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脇役王女の王国奇譚〜乙女ゲーム? いいえ、現実(リアル)ですわ~  作者: ぶるどっく
*脇役王女暗躍編

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閑話四



 ……時は少しだけ遡り。


 ランスロットとミオンが事件を調べ、手掛かりを発見した日の夜。


 王都の端に有る、とある古びた屋敷。

 古い石の塀に蔓草が生い茂り、庭の中も背の高い草が生い茂っている。

 煉瓦作りの屋敷の壁に穴は開いていないものの、所々欠けた跡がある。

 幾つか有る窓硝子は割れている箇所も少なくはなかった。


「…………」


 そんな荒れ果てた古い屋敷に、人影が見えた。

 その人影は、暗闇の中を人目を忍ぶように屋敷へと入って行く男がいた。


「…………」


 薄暗く埃っぽい屋敷。

 廊下を歩くだけでギシギシと鳴る廊下の一番奥にあるボロボロの扉を迷うことなく開ける男。


「おやぁ……ひひっ!

 誰かと思えば、早かったですねぇ……旦那。」


 その部屋には、小さな蝋燭の明かりに照らされた二人の人物がいた。


「ちょうどいい塩梅に動けるようになった所ですよ」


 ひひっ!と嗤うのは、変形した鉤鼻が特徴的な初老の男。


「……仕上がりは?」


「ひひっ……ご依頼を頂いたようにしっかりと仕上げました」


 そして……もう一人は、薄汚れたシーツが敷かれた寝台の端に腰掛けた少女と見間違いそうな少年。


「…………」


 行方不明になっている王弟の次男、サミュエルだった。

 しかし、その瞳に生気はなく、何もない空間をぼうっと見詰め、ぶつぶつと呟いていた。


「扱い方は?」


「簡単で御座いますよ。

 ……薬を与えるご主人様の言う通りに行動するように躾けています。」


 鉤鼻の男が懐から、ゴソゴソと革袋を取り出す。


「この中にある丸薬を見せて命令をする。

 そして、丸薬をまず一つ与え、その通りに行動を出来たら、ご褒美にもう一つ与える。

 何も難しくない……それだけのことです。」


 革袋から掌に取り出した毒々しい色の丸薬。


「……そうか」


 怪しく笑いながら語る鉤鼻の男は、何処か自慢げだった。


「ただねえ……なんせ、急ぎ働きだったので、坊やにちょいと無理をさせやした。

 なので、薬をやる量には気をつけてください。

 ……あんまりやりすぎると、すぐに壊れちまいますから。」


 虚ろな目のサミュエルを顎で示す鉤鼻の男。


「この丸薬を扱うのは繊細な作業なんですよ。

 丸薬の量は多過ぎても、少な過ぎてもいけない。

 多いとすぐに狂って死んじまう。

 少な過ぎると、薬を欲しがって暴れて壊れちまう。」


 薬を欲して死ぬ奴らの末路も。

 薬を飲み過ぎて死ぬ奴らの末路も。

 どちらにしても、悲惨なものだと鉤鼻の男は知っていた。


「……その坊やを長く楽しみたいなら、一日六粒までですぜ」


「そうか、ご苦労だったな」


 一通りの説明が終わったと感じた男は、静かに懐に手をいれる。


「……それにしても、旦那も物好きですねえ。

 顔は女みてぇに可愛いからわかりますけど……まぁ、神に仕えている神官って言うところもなかなか……あ゛……」


 すぐにでも報酬を貰って雲隠れしようと考えた鉤鼻の男が、さっさとサミュエルを動かそうと意識を逸らしたその瞬間。


「しっかりと受け取れ。

 お前みたいな蛆虫に金銀銅はもったいない。

 ……鉄くれで十分だろう。」


 ズブリ……と深く、深く根元まで差し込まれた鋼の刃。


「や゛くぞ、くがちがっ……ぎひっ……!」


 身体の奥まで押し込まれた剣が、グジュリと抉られ湿った水音を立てる。


「っ……あ、ガ……」


 ずぷりと剣を抜き、縋り付いて来ようとする鉤鼻の男の身体に蹴りを入れる。


「…………」


 鉤鼻の男の息の根が止まったことを確認した男は、目の前で人が死んでも理解していない様子のサミュエルに舌打ちをする。


「……さっさと動け、愚図が」


「っ……ぁ、う……く、すり……」


 丸薬を見せた瞬間に必死の形相で手を伸ばすサミュエル。

 手渡された丸薬をガリガリと齧ったサミュエルは、男の命令通りに歩き出す。


「……コレさえあれば……あの方の憂いをなくすことができる……!」


 そんなサミュエルの姿を見た男の目に、何処か熱を帯びた妖しい瞳が輝くのだった。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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最後まで楽しんでいただけるよう頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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