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 じゃあ、さようならと言って、ハナさんは去って行った。


 運命の巡り合わせか、ナツミのいたずらなのか、こうして僕はハナさんと知り合ってしまった。


『ねぇアキラ。今を大切に生きなくちゃね。わたしたちって、どっちかと言ったらほかの人たちよりたくさん真剣に生き続けなくちゃいけないでしょう? だからこそ、今を躊躇しちゃいけないんだよね』


 その時もしかしたら、ナツミは自分の病気に気づいていたのかもしれない。


 それなのに僕は、いつものようにマイナスオーラをぶちまけることしかしないで。まったくなさけない。


 こんな僕なのに、ナツミは僕を見捨てないでいてくれた。ナツミの大切な時間のほとんどを僕にくれていたのだ。


 なら僕は、どれだけナツミに返せただろう?


 そろそろ点滴が終わる頃、涙があふれてきた。ずっと泣きたかったのかもしれない。


 ナツミが死んでからたくさん泣いたのに、それでもまだ泣けるんだ。


 ねぇナツミ。僕はきみになにを返してあげられたのかな?


 その時ふいに、スマホが振動した。


 ハナさんからのショートメールだった。 


『早く元気になれますようにっ。今度はアキラさんのためにお弁当作ってあげるから、楽しみに待っていてください。ハナ』


 しかし、それに返事をすることもなく、ナースコールを押した。点滴が終わったのだ。


「あら、西野さん。点滴終わりましたね。会計時に保険証の提出してください。ここ、しばらく押さえておいてくださいね。それでは、お元気でっ」


 僕より少し若い看護師さんは、ハナさんのようにあかるく話しかけてくれた。 

 

 僕はただ、ありがとうございますを繰り返すばかりだった。


 ナツミを想って倒れるなんて、ナツミはいい迷惑だとなげくだろう。


 今はただ、少しでも体力を回復させて、ナツミが死んだこの病院から遠ざかることしかできないのだった。


     つづく

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