6ー5
目が覚めたら、熱が下がっていた。
まぶたの下がかぴかぴになる前に両目の涙を拭った。
嫌な夢を見た。
とても現実的な夢だった。
今のわたしに必要な夢だった。
アキラさんを忘れるためにはどうすればいいんだっけ?
あたらしい恋をすれば、忘れる?
本当に?
どこかでその人とアキラさんを比べたりしないのかな?
わたしは、どさくさでマサミくんとつきあうことになったけれど、きちんとつきあえる自信なんてない。
つきあうって、どういうこと?
ほんの短い時間だったけど、山田とつきあった時にもお弁当を作ってあげたくらいの記憶しかない。
というか、思い出したくない。
お弁当以外のアトラクションが欲しいな。
時期的に、クリスマスもバレンタインもホワイトデーも、それから誕生日すらかすりもしない。
そんな便利なアトラクションは、どうすれば手に入るのかなぁ?
熱が冷めたらお腹が空いた。
ベッドから起き出して、一階に降りる。マサミくんが買ってきてくれたヨーグルトを食べに行かなくちゃいけない。
それで明日学校に行ったら、昨日はありがとう、とか平気な顔をして言わなくちゃいけないんだよね。
お礼に紙パックのコーヒー牛乳をおごったりすればいいのかなぁ?
お弁当は作りたくないな。
今はまだ、料理をしたくない。
お父さんは帰ってきた形跡があって、洗濯機が回っている。
晩御飯なに食べたんだろう?
ついさっきまで熱があったのに、もう明日学校に行くことを考えている。
だって、学校に行っても行かなくても、アキラさんに会うことはないから。
だったらマサミくんに会った方がいいよねって、ずるくて図太いことをたくらんでしまっている。
さっき風邪薬のんだから効いてるだけかもしれないのに、わたしって単純だな。
ヨーグルトを食べ終えて。スプーンを洗って歯を磨いた。
今日は粒入りの歯磨き粉にしよう。
わたしの歯磨き粉コレクションはすごいぞぉ。
……そっかぁ、そういう話をマサミくんとすればいいんだ。なるほどね。
で、ここまでの間にアキラさんのことを思い出していない。上等じゃないよ。
でも、さあ。
やっぱり最後にもう一度だけ、アキラさんに会っておきたかったな。
つづく




