6ー3
家に帰るとやっぱり熱があった。久しぶりの発熱で、どうしたらいいのかわからない。
そう言ったら、マサミくんが必要なものを買ってくるから着替えて寝ていてねって返ってきた。
わたし、最初からマサミくんのことを好きになっていればよかったのかもしれない。
マサミくんは優しいけど、きちんと厳しいことも言ってくれる。
熱でとがった発想を埋めてしまいたくて、冷凍庫からアイス出して居間で食べていたら、マサミくんが心底あきれた顔で苦笑いしていた。
「見つけちゃった。アイスなんて食べてて平気?」
「うん。平気。見つかっちゃったから言うけど、アイス食べていいよ」
「いや、僕はお粥を作るよ。アイスの後でもいいから食べてくれる?」
「え? マサミくん、お粥作れるの?」
え? って、逆にマサミくんに驚かれてしまった。
「妹がよく熱出していたから、炊飯とお粥と味噌汁くらいは作れるよ。もちろん、インスタントでもいいんだけど、なんか味気ないじゃない? だから塩粥作るから、ここにいる?」
「うん。マサミくん、すごいなぁ」
わたしは、料理どころじゃなくなっちゃったよ。
ああ、なんか作り慣れてるんだね。手際がいい。土鍋があってよかった。
お粥が出来上がった頃にはアイスを食べ終えていた。
「マサミくんは、わたしのどこが好きなの?」
「さぁてねぇ。僕もわからないけど、気づいたら目で追ってた。それで山田にちょっかい出されてるのを見て、勝手に嫉妬していた。引く?」
「ううん。嫉妬されたのって、初めてかもしれない。なんか痛そうだよね」
「そう。痛いよ。胸がちくちくするんだ。それでも好きが譲れないんだからね」
不便だよね、ってマサミくんが言った。
「恋を忘れる薬とかあったら、売れると思うんだけどね」
いただきます、とマサミくんのお粥を口にした。ほんのりと塩味が効いていて、口の中が優しさであふれる。
「食べたら薬飲みなよ。風邪薬買ってきたから。あとはお好みでヨーグルトも買ってきたので、よかったら。それじゃ、僕帰るね」
「うん。ありがとう、マサミくん」
そう言ったら、マサミくんがなにかすごく重要な考え事をしているように視線外した。
「恋って、人をずるくさせるのかもしれないね。僕は、弱ったハナちゃんにお粥食べさせた時点で後ろめたい気持ちがあるから、ハナちゃんもあんまり悩まなくてもいいんじゃないかな?」
それだけ言うと、マサミくんは颯爽と帰って行った。
一人になって、居間から立ち上がるのが億劫になって、また少し泣いてから眠った。
つづく




