第11章【番外編3】 佐貝の町に於いて
僕と石川は、佐貝の駅へと戻ってきた。とは云え、物理的には確かに戻ってきたのではあるが、下車したことは勿論無い。どうも此の駅は一般的な地上駅の様だったが、どういうわけだか改札は地下に在り、階段を降りて僕等は改札へと向かった。此の駅にはNRの職員は常駐して居らず、千布鉄の職員が改札業務を行っている。先に千布鉄で使うフリーきっぷも買っておこうと云う事で、改札にて「千布鉄一日乗り放題切符」を購入しようとしたところ、「元はちゃんと取れますか?」と駅員さんに聞かれた。ほぼ一往復するような物で元は取れるのだが、此の様な対応をする人は初めてであったので、非常に驚くとともに、面白い会社だと思った。
さて、発車まで三十分近くの余裕が在ったので、僕等は御手洗などの用事を済ましたあと、佐貝の町を歩いてみる事にした。普通に地方の小さな町と云う位で特筆すべき事項は無かったが、折角なのでツウィスター実況をしてみた。石川と話しながら、あまり人気の無い、とは云え生活感は感じられる、此の佐貝の町を歩いて居るだけの簡素な実況であったが、三、四人程が実況を視聴して呉れた。うち一人は、偶々なのだが佐貝出身らしく、「そろそろ郵便局が在る筈」「此処は昔パン屋だった」等のコメントをして、僕等を驚かせた。
発車約五分前に僕等は佐貝駅へと戻ってきた。僕は、手製のボード(ボール紙に輪ゴムが貼ってあり、画用紙で作った部品を挟める)に「次は」「千布駅」等の紙を挟み、次の実況は千布駅近辺で行う旨を宣伝して、実況を終わった。然し、駅まで歩くと駅の外観はよく見える物なのだが、コンクリート打ちっぱなしなのは特徴的だと思う。さて、駅の外の自動販売機で飲み物を買い足し、階段を降りて改札に向かった僕等は、先程の駅員さんにフリー切符を見せて改札を通り、千布鉄のホームへと向かった。千布鉄の駅名標は、NRの物と似ているが微妙に異なる。又、一応四カ国語に対応しているのだが、殆ど中国語と韓国語は剥がれて仕舞って居た。きっと後付けなのだろう。
何故か佐貝駅にはフリーWi-Fiが飛んで居たので其れを使ってツウィスターをして居るうちに、
〈間もなく、千布方面の、列車が参ります。prrr...〉
と云う放送と共に、千布行の列車がやって来た。人生初の千布鉄である。




