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3ー2

「ハナさんって、高校生?」

「はい。お弁当は毎日作っているので、気にしないでください」

「それなんだけど。会えなかったのにずっと二人分作ってくれていたの?」

「はい。偶然の出会いを期待していたんですが。うまく会えませんでした」

「ごめんね。そこのコンビニ、クビになっちゃったんだ」


 そうなんですね、なんてあいすちをうちながらアイスティーを飲む。


「体の方はその後、なんともありませんか?」

「うん。元々頑丈なだけがとりえだからね。あの日は給料前だったから、油断していたんだ」


 そんなこと言って。素直にナツミさんのことを想ってたって言ってくれてもいいんだけどね。


 わたしにはそんな話、聞かせられないか。実質まだ二回しか会ってないんだから。


 子供の頃に出会ったのはノーカンにしておこう。あれは一方的にわたしがアキラさんの泣く姿を見ちゃっただけだからね。


 その話をする勇気は、わたしにはないよ。


「じゃあ、アキラさんが好きな食べ物ってなんですか?」


 コーヒーが好きらしいというのはわかった。


「お弁当作りの参考にしたいんです」

「悪いんだけど。ハナさんにこれ以上お弁当を作らせるわけにはいかないよ」


 あきらかな拒絶の言葉にわたしの胸がぎゅっと締まった。


「友だちでもないんだから、毎日作られたらこまるってことを言うために、今日会ってもらったんだから」

「友だちじゃなくても友だちでもいいじゃないですか。わたしがお弁当を作りたいだけなんですから」

「でもね。年頃の娘さんが、赤の他人にお弁当を作ってるのって、やっぱりそういうのはよくないよ。そりゃうっかり連絡先交換しちゃったけど」

「それは世間一般のことですよね? わたしはアキラさんの気持ちを知りたいです」

「知ってどうするの? それとも迷惑だなんて言わなくちゃいけない? そんなこと言うつもりはなかったんだけど」


 アキラさんは、優しい。そこにわたしが勝手に付け込んだから。バチが当たったんだ。


「迷惑でもなんでも。わたしはアキラさんに、もっと健康的なものを食べてもらいたいだけです」

「どうして?」


 この人、本当に鈍いのかな?


 それともわたしが図々しいの?


「それは。……ナツミさんの彼氏だったから」


 それで? と話をうながされたけど、うまい言葉が見当たらない。


「ナツミさんもきっと、アキラさんには健康的でいて欲しいって願うはずです」


 弱ったな、とアキラさんがささやく。


「きみはなにか勘違いをしているのではないかい? 僕はきみにお弁当を作って欲しくなんかないんだよ?」


 駄々っ子に言い聞かせるような、丁寧であまい声色。


 だからかな? 思わず涙があふれてくるんだ。


     つづく


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