4本目
「やぁ馨、お疲れ様。」
「おう、佐伯か。お疲れさん。」
声をかけてきたのは佐伯 鈴。
本郷とは同期であり、共に支え合いトップクラスまで上り詰めたもう1人の実力者。その実力は女性でありながら、本郷にも引けを取らないほどである。
「どう、例の新人君。戦闘能力は高く評価されてるみたいだけど?」
「あぁ、伊月か。現場では優秀だな。戦闘能力、危険察知、判断力、どれも問題ない。まるで何年も経験を積んだベテランみてぇだよ。」
「現場では…か。てことは他のこと?」
あぁ…と、ため息を吐く本郷。
その後、任務後のことを話していく。
「なるほどねぇ、そりゃ大変だ。戦闘なら訓練と任務をこなしていけば、ある程度は改善される。だけど報告とかその他に関してはねぇ。」
余程吐き出す相手がいなかったのか、その後も本郷の愚痴は止まらない。佐伯もそれを飽きる様子もなく聞き、どこか楽しそうに会話を続ける。
常に命の危険に晒されている任務。その中で親しい者と話が出来ることは、彼らにとって、この上ない幸せなことなのだ。本郷も佐伯もそれを嫌という程、理解している。同期である2人は、最も長く共に生き、最も親しい相手であることは疑いようがない。
「まあ、よかったじゃない。アンタほどの人間を悩ませる相手が出来て。そいつ、大物になるよ!」
「こんなことで大物にならなくていいんだよ!」
くだらない事を言い、笑い合い、自分が、相手が、生きていることを確認する。
「あ、こんな時間になっちゃった。そろそろ行かないと。じゃあね、馨。」
「おう、死ぬんじゃねぇぞ佐伯。」
「誰に言ってんのよ。私を殺せるのはアンタくらいよ。」
そう言い残して佐伯は去っていく。
同期との会話で気持ちも足取りも軽くなった本郷も、自室へと向かう。明日もまた、この場所へ帰るために。




