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スーパーにはなんでもそろっているけれど、昨今の値上げでかなり食費も制限されてくる。
「唐揚げと卵焼きと、あとなにがいいかな?」
マサミくんはそうだな、と言って、野菜コーナーへ向かって行く。
サラダ? それともおひたし?
「妹に元気になって欲しいから、ほうれん草の胡麻和えの作り方を知りたいな」
「なるほど。でも、教えられることと言えば、茹でて胡麻とあえるだけだよ?」
たぶん、誰でも作れるんじゃないかな?
「フルーツもなにか欲しいところだけど。どうする?」
わたしのいつもの食卓は、食後にフルーツを食べるのが恒例となっている。
フルーツが高ければ、ゼリーとかにしちゃうけど。
「フルーツか。母さんはミカンが好きかな?」
「ん〜。時期的にミカンがないからゼリー作ってみる? そうしたらミカンの缶詰め使ってミカンゼリーになるけど」
ゼリーだって、寒天と混ぜるだけだから割と簡単なんだけど。
「じゃあそうするよ」
そして取扱が簡単な粉寒天とミカンの缶詰めをカゴに投入。
豆乳も身体にいいんだけど、今回は見送ろう。
「ねぇ、マサミくん。わたし、どうすればいいのかな?」
「なにを? そしてなぜそれを僕に聞くの? これで二回目だよ」
ああ、そうだったよね。前の時もわたし、マサミくんにすがってしまったんだった。
「僕と付き合えばいいなんて言ったけどさ。そんなにアキラさんのことが気になるんだったら、何回でも気持ちをぶつけてみればどうかな?」
「断られても?」
「断られても。だって、きみが一番ご飯を食べて欲しい相手はアキラさんだろう?」
はっとした。
わたし、そんな簡単なことに気づかなかったなんて。
「あのね、マサミくん」
「いいよ。唐揚げは難しいかもしれないけど、今はいろんなツールがあるから、本気で料理しようと思えばならう場所はどこにでもある。でも、食べて欲しい相手はかぎられているよね?」
「……うん。ありがとう、マサミくん」
「いいんだ。新聞勧誘には気をつけて」
「うんっ。また明日」
マサミくんはひらひらと手を振った。
わたしの足はもう駆け出していて、アキラさんの住むアパートへ足を進める。
ああ、買い物してきたもの、全部わたしが持ってきちゃった。でも、大丈夫だよね。マサミくんなら、いくらでも料理できちゃいそうだもんね。
気持ちが前のめりに吐き出しそうになる。好き。それだけなのに、わたしはアキラさんにご飯を食べてもらいたいから。
新聞勧誘のおじさんなんてもう怖くない。
アキラさんちの合い鍵、返してなくてよかった。
つづく




