5本目
今日は任務が少なく、珍しい休日。 任務が少ないということは、ヒトナシの被害や目撃情報が少ないということ。
人々がこの束の間の平和を祝福するかのように、街はいつも以上に活気づいている。
「さて…と、これで必要な物は一通り買えたか。」
「そうですね…あ、先輩。酒を追加で買ってこいと佐伯さんから連絡っす。」
「あ!?酒ならたんまりあっただろ!?……ったく。仕方ねぇ、少し遠回りになるが買いに行くか。酒がなくて暴れられても困るからな。」
本郷、伊月、佐伯の三人も休みを与えられ、せっかくなら集まろうという話になった。本郷と伊月はその買い出しの最中だ。
「にしても先輩、ジャンケンめちゃくちゃ弱いっすね。一勝どころか、引き分けもなくストレート負け。そしてなぜか俺まで買い出しに……。」
「うるせぇな。そこに関しては悪かったって言っただろ。嫌なら断ればよかったじゃねぇか。」
「いやいや、佐伯さんに逆らえるわけないじゃないですか。せっかくの休みなのに医務室送りにされるのはごめんですよ。」
完全無欠の本郷も、ジャンケンだけは絶望的に弱かった。
そして必要なものが多いからと佐伯から伊月も一緒に行くよう命じられた。
文句を言いながらも追加の買い物を済ませる。
「…先輩は、どうしてそこまで強くなれたんすか。」
「なんだよ、いきなり。」
「僕は戦闘能力を高く評価されているし、異能もうまく使っている。自分でもそれを自負してます。でも、先輩や佐伯さんはさらに高みにいる…そんな気がするんすよ。自分と先輩達との差が分からない。経験以外に何か要因がある気がして。」
「……伊月。お前は何のために黒影に居るんだ?」
「え?それがなんの関係が……。」
「俺も佐伯も、自分の中に夢がある。それを叶えたい、その為に全力を尽くしているんだ。そこだけ聞くと青臭い話かもしれないけどな。お前が自分の中に叶えたい夢や、戦う理由を見つけた時、お前はもっと強くなれるかもしれないな。」
笑いながら話す本郷。しかし、嘘を言ってる訳では無いと伊月には分かっていた。真っ直ぐ自分の目を見て話してくれたから。真面目に話を聞いてくれたから。理由は確かに青臭い、だが本郷の目は真剣で、自身の理由にも自信を持っているのが伝わったから。
伊月は考える。自身が黒影にいる理由を、ヒトナシと戦う理由を。自分の実力を試したいから、その為に黒影のような組織は都合が良かったから。そんな理由で黒影に入った。だが今は?強くなるために自分を鍛え、任務だからヒトナシと戦う。思い返せば、特にこれと言った理由なんてなかった。
「まあ、別に今は見つからなくてもいいんじゃねぇか? いつか自分の中で何か理由が見つかった時、それを大事にすれば。」
そう言いながら伊月の頭を撫でる。父親が息子に接するように。
「……臭いですね、先輩。言うこともやる事も。」
少し早足で歩き出した伊月。その表情は満更でも無さそうに笑顔を浮かべていた。




