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玄関を開けると、知らないおじさんが立っていた。
「なんですか?」
「お譲ちゃん、新聞とってくれないかなぁ? おじちゃん、ノルマ達成できないとお給料もらえないのよ。洗剤もつけるからさ、どう?」
新聞の勧誘? まさかのオチなのに、まだ胸がドキドキしている。
山田でも、住人でもなく勧誘!!
「あの。わたし……」
断るの一択だから、慎重な言葉選びが必要だと思った。
「お父さんが、新聞はとらないって言っていたので、ごめんなさい、とりません」
深々と頭を下げると、おじさんの乾いた笑い声がして、おずおずと顔を上げる。
「いい匂いがするね。晩御飯なに作ってるの?」
「ごめんなさい、新聞はとりませんからこれで失礼します」
ドアを閉めようとしたら、おじさんががんって身を乗り出して、自分の身体をドアにはさんでいた。
こわい。瞬間的にそう思った。
「そう言わずにさぁ。今ならスポーツ新聞もおまけでつけといてあげるから、どう?」
「お断りします。出て行ってください。警察よびますよ?」
ちっとおじさんの舌打ちが聞こえた。
「あんたさぁ、このアパートの住人じゃないでしょう? うさんくさい優男の部屋だもん、ここ。あんたみたいな若い女連れ込むようなタイプじゃないと思ってたんだけどね」
「連れ込まれてませんし、そんなんじゃありません」
「じゃあなんで知らない女が勝手にひとの家で料理してるの? どういう関係?」
アキラさんがおそれていたのはこのことだったのか?
わたしはアキラさんのなに?
答えなんてわからないよ。
途方に暮れているところに、聞き覚えのあるイケボが届く。
「ハナさん、どうしたの? あなた、うちは新聞とらないって前から言ってますよね!?」
アキラさんだ。アキラさんがかけ足で近づいて、強引にドアを開いた。
おじさんの体は押し戻される。
「いやね。あんたもこんな若い女連れ込むくらいだから、そろそろ新聞とってくれるだろうと思ってさ。ビール券あげるけど、どう?」
「いりません。お酒は飲みませんので」
「酒を飲まない!? そんな人生なにがおもしろいの?」
「放っておいてください。あなたには関係のないことです」
「そんなこと言ったってさぁ。じゃあお譲ちゃんの本当のうちで新聞とらない?」
かなりしつこいな、この人。そしてわたしの体はぎたがたと震えていた。
「じょうだん。今はネットの時代ですよ? 新聞がすり下ろされる前にあたらしいニュースが起こってます」
アキラさんはそのおじさんに強く言い置いて、ドアを閉めてしまった。
「ちっ。つまんねぇ男だなぁ」
おじさんはサンダルを鳴らして去って行ったようだった。
わたしは、怖くて今ごろ腰砕けていた。
つづく




