表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/35

Interlude 彼女の場合

 本当にひとりぼっちの人が、どんな思いを抱えているかを考えたことがない。


 わたしが六歳の時、お母さんが盲腸の破裂で死にそうになって。その時たくさん泣いたから、おかあさんが留守をしていても泣かなくなった。


 トライアスロンなんて、つらいだけじゃないのかなって思った時は、お母さんがにこにこ笑っているからつらくないんだなって伝わってきた。


 お父さんは、お母さんが留守にしていることをさみしく思わないのかなって聞いたら、毎日電話しているから平気だよって言ってた。


 さみしさなんて、そんなものかと思った。


 だけど、アキラさんのは違うと思う。ナツミさんに先立たれて、たくさん泣いて、栄養失調で倒れるくらい思いつめていた。


 もしかしたら、毎朝目が覚めた時に孤独を感じているのかもしれない。


 そうじゃなきゃ、あんな顔して泣かないもの。


 それは、今から十年前のことだけど。今でも鮮明に思い出せる、アキラさんが声を殺して泣いていた姿。


 その頃は、男の人も泣くんだって不思議に思ったけど。のちによほどのことがないかぎり、泣かないものだよ、ってお母さんが教えてくれた。


 もしかしたら、あの時のアキラさんが立場変わってお父さんだったかもしれないと思うとやりきれない。 


 こんな、胃がきりきりするような思いを毎日過ごしているのだとすると、なにを食べてもおいしくかんじるか、本当は味なんてしていないのかもしれない。 


 そうか、味がしなかったということか。


 それで、かたくなった生姜焼きでもおいしいって食べてくれたんだ。


 アキラさんは、なにを食べてもおいしいって言うのなら、お弁当を作って持って行くことすらも気負いしているに違いない。


 だったらもう、手を引くべきなんじゃないだろうか。


 マサミくんに言われるまでもなく、感じていたけれど。


 そう、近いうちにきちんと返事をもらって、終わりにしなくちゃいけないよね。


 だってこんなの、アキラさんは望んでないのだもの。


 ねぇ、アキラさん。


 あなたの心は今、どこに居ますか?


     つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ