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脇役王女の王国奇譚〜乙女ゲーム? いいえ、現実(リアル)ですわ~  作者: ぶるどっく
*脇役王女暗躍編

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第二話



「「………………」」


 意を決した様子のサミュエルの言葉に、アスランとアレクシェルは言葉を失ってしまう。


「……ずっと考えていたのです。

 僕はお父様が決めた婚約者である貴女のことが苦手でした。

 女性の身でありながら剣技を究めようと争いを好む気性や真っ直ぐに射抜くような強い言葉の数々。

 ……争いを好まず、神に祈り、他者を傷つけることを厭う僕とは正反対だと常々思っていました。」


 まるで生贄として魔王に捧げられる乙女のような覚悟を決めた表情でサミュエルは語る。


「……僕へ好意を向けて下さっていたアレクシェル嬢には酷なことだったと思います。

 ですが……これ以上、か弱く儚い一人の少女の不幸を見過ごすことはできません。

 貴女の、アレクシェル嬢の想い人であるこの僕が、アレクシェル嬢の好意に答え、生涯の伴侶として貴女を選びましょう。

 だから……アレクシェル嬢!

 貴女が愛する僕のために力を貸して下さい!

 アレクシェル嬢の父親である、陛下の覚えも目出度きバッファム第一騎士団長の言葉とあれば、陛下も無碍にはなされないでしょうから……」


 お願いします、とサミュエルは瞳を潤ませる。


 その姿はさながら悲劇の乙女(ヒロイン)のようだった。


「…………フォード副騎士団長」


 サミュエルの悲劇の乙女のような台詞を途中から俯いて聞いていたアレクシェル。


「バッファ……なっ、にを……?!」


 アレクシェルの声掛けに、己の一回りも二回りも予想を超えに超えまくったサミュエルの言葉に茫然となっていたアスランの意識が戻る。


「やめなさいっバッファム!」


 そして、次の瞬間には騎士団の制服を躊躇う素振りもなく脱ぎ捨てた、止める間もないアレクシェルの行動に白目を剥きそうになる。


「大変申し訳ありませんが、今この瞬間より第一騎士団所属アレクシェル・バッファムは休暇を取らせて頂きます。

 よって、この後の言葉の全てはバッファム伯爵家の令嬢としての言葉であり、私が護衛を務めるお方、並びに第一騎士団には全く持って関係ないことを宣言いたします!」


 第一騎士団のマント、騎士団の紋章が印字された腕章。

 騎士団としての正式な制服を全て剥ぎ取り、簡素なシャツとズボンだけになったアレクシェル。

 その瞳は、長い年月を静かに過ごしていた海底火山が爆発したかのように燃え滾っていた。


「サミュエル・ビルス・ベルフォート殿!

 いい加減、己の立場を理解せぬ言動を改めることをお勧めする!

 あなたの仰る女の身で争いを好み、他者を傷付けることを好む言動の女が、いつ何処で他者に依存的で甲斐性のない、口先だけの傲慢な(サミュエル)を愛していると言いましたか?」


「え……」


 アスランの制止を振り切り、堂々と仁王立ちしたアレクシェルは、真っ直ぐに燃え滾る瞳でサミュエルを見据える。


「以前より、どうして私があなたを慕っているとなるのかが、常々不思議で仕方がありませんでした。

 私とあなたの婚約自体がお互いの利点で結ばれただけのもの。

 しかも、あなたは王弟閣下の後釜として聖職者への道を歩む予定だったのでしょう?

 聖職者は基本的に婚姻はしない。

 だからこそ、王弟閣下も子息二人をもうけた後に正式に神の使徒となった。」


「それ、は……」


「あなたと私の婚約が結ばれた当時、既に私は武術の道を究める、騎士として立つと決まっていた。

 それゆえに、私とあなたの婚約はお互いに余計な虫がつかぬための一次的な婚約でしかなかった。

 それぞれの親から説明を受けたはずですが、学院を卒業後にあなたは別のご令嬢があてがわれる手筈だった。

 バッファム伯爵家としては、(アレクシェル)が騎士として励む以上、夫側には内助の功を求ます。

 逆にあなた側は、(サミュエル)が神官になっても子供を育て上げるだけの環境を持つ女性を求めていた。」


 お互いに理想の婚姻相手を探すための時間稼ぎ兼虫除けですよ、とアレクシェルは鼻で笑う。


「私が一度でもあなたとワルツを踊りたいと言いましたか?

 あなたにエスコートを願いましたか?

 誕生日に、婚約者同士が好みそうな催しで、あなたと会いたいと願いましたか?

 ……それが答えでしょうに。」


「ですが……いや、僕は、僕なりに……」


「私はあなたのそういう無条件に全てが己のために整えられ、好意を向けられ、己の道を飾ってもらえると思っている。

 その心根を出会った頃より、心底軽蔑していましたよ。」


「そんな……ひどい、あんまりではないですか……」


「酷い?

 この世が滅んでもありえませんが、万が一、億が一でも、あなたへ私が好意を抱いていたとして」


 一度言葉を区切ったアレクシェルは、まるで嵐の海のように激しい感情を乗せて断言する。


「相手の好意を利用して、己の欲を叶えようとする善人面をした貴様のような輩は虫酸が走る。」


「……嘘、でしょう……?

 だって……貴女は、僕の婚約者で……僕のことを好きなのは当然なことで……」


 アレクシェルの言葉にガックリと項垂れる。


「(……言い過ぎた、か?

 いや……そんなことはない、この程度でへこむ性格ではないな。)」


 項垂れたサミュエルの姿にアレクシェルの心に一瞬だけ罪悪感か湧くが、すぐに霧散してしまった。


「婚約者だからといって、愛し合う感情が伴う者たちばかりならば、この世は平和でしょうね。」


 事の成り行きを見守っていたアスランがため息交じりに告げる。


「サミュエル殿自身も"貴女(アレクシェル)が苦手"だと言っていたでしょうに。

 自分が愛さないのに、厭うている相手からだけ一方的に愛を捧げてもらえると無条件に考える。

 ……それが、貴殿にとっての神の愛とやらですか?」


「……っ」


 アスランのトドメの一言にサミュエルは言葉を失ってしまうのだった。



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