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5ー4

 調理前の絶対的な習慣がある。


 まず、手を洗う。ハンドソープで爪の間まできっちりと手を洗う。


 マサミくんと一緒に電気屋さんで盗聴器発見器を買ってから自宅に着いた。


 ハンドソープが残らないよう、真剣に水道で洗い流す。


 絶対的な習慣は変えられない。


 手を洗わないで調理をするなんて、ありえないから。


「すごい。完璧に洗い流すわけだね。神聖な儀式を見たような気分だよ」


 じゃあ僕も、と言って、マサミくんが手を洗う。わたしのやり方をしっかり覚えてくれていて、卒がない。


 それからまな板も洗い流した。食中毒は怖いからね。これも絶対的にはずせない習慣。


 今日はドライカレーと野菜サラダを作ることに決めてある。


 アキラさん、辛いのが大丈夫なのかわからないから、無難に中辛のルーを用意した。


 へぇ〜、ほぉ〜? ふぅ〜ん?


 というあいずちを打ちながら、マサミくんがノートに要領を書き写してゆく。


 こういう時は、スマホで動画を撮るものかと思ったけれど、どうやらマサミくんはアナログ派のようだった。


 野菜サラダなんて、市販のドレッシングの小分けのやつを用意したし、カニカマはいつもより少しだけお高いものをチョイスした。


 わたしのせいで、アキラさんに迷惑がかかっちゃうところだったから、発見器も含めて迷惑料のつもりだ。


 仕上げにリンゴをウサギさんに切って、それぞれのタッパーにつめてゆく。


 冷めたら完成。


「なるほどね。僕はまず、包丁の使い方を覚えなくちゃいけないみたいだな」


 マサミくんは真剣に頷いていた。


「僕、実を言うとリンゴの皮むきとかやったことないんだよ」

「それはそれは。余ったリンゴで練習してみる?」

「いいの?」

「うん」


 ということで始まった、マサミくんのリンゴの皮むきだけど。ピーラーを使わせようとしたら、包丁でやってみたいって言うから、黙って見守ることにした。


「あっ」


 皮と身の抵抗に慣れてないから、ざくっと深い場所に包丁が入ってしまった。


「いいよ。正解なんてない。それが料理だよっ!!」


 わたしが励ますと、マサミくんは気を取り直して包丁を引き抜いた。


「うわ。リンゴの皮むきってこんなに大変だったんだね。今まで何の苦もなくリンゴを食べてきたから、母さんのありがたみがわかったよ」

「そうね。でもきっと、マサミくんならできるようになるよ。だって、お母さんと妹さんのためにお弁当を作ろうとしているんだもん」

「そうだよね。ハナちゃんをおどして弁当を作らせようとしていた山田なんかには、このありがたみなんてわからないよな」


 そうそう。


「それでもって、料理は愛情と勇気と根性が必要。って、なんだか少年漫画の絶対条件みたい」


 そう言って、二人で笑った。


     つづく



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