6本目
「「かんぱ~い!!!」」
今日という日を迎えられたこと、仲間と同じ時間を過ごせたこと…
自分自身を、そして仲間を労いの意を込めて、高らかに乾杯をする。
「ていうか、お前は何杯目なんだ。」
「え、私?さすがに覚えてないわよ。でもそんなに飲んでないと思うけど?」
「そんなに…ですか。」
部屋に転がる空缶…その数はすでに10を超えている。
伊月はそれを見て、言葉を失った。
「ほら見ろ、伊月の信じられねぇって顔を。そのうえ、さらに追加で酒買ってこいとか、どんだけ飲むつもりなんだよ。」
付き合いの長い本郷も呆れているようだ。
「いいじゃないの、次の休みも三人揃うとは限らないんだから。後悔のないように、この瞬間を楽しむのよ!」
そう言うと佐伯は持っている酒を一気に飲み干した。
本郷と伊月もまた、自分の酒に手を付ける。
そう、この世界では共に休暇を楽しむどころか、無事に会えることすら保証されていない。常に死と隣り合わせの状況が続いている。
「佐伯さんは、どうしてそんなに強くなれたんですか。」
先ほど本郷にしたように質問をする。
佐伯は少し考えたあと、伊月のほうを向き話し始めた。
「私や本郷は、多くの仲間に恵まれていたの。共に支えあい、共に競い合い、共に笑いあった。そして、多くの仲間を見送った。夜遅くまで語り合った仲間が、次の日には墓の中、そんなことを何度も何度も経験した。次は自分がそうなるかもって怖くて眠れない日もたくさんあったわ。そうならないように自分を鍛えたっていうのもあるけど、別の理由もあったんだよ。」
「別の理由…ですか?」
「共に過ごした仲間から、多くのことを託されたから。そして、それを私が受け取ったから。希望を、願いを、その全てを取りこぼしたくないから。だから私は負けられないし、みんなのことを守るために強くなりたい。それが今の私に繋がっているんだと思うよ。」
仲間の存在、託された願い。本郷と佐伯以外とは必要以上の関わりを持たない伊月にとっては、馴染みのない思いだった。
しかし自分だけではなく、誰かのために強さを求めた佐伯、話してはくれないものの、自分の中に確固たる意志を持った本郷。その二人と比べた時、自分の覚悟と思いの弱さを実感した。
「もちろんこれは私の場合ね。伊月には伊月の気持ちがあるし、比べるようなものでもないよ。今は分からなくても、そのうち分かるようになるって。そのために生き残らないとね。…真面目な話をしたら、なんだか辛気臭くなっちゃったね。さぁ!あんたたちもどんどん飲みなさい。今日という日はまだまだこれからよ!!」
何かを掴みかけたのも束の間、今日を生き残れないかもしれないと思った伊月なのであった。




