうかなって、アルティエロさんは言ったけど。
俺は頼みに頼み込んで。
山羊モドキの転移軸をずらすための魔法使い集めに、他の『界』に行く人たちの一団に加えてもらって、木下たちクラスのみんなと離れて、『第六界』に向かった。




