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脇役王女の王国奇譚〜乙女ゲーム? いいえ、現実(リアル)ですわ~  作者: ぶるどっく
*脇役王女暗躍編

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第十六話



「あ、あああのっ……?!

 わたっ、わたくし……っ……!」


 ジェダイトに押し倒されているのだと理解したセレスティナは、顔を真っ赤にして狼狽えてしまう。


「そのっ!えっと……!

 そう……そうですわっ!

 交換日記の返事もまだ渡しておりませんのにっ!

 幾らなんでも肉体関係を成立させることは早すぎると申しますかっ……!

 決してジェダを嫌っている訳ではないのですっ……!

 ですがっ!物事には順番というものが……」


 羞恥と焦りで目をグルグルとさせているセレスティナ。


「っ……く、くくく……」


「……ジェダ……っ?!」


 澄ました顔をして政治の盤面を読んでいた女と同一人物とは思えないセレスティナの可愛らしい一面。

 あまりにも男慣れしていない初心な反応に、ジェダイトは低く笑ってしまう。


「ジェダっ……からかいましたわね」


「ふっ……許せ、セレス。

 お前があまりにも可愛らしいゆえ、だ」


「うっ……」


 余裕たっぷりに男の色香を纏いながら笑うジェダイトに、セレスティナの心臓が何故か高鳴る。


「今日のジェダは、意地悪ですわ……!」


 唇を尖らせるセレスティナの上から、ジェダイトはさっさと身体を起こして寝台の端に座った。


「……それで?

 お前は何を、そんなに焦っている……?」


「っ……そのようなことは……」


「ほう?

 俺には、お前がアレも、コレもと自分の容量を超えて手を出しているように見えるが?」


 身体を起こそうとしたセレスティナを制して、ジェダイトが言葉を重ねる。


「セレスよ。

 意欲的に動き回ることを悪いとは言わぬ。

 だが……そのために、己の身を犠牲にすることは許容できん。」


「…………」


 ジェダイトが純粋に心配してくれていることが、セレスティナにも分かる。


 分かる、分かるのだが……


「…………やりたいことが、多すぎるのです……」


「……」


 迷った末に、眉を寄せてセレスティナは呟く。


「私は……私らしく生きていきたい。

 でも、今の環境がそれを許しません……私は一人の人として……その、笑わないでくださいませ!

 恋を……したり……誰かを愛してみたい……だけど……王座なんていらないのに……それを前提として異性をあてがわれる……」


 前世の記憶が蘇ろうとも、セレスティナはセレスティナだ。

 王族としての責から逃れることなど……許されない。


「ジェダ……あなたは私との婚約を迷惑ではないと言いました。

 ……でも、私のような面倒な女など……」


 王冠と玉座、数多の民の命。

 間違った選択肢を選ぶことは許されない重責。


 王になった者の命令一つで、沢山の命が失われるのだ。


「(……前世で重たい女、地雷女とかいう言葉は有りましたけど……私は、別の意味で重た過ぎる女ですわね……)」


 自分で自分を笑うしかない。


「攫ってやる」


「……え?」


 自嘲の笑みを浮かべ、諦めたように瞳を伏せたセレスティナの耳がジェダイトの呟きを拾った。


「……セレス、俺は言ったはずだ。

 お前との婚姻は迷惑ではない。

 お前の抱えているすべてのものを一緒に抱えることができぬほど、狭量で脆弱な男にみえるか?」


 伏せていた瞳を上げれば、揺らぐことのない強い意志を宿したアイスブルーの瞳がセレスティナを捉えた。


「お前が望まぬならば、女一人王家から攫って逃げ切ることが出来ぬほど弱くはない。」


「……ジェダ……?」


「ふっ!

 大陸一の王国相手に一花咲かせるのも面白いと思わないか?

 どちらにしても、お前が隣にいるならば構わん。 

 どのような未来や結末であったとしても、退屈はしないだろう」


 心底楽しそうに悪どい笑みを浮かべたジェダイトと横顔に、セレスティナは惚けてしまう。


「……ジェダ……ふふふ……二人で世界を見て回るのも楽しいでしょうね。」


 セレスティナの心に温かな火が灯る。

 前世の記憶を取り戻してから、ずっと追い立てられるように焦っていた心が静まっていく。


「世界を二人で逃げ回り、見果てぬ夢を追い掛ける……とても、魅力的ですわ。

 ですが……ジェダ、やはり私はこの国が嫌いにはなれないわ」


「それもまたよし…………さっさと寝ろ」


 話は終わりだと、セレスティナを見詰めるジェダイトの瞳。


「……ジェダが無理矢理私をここに連れてきたのだから、昔みたいに眠るまで側にいてくれますか?」


 ジェダイトの骨張った手を引き寄せ、セレスティナは子猫が甘えるように頬を擦り寄せる。


「……好きにしろ」


「ふふふ……ありがとう」


 柔らかく微笑んだセレスティナの瞼が閉じる。

 疲れていたのか、すぐに寝息を立て始めるセレスティナ。

 その体は微熱のせいで、少しだけ体温が高かった。


「……こちらの気も知らずに呑気な奴だ。」


 ジェダイトは、セレスティナの寝顔をジッと見詰めた。


「……子供騙しだが、駄賃がわりだ。

 ……次に俺の手を煩わせるときは覚悟しておけ」


 小さな寝息を立てて眠るセレスティナの額に、触れるだけの口付けを一つ落としたジェダイト。


 数秒にも満たない触れるだけの口付けを残して、ジェダイトはさっさと寝台を離れて行った。


「…………っ」


 仮眠室の扉が閉まる音が響いた瞬間。

 パチリと開いたセレスティナの瞼。


「…………なっ……か、覚悟って……?!」


 本当は狸寝入りをしていたセレスティナは、顔を真っ赤にして額を抑えてしまう。


「…………」


 扉を隔てた向こう側ではジェダが口元を押さえ、部屋の中のセレスティナの様子に低く笑うのだった。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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