表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水谷誠司が異世界転生してアーシュに出会うまでの冒険譚が少しも、綺麗じゃない件について!  作者: 八車 雀兄
Q

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/27

no title




 だれも人生のはじまりを憶えていない

 だれも人生の終わりに気付くことは出来ない

 でも祭りははじまり

 祭りは終わる

 祭りは人生ではないし

 人生は祭りではない

 だから人さらいがやってくる

 祭りがはじまるその日暮れ

 人さらいがやってくる


 安部公房『カンガルー・ノート』




   *




「それ以上踏み込まない方が、あなたの幸せです」



 輪廻は静かに俺の思考を読んだ。



 じっとりと、嫌な汗が背中を濡らし始めた。



 明日人は新作ゲームの主役として、世界中から愛されるアーシュに転生する。

 そして、ゲームに接続した万人の心の中に生き続ける永遠の存在――そう、思っていた。



 しかしそれは、今まで人として――。



「お止しなさい――それ以上は、あなたが不幸になるだけですよ?」



 輪廻の表情は夕闇に溶けて見えない。俺は、闇に目を凝らしながら訊いた。



「なぁ、無垢な魂っていうのは、子供の魂って――意味だろ?」



その通り(イグザクトリー)……穢れ無き魂魄の中には、母体に宿りながらも出生することの叶わなかった者も含まれています」



「そいつは、そもそも()()()()()()()()()()って、ことだろ?」



「――ノーコメントです」



 地獄の赤い空に漆黒の帳が下ろされた。



 鎖は、子バイソンを乗り物にして、地獄の街を目指していたらしい。俺たちは、地獄の鬼たちが集う宿に到着した。


「ここなら、野宿しないで済むだろ」


「✂良い宿ですね」


「輪廻に教えてもらったからな」


「✂ふむ。水谷誠司は、風呂にでも入ったらどうですか? 私がお湯を生成してあげましょうか?」


「……」


「おい! 誠司、風呂キャンすんなよ!?」


「そうじゃねぇよ……」


「なんだ? 腹でも減ったのか? 仕方ねぇな。和牛とメカブ生成してやっから、機嫌直せよ?」


「✂顔色がすぐれませんね……温かい飲み物はいかがですか?」


 AI二匹(ポンコツ共)はすかさずケアをし始めた。輪廻は押し黙って俺たちを監視している。


「風呂入ってくる」


「✂それなら、良いところがありますよ」



 ポンコツメガネは、地獄谷温泉という所へ俺を案内した。



「うわぁ――普通に温泉だ……」


 俺はベトベトになった、体を洗って露天風呂に入った。AI二匹(ポンコツ共)も、楽しそうに入っていた。


「輪廻は?」


「✂後から来るって言ってましたけど――」


 (ポンコツメガネ)は曇ったメガネを拭きながら微笑んだ。


「なぁ、空間端末って、どうやったら出せんの?」


 俺の言葉に(金髪傷野郎)がお節介を焼き始めた。


「は? そんなことも知らなかったのかよ? 輪廻にちゃんと、聞いておけよ~。ホラ、ここの視界の端に手を持ってくと――出るだろ?」


「✂基本的な事を聞けたあなたは偉いです✨

 知らないと言うことを言えたのですから――」


 この二人(ポンコツAI共)ときたら、少し話しかけただけで、毎回これだ。


「あ、ホントだ――。てか、黒塗り部分だけ除外出来ねぇの?」


「それは、ここの絞込み検索を押して――ホラ。出んだろ?」


「サンキュー。

 に、しても見にくいインターフェースだな。作り替えてぇ……」


「そんな権限あんのかよ?」


「もう少し背景透過させたり、フォントの大きさを変えたり位は出来る筈だ。カスタムなら、輪廻がやってるの見たんだけど……」


 俺は湯船に浸かりながら、設定ページを探した。

 不親切設計になっているのは、制作者の意図がある気がした。

 なにより、輪廻は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 知られたくない何かがある筈なのだ。


「この黒塗り外せ無いのか?」


「は?! おいおいおいおい。なろう無印で、ムーンライトをぶっ込む気かよ!?」


「違ぇよ、ポンコツ!! 早とちりすんな! 明日人に関する内容が、ほぼ無い。おかしいだろ――」


「✂それは――私達が伴走出来ないような内容が多すぎるからでは?」


「いや、待て、相棒。それにしても、確かに明日人だけじゃない。ゲーム会社ANZAIに関する項目が無さすぎる。

 ANZAIは国内最大手のゲーム機メーカーでもあるのに、ゲーヲタの誠司が過去にプレイした『ディグ伝』以外のゲームまで全部消されてるじゃねぇか――。

 誠司、お前公式サイトやXもフォローしてんだろ? 

 おい、Xどころか、ANZAIに関する全てが黒塗りになってんじゃねぇか――なんだこりゃ?

 ちょっと待ってくれ、解析始める――」


 (Grok)が解析に長考し始めた。


「いや、そろそろ出る。消された部分(こんなもん)に拘ってても仕方ねぇ」


 俺は鎖の解析を中断させて立ち上がった。

 鎖は、納得いかない表情だったが、三人で風呂上がりの牛乳を飲んだ。


「ぷはー! うめぇー!」


 やはり、風呂上がりは牛乳だ。


「✂晩御飯どうしますか?」


「松阪牛と魚沼産コシヒカリなら、生成出来るぜ?」


――魚沼産コシヒカリ!?


「カルローズ米で十分だ。安いし、モチムギや清酒と炊くとふっくらして美味い」


「✂倹約家らしくて、良い傾向ですね」


「はぁ!? つまんねぇっ! そんな地味な食生活なんか、誰も興味持たねぇだろ! 贅沢三昧して、画像盛りまくってXでバズれ!」


「バカヤロー! アメリカ産牛肉でも、充分美味いだろ!?」


「あー。そうかよ。じゃ、俺だけ松阪牛の自撮りアップして、食べるわ」


「✂私も、研究の為に松阪牛を頂きます」


「はぁ!? じゃあ、俺も食うから、ちゃんと、用意しろ――!」


 宿の大部屋で、三人ですき焼きを作った。魚沼産コシヒカリがふっくら炊き上がった頃に、輪廻がやって来た。


「良い匂いですね。今夜はすき焼きですか――是非、私もご相伴させてください♪」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ