6ー1
生姜焼き、ドライカレーときて次はなににしようかなと思ったんだけど、オムライスはさすがにタッパーに入らないよね。
ケチャップでハートマーク描いてみたい気持ちはあるけど、あのアパートで長居をするのは気が引けるし、やっぱり新聞勧誘のおじさんが怖い。
「ねぇ、マサミくんは今、なにが食べたい?」
放課後、二人で食料の買い出しでスーパーにいる時、聞いてしまった。
「僕? オムライス」
「うん。やっぱりオムライス食べたいよね。わたしもオムライス作りたいし」
「どうするの? タッパーで持って行くの大変じゃない?」
「それなんだよねぇ。なにかいい方法ないかな?」
その時、アキラさんくらメッセージが届いた。
『ハナさんへ。お弁当も晩御飯も作らなくていいです』
なんでって、頭の中が真っ白になった。
わたしのお弁当、おいしくなかったのかな?
『僕に彼女ができました。だから、もう作ってくれなくてもいいです』
「なんだ……」
それが本当のことだか聞くこともなく、わたしの心はすとんとこの世界から飛び出して、成層圏を抜けちゃったような気分になる。
「どうしよう、わたし失恋しちゃった」
ああ、やっぱり涙が出るんだな。確認してないけど、そういうことだもんね。わたしがよけいなことしなければよかったんだよね。
「ハナちゃん? どうした?」
マサミくんに聞かれて、涙があふれる。説明できないから、メッセージを読んでもらった。
「オムライス、作りたかったんだけどな」
「作りなよ。食べてもらえばいいじゃん? 彼女だなんてどうせはったりだよ」
マサミくんはそう言ったけど。
もし本当だったらアキラさんがこまるもの。
『今までありがとう。お弁当箱、ドアノブにかけておきます。これからまた仕事に行くので、鍵はポストにでも入れておいてください』
ここまではっきり拒絶されたら、そりゃあもう。
拒絶だよね。
オムライスなんて浮かれていたからいけないんだ。
もっと普通のお弁当にすればよかったんだ。ウィンナーソーセージとか卵焼きとか、ポテトサラダとか。ああ、ポテトサラダは作ったんだっけ。
もうなんか、頭の中がぐしゃぐしゃになってる。
「マサミくん、どうしよう。わたし、失恋しちゃったよ」
無意識にマサミくんのブレザーの裾をつかんで泣くなんて。
「じゃあ、僕とつきあおう? 僕ならハナちゃんを泣かせないし。お弁当だってよろこんで食べるし、なんなら一緒に作るのでもいいよ」
たぶん、マサミくんのことを好きだったらよかったんだよね。
わかっているのに、その案に乗れないわたしがいる。
「じゃあとりあえず、外に出ようか?」
わたしはマサミくんにつかまって、カゴの中のものを精算して外に出たのだった。
つづく




