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「そのっ。叱っているわけじゃないんだよ? ただ、親御さんにこのことが知れたらなんて答えるつもりなのかなって。偶然昔入院していた人の知り合いだからって言っても、心配すると思うんだよ」
「そんな。そんなことない。だってお母さんはわたしが知らないうちに真っ黒に日焼けしてトライアスロンしてるし、お父さんは残業代が出ないのに残業してるし。それに、わたしはわたしがアキラさんにお弁当を作りたいから作っているだけなんです。それじゃ、だめですか?」
涙が出るのはずるいけど、止められないから必死に言葉をつむいだ。
軽い過呼吸みたいになって、仕方がないから残っていたアイスティーを飲んだ。少し、落ち着いた。
「そうだとしても。僕から言わせると生き倒れた時のお礼もまだ言ってない女子高生からお弁当をわけてもらいました、で話が終わると思っていたんだ。だからメッセージの返信もしなかった。それは悪いと思っているよ。でも、こういうのはこれっきりにしてもらえないかな?」
うんって、一回強く頷いた。涙をごくんと飲み干した。ハンカチで涙を完全に拭き取ると、息を吐いた。
「わたしたちの関係に名前がないからですよね? だったらつきあいませんか? まだナツミさんのことが忘れられないのはわかります。でもわたし、そんなアキラさんも含めて好きになってしまったんです」
告白したっ。言えた。
「そういうの、こまるんだよ、本当に」
そう言われると思っていた。だからもう引き返せない。
「だったら、アキラさんの気持ちに整理がつくまでお弁当を届けてもかまいませんか?」
「整理って、きみ。僕ら十歳も年が離れているんだよ? ありえないだろう?」
「わたしは誰かと自分を比べたりしません。わたしはわたしの気持ちに正直にアキラさんを好きになったんです。だからお願いします。わずかでも希望があるのなら――」
「悪いけど、その気持ちにはこたえられないんだ。わかるよね? 僕は大人で、きみはまだ高校生。この壁は越えられないよ?」
「だったら友だちになりましょう? わたしの気持ちは知られちゃったけど、聞かなかったことにしてもらえませんか? 友だちが行き倒れたからお弁当を作ってあげたい、栄養のあるものを食べてもらいたいっていう押しつけです。アキラさんはこの際、年の離れた友だちにお弁当を押しつけられるわけです。それならおかしくないでしょう?」
言いながら自分で、それもおかしいだろうと思ったけれど、後悔なんてしたくない。
「きみは友だちをこまらせても平気なのかい?」
アキラさんは、こまった顔をして泣きそうだった。
ごめんなさい。若さの特権で押し切るつもりでいます。
つづく




