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脇役王女の王国奇譚〜乙女ゲーム? いいえ、現実(リアル)ですわ~  作者: ぶるどっく
*脇役王女暗躍編

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第十九話



「父から書状をもらった時には驚きましたけれど……貴女が私に会いに来るなんて初めてのことではなくて?」


 後宮の一角にある薔薇園。


「……確かに、初めてのことですわね。

 お名前で呼ばせて頂いても構わないかしら……キャロライン・アーガスト殿。」


「王女殿下のお好きになさって下さいませ。」


 周囲か見渡せる広い薔薇園で、同じテーブルについた二人の淑女。


「ふふ……どうしてもお会いしたい理由がありましたの。

 ですので……私の側室候補に上がっているフォルト子爵に我儘を言ってしまいました。」


 背後に立つミオンの反対側。

 標準装備の胡散臭い笑顔を浮かべたアシュレイを、セレスティナはチラリと見やる。


「あら?

 弟に王位を譲ろうとして下さっていた可愛らしいお姫様とは思えませんこと。

 …………本当に、男の扱い方を心得ていらっしゃる。」


 改革派がジェダイトをセレスティナの伴侶に押し込みたいならば、穏健派はアシュレイを押し込みたい。

 しかも、一歩出遅れている穏健派のアーガスト侯爵ならば……どんな理由でも、セレスティナがアシュレイを引き寄せることに否は無い。


「お王位継承権を持つ者として、大変恥ずかしいですわ。

 同性の護衛を含め、周囲の方々に助けて貰いながら立っておりますもの。」


 男を利用することに長けている、と言葉の裏に棘を隠すキャロラインに、セレスティナは優雅に微笑む。


「……王女殿下は雰囲気が噂通り変わりましたわね。

 以前の王女殿下ならば……私に会おうなんて思わなかったでしょうに。

 それに……私に会いに来たなんて王妃さまに知られたら、どんな折檻を受けることやら……ね?」


「まぁ……!

 折檻なんて大袈裟ですわ。

 きっと王妃である母ならば、会ったということよりも、その会話の内容に着目しますわ」


 お互いに立場の仮面を被り、腹を探り合う。


「……無駄な時間は好まないわ。

 私のお気に入りの宝石商が来る予定なの。

 早く新しい首飾りも見たいし、指輪もいいわね。

 その宝石に合ったドレスも欲しいし……私は忙しいの」


 輝く宝石を想像したのか、楽しそうにキャロラインは微笑む。


「……だから、さっさと終わらせましょう。

 陛下の寵愛も薄く、息子を奪われかけている哀れな私に……何の御用?」


 先に動いたのは、キャロラインだった。

 セレスティナの目的を探ろうと、静かに凪いだ目を向ける。


「そうですわね、時間とは有限なもの」


 昼過ぎに玉座の間で行われるサミュエルに関する発表がある前に……出来る限りのことをしたい。


「ある事件が先日……起きました。

 犠牲になったのは、アーガスト侯爵家の影。

 そして……行方不明者が一人。」


「後宮から出ることの叶わない私には、関係のないことだわ」


 詰まらなそうに、ティーカップを口元に運ぶキャロライン。


「ピンクの薔薇の押し花」


 ティーカップが唇に触れる寸前で、キャロラインの手が止まる。


「薔薇の名前は多種多様です。

 それこそ、私や王妃の名前も数ある薔薇の名前のなかに含まれているかもしれないほどに……」


 ですが……とセレスティナはキャロラインを見詰める。


「ですが……アーガスト侯爵家の影が持つとすれば?

 レースのハンカチでくるんで持ち歩くほどに大切にするピンクの薔薇……」


「ピンクの薔薇、ねえ?

 押し花にしているということは、色は茶色にくすんでしまうわ。

 ……どうして、ピンクの薔薇と断定できるの?」


「確かに、色によっては変色しやすいものも有ります。

 ……ですが、赤、ピンク、紫系統の色は比較的分かりやすいのです。」


 見本を用意しましたわ、と幾つかの押し花を並べて見せる。


「アーガスト侯爵家のピンクの薔薇。

 ピンクの薔薇の名前は数あれど……アーガスト侯爵家の血を継ぐ者で、ピンクの薔薇の名を持つものは一人だけ。」


「"キャロライン"……つまり、私と言いたいのね」

 

 くだらない、とキャロラインは鼻で嗤う。


「たかが、影が持っていた。

 そんな理由でわざわざ私に会いに来るなんて、王女殿下は大変に想像力が豊かみたいですわね?」


 豊かで美しい髪を掻き上げ、艶やかな赤い唇を吊り上げる。


「可愛らしいピンクの薔薇など、艶やかで美しい私には似合わなくってよ。

 なぜならば、私は後宮で誰よりも美しく咲き誇る真紅の薔薇ですもの。」


 もう宜しいかしら?と挑発するように微笑んだキャロラインに、セレスティナも笑みを返す。


「"たかが、影が持っていた"」


 完璧な微笑を浮かべたセレスティナの言葉に、キャロラインの眉が微かに跳ねる。


「……それが何か?」


「"たかが、影が持っていた"……だからこそ、可笑しいのです。」


「……何が言いたいのかしら?」


 わかりませんか?と、セレスティナは微笑みを消し去り真顔でキャロラインを見詰めるのだった。




ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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