4ー3
山田に尾行されてるなんて、全然気づいてなかった自分にあきれてた。
山田がそこまでわたしにこだわる理由なんてないはずなのに。
あんな奴にストーカーされるなんてすごく悔しい。
だからこそ今日は、絶妙においしい生姜焼きとポテトサラダを作ることを決めていた。
ご飯とあうからかき卵汁も追加して。
アキラさんがいつもいる部屋に入るまで、まだ山田に尾行されていたら嫌だから、遠回りをした。
山田の奴、アキラさんのことをおじさんだなんて言った。ひどい悪口だよ。
アキラさんをそんじょそこらのおじさんと一緒にしないで欲しい。
アキラさんは、ものすごく心のきれいな大人なんだぞっ。
山田ごときにごちゃごちゃ言われる筋合いなんかない。
炊飯器は空っぽだったから、お米を研いで、セットした。
どことなく昭和の影が漂うガスコンロは二口で、どっちもろくに使ってないみたいにきれいな状態を保っていた。
わたしはそこに、新品のフライパンをすべらせる。
スーパーで調達したごま油をひき、豚肉を投入。
本当はできたてを食べて欲しいけど、そこまで図々しくない。
それに、わたしとアキラさんの関係に名前をつけるのは邪道な気がする。
だって、アキラさんはアキラさんだから。
わたしの知らないナツミさんのことをアキラさんは知っている。
きっとナツミさんしか知らないアキラさんもいるはずだけど、残念ながらそれを聞くことはできない。
でも、わたしは生きている。アキラさんと同じ時間をこうして生きている。アキラさんの好物を知らないけれど、これから知ることだってあるんだから。
わたしは幸運だ。こうしてアキラさんのために晩御飯を作ることができるのだから。
その時、ふいに玄関先のガラス戸に人の姿が映った。てっきりアパートの住人だと思っていたのに、その人影はこの部屋のドアの前で止まったままだ。
……誰? アキラさんだったらきっと声をかけてくれるはず。
山田? だったらとっちめてやらなきゃいけない。
アパートの住人だとしたら、調理の音がうるさい、とかのクレームかもしれない。
わたしは決意して玄関を開けた。
つづく




