Interlude また別の彼の場合
どうしてかな? いつもハナちゃんのことが気になっていた。
恋かもしれないのに、認めたくないんだ。
だって妹が入院していて。結構厄介な病気らしいということを父さんから話して聞かされたんだ。
恋なんかしている場合しゃない。妹につきっきりの母さんは、元なんかのミスコンでいいところまで残った美人なのに、人当たりが良くて優しいから、変な男につきまとわれて刺された過去を持つ。
その時、僕はまだ小さかったけど、母さんになんてことするんどってそのおとこの手に噛みついてやった。そのせいで乳歯が一本抜けたけど、かまうもんかって思っていた。
その男は、僕と妹をその時初めて見たような顔をして、あきらかにショックを受けていた。
子連れだとは知らなかったとかなんとかわめいていたけど、警察に連れて行かれて、以来母さんはすっぴんで外に出ることを避けるようになった。
もっといかつい顔つきにしないとなめられるとか言ってるけど、覆面でもしない限り、美人オーラはかくせないだろう。
とにかく、そんなストーカー事件をきっかけに、恋が人を惑わし、あらぬ方角に向かうことを逆説的に学んだ。
たから、恋はしないんだ。
ハタチすぎて、働いて、自分の生活に自信を持った時に結婚を前提としたおつきあいをするもんだ。
ずっとそう思うようになった。
ハナちゃんはかわいいけれど、そう言ったら嫌がるんだろうな。
よりによって山田なんかとつきあうから、ストーカーされるんだよって言えばよかった。
とうせなら僕とつきあえばよかったのに。
そうしたら、誤解させてつきあって、こっぴどく振ることもできたのにな。
そのせいでお互い、恋についてトラウマになったりして、数年後に再会した時に結婚したりできたのにな、なんて割と本気でそう思っていたクズは僕です。
そりゃあさ、ハナちゃんの気持ちもわからなくないよ?
クラスのほとんどが彼氏彼女の恋愛三昧見せつけられたら、自分も恋しなくちゃいけないのかなって思うだろうよ。
でも、それも含めて山田の策略だって僕は思ってるんだ。
そうじゃなきゃ、不自然にクラスメイトで遊園地に行って、不自然な時間帯に不自然に二人ずつで観覧車なんかに乗らないって。
なのにハナちゃん。まんまとだまされちゃうし。
観覧車のてっぺんで告白されてるんだろうなと思ったら、降りてきて恋人同士になっていたという、これもまた不自然極まりない。
嫌な予感はしていたけれど、山田はすぐに浮気をしてハナちゃんを泣かせたくせに、ストーカーになるという、これまたクズっぷりがすぎる。
そんなわけでまんまとハナちゃんに近づくことができた。彼女の作った唐揚げ、おいしかったな。
ところで、アキラさんって誰?
盗聴器は全部はずしたから、ハナちゃんを僕に譲ってくれないかな、なんて全女子に怒られそうなことを考えてしまう。
そうだな。僕にできることと言えば、せっかくだからきちんとハナちゃんから料理を教わっておこうかな。
つづく




