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脇役王女の王国奇譚〜乙女ゲーム? いいえ、現実(リアル)ですわ~  作者: ぶるどっく
*脇役王女暗躍編

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閑話一



 太陽の光を反射して煌めく清流と瑞々しい木々が美しい森。


 兄妹神殿であるサーデス神殿とは真逆の場所。


 しかし、サーデス神殿よりは王都にほど近い場所にアミラス神殿はあった。


 重厚な石造りではあるが、何処か柔らかな雰囲気を纏ったアミラス神殿は、今日も静かな時を刻んで……


「ステラ・フェイツ!

 また貴女ですかっ!」


 ……刻んでなどいなかったのである。


「何度言えば分かるのですか?!

 掃除をするという行為は、その場を綺麗に整えるということです!

 余計に汚し、散らかしては意味がないでしょうっ!」


 初老の修道女。


 白髪交じりの髪をきっちりと纏め、神経質そうな面立ち。


 目尻を釣り上げて、ステラを叱るクラリス。


「うるっさいわね!

 この私がわざわざ掃除してあげたのに文句言ってんじゃないわよ!」


 アーガスト侯爵の手により、規律が厳しいアミラス神殿へと入れられたステラ。


 神官としての厳しい修行の毎日。


 娯楽など皆無。


 雑用と祈りだけの日々。


「床にバケツの水をひっくり返して水浸しにすることは掃除ではありません!

 それに、ほかの神官見習い達に水を組ませに行かせたうえに、掃除道具も散らかりっぱなしではありませんか!」


 最初はクラリスとて、この様な叱り方はしていなかった。


 絡まった糸玉を解きほぐすように。


 厳しくとも優しく教え、導こうとした。


「水汲みなんかしたら私の小さくて柔らかな手に豆ができるし、肌が荒れちゃうじゃない!

 他の神官見習いなんてっ!

 そこら辺の石ころみたいなもんなのだから、この私の役に立てたことを光栄に思うべきでしょ!」


 だが、何度も、何度もステラの心に寄り添おうとしても……本人がこの調子なのである。


「だいたいっ!

 この可愛くてか弱い私に掃除みたいな召使いがするでき仕事を任せることが可笑しいんじゃないっ!」


「何というっっ…………!」


「この可愛い私が我慢してこの場所にいてあげてるだけ頭を床にこすり付けて有難いって思いなさいよ!」


 クラリスの怒りが頂点に達する。


「なんて傲慢なっ……!

 そのような心根では神に仕える者として恥ずべきです!

 神の愛を学ぶためにも反省室にて一晩を過ごしなさい!

 もちろん、夕餉もなしです!」


 悲鳴を上げるようなクラリスの叫び。


「はんっ!

 お優しい神様とやらが聞いて呆れるわねっ!

 本当に優しいこの私が教えてあげますけど、それって監禁と虐待じゃない!

 自分の常識とやらが分からない相手を責め立てて罰を与えるアンタって何様よ!」


「あなっ、たという方は……!

 さっさと反省室へおゆきなさいっっ!!」


「言われなくても行ってやるわよ!」


 怒りのあまり言葉を失いかけ、体を震わせるクラリス。


 そんなクラリスを鼻で嗤って、ステラは捨て台詞と共に走り出す。


「なんなのよ!なんなのよ!なんなのよっ!!」


 走りながら、怒りに任せて目に付いたものを投げる。


「どいつもっ!こいつもっ!

 どうして私の思い通りにならないのよっっ?!」


 鼻息荒く。


 怒りを発散させるように暴れる。


「メイン攻略者(ヒーロー)でしょっ?!

 その取り巻きのハイスペックな攻略対象なんでしょっ?!」


 思い通りにならない世界に、苛立ちばかりが募る。


「なんで可愛い可愛い(ヒロイン)が不当な扱いを受けて可哀想な目に遭ってるのにっ!

 さっさと可哀想な私を助けに来ないのよっっ?!」


 肩で荒い息をつく。


 暴れて少しだけ溜飲が下がったステラ。


「……それも、これもっ……!

 全部っあの女がっ……!!」


 ギリギリと歯噛みする。


 その顔は、ヒロインと呼ぶにはあまりにも無惨だった。


「……役に立たない男どもに期待しても、無駄なのかしら……。

 でも、か弱くて可愛い私一人じゃ此処を抜け出せないし……!」


 爪を噛む。


 綺麗に整えていた爪。


 ストレスで爪を噛むようになり、綺麗だった頃との違いに更に苛立つ。


「…………いいわ。

 やってやろうじゃない……」


 ステラの瞳にギラギラとした光が宿る。


「どんな手を使ってでも、此処を抜け出して…………」


 思考を巡らせる。


「(一番役に立ちそうだけど、会うのが難しいのはライナス。

 ……フレドリックとダレンは何処にいるかしら?

 もしかしたら、ライナスと一緒?)」


 眉間にシワが寄る。


「一番……会いやすいのは、ルイス?

 あとは……父様に、何とかしてもらうしかないかなぁ……?」


 小太りで小心者の父親。


 だが、可愛い可愛い愛娘のためならば、命も投げ出すのが当たり前だろう。


「なんとかなる……!

 ううんっ! 何とかするのよっっ!」


 ヒロインとは程遠いニンマリとした笑み。


「だって……私はっ!

 この世界の一番可愛くて大切な存在のヒロインだものっ!!」


 この期に及んで、ステラは己の勝利を微塵も疑っていないのだった。


「…………」


 ……そして、そんなステラを静かに見守る女が一人。


 感情のない瞳で、ステラを監視するのだった。


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