4ー2
学校から家に帰って、着替えてから冷蔵庫をのぞいた。
多分、アキラさんの家には調理器具が足りないような気がするから、ホームセンターで買い足しておかなくちゃ。
それから卵は絶対に使うし、豚の生姜焼きを作るためには豚肉と生姜が必要。
ほかにはポテトサラダを作るつもり。
なんかわくわくしてる。
よく考えたらこれって、恋人同士のやることだよね?
アキラさんが弱っていた理由がじりじりとわかってきた。
よく考えると恥ずかしいけど、後悔はしない。
アキラさんにはバランスのいいご飯を食べてもらいたいんだ。
そのためにはわたしの調理もランクアップしなくちゃいけない。ネットで検索するのもいいけど、やっぱり基本をはぶきたくないから、時短料理はしない主義なんだ。
待って。アキラさんの家には片栗粉とか小麦粉とかってあると思う?
ここで簡単にメッセージで聞いちゃうのは、なんだか味気ない。
ビックリ箱を開ける前にネタバラシしてるようなものだもの。
これも家から持って行こうっと。
はむちゅんにあいさつして、わたしはまた家を出た。
今からアキラさんのアパートに向かうけど、帰りは遅くなっちゃうかな?
でも、料理して帰るだけだから。
やましいことはなにもない。
お父さんにはメッセージを送ればいいよね?
ホームセンターで鍋やフライパンなんかの調理器具を買ってからスーパーに直行する。
家で足りなかった食材を買い足しつつ、自分のお弁当の材料も買い足す。
将来のことって考えたことがにいけど、もしかして食堂経営とかできたりして?
商業の世界はあまくない。それはわかっているけど。
大好きな料理が仕事になるのだったらとても素敵。
買い忘れがあって、なにげに振り向いたら山田と目があった。
「やだ。ちょっと、つけてたの?」
わたしが言うと、山田はあきらかに失敗したような顔になる。
「たまたま見かけたから」
「たまたま? カゴも持たずにスーパーにいるってわけ?」
せっかく気持ちが盛り上がっていたのに、一気に冷めてゆく。
「ねぇ。そういうのってもう犯罪なんじゃないの? 尾行なんてストーカーよやることだよ」
「ハナだって、変なおじさんに料理するつもりなんだろ? ファミレスで聞いたぞ」
「信じられない。そこから尾行してたんだ? バカじゃないの? わたしのお弁当をまずいって言いふらしておきながら、なにがしたいの?」
「浮気のことはあやまるよ。もうしない。だから、一回だけゆるしてくれよ?」
はぁ。あきれはててため息が出た。
「だから、わたしの気持ちを考えて欲しいんだよ。わたしの頭の中のどこにも山田はいないの。それなのにゆるすゆるさないの問題じゃない。尾行されてるってわかってすっごく気持ち悪いの。最低の気分よ。わかる?」
「でも相手はおじさんじゃないか」
「あなたに言われる筋合いはない。わたしのことに口出ししないで。なんなら警察呼ぶけど?」
わたしの剣幕に、ほかのお客さんたちが注目し始めた。さすがの山田も警察と聞いて身を縮ませた。
「……わかったよ。ごめん。もうしないよ」
「絶対だよ?」
わたしは山田が去って行くまでずっと見送っていた。
会計をすませた後も、尾行されているような気がして気持ち悪かった。
つづく




