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脇役王女の王国奇譚〜乙女ゲーム? いいえ、現実(リアル)ですわ~  作者: ぶるどっく
*脇役王女暗躍編

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第一話



 王都から続く古い道を数人の騎士達が馬で駆けていく。


「頼もう!

 我らは第一騎士団の者だ!」


 彼らは古い石造りの塀に囲まれたサーデス神殿の門に辿り着くと、先頭の騎士が声を張り上げた。


「お待ちしておりました、第一騎士団の皆様。

 確認のためにお名前と許可証をお願いします。」


「代表者の第一騎士団副騎士団長アスラン・フォードです。

 許可証も此方に。」


「確かに。

 お待ちしておりました、副騎士団長様。

 どうぞ、こちらへ……。」


 門から現れた神官の一人が声を掛け、許可証を確認すれば神殿の奥へと促した。


「失礼します」

 

 華やかな王都の側に有っても、清貧を良しとするサーデス神殿。

 古めかしい石造りの神殿ではあるが、隅々まで掃除が生き渡り、素朴な野の花が飾られていた。


「……件の神官見習いを呼んで参りますので、暫しお待ちください。」


「わかりました。

 レパードとエルスマンは、バッファムを残して扉の前で待機せよ。」


 扉を開けた状態で案内役の神官と二人の騎士が部屋の外へと退室する。


「バッファム、理解していると思いますが……」


「副騎士団長、ご心配には及びません。

 私は彼に政治的な状況など、要らぬ情報を伝える気はありませんから。

 増してや、彼に同情するなど死んでもあり得ない。

 …………彼に同情して手を差し伸べるくらいならば、木の棒一本で魔物の群れに突っ込む方がマシです。」


 アスランと共にサーデス神殿を訪れた騎士のうちの一人、アレクシェルは凪いだ海のような瞳で答えた。


「……理解しているならば構いません。」


 アレクシェルの心の中を見透かすように、アスランの視線が射抜く。


「……バッファム、貴女も思う所は有るでしょう。

 しかし、彼は王位継承権を剥奪されてはいますが王籍は残っています。

 ……第一王女殿下の婚約者であるベルフォート第二騎士団長の立場も考慮せねばなりません。」


「はい、承知しております」


「…………」


 アスランは、静か過ぎる海のようなアレクシェルに内心で不穏なものを感じ取る。


「(……バッファム騎士団長よりお聞きした彼からの、サミュエル殿からの手紙の数々。

 あのような内容を婚約破棄になった元婚約者に向けて送る神経が理解できない。

 あの元第一王子の一件の際に、纏めて王籍から追い出しておくべきでしたね。)」


 判断が甘かった、と数ヶ月前のツケにアスランは心の中で舌打ちをする。


「お待たせ致しました。

 私は退席いたしますので、御用が済みましたらお呼び下さいませ。」


「…………!」


 案内役の神官に伴われ、サミュエル・ビルス・ベルフォートが現れる。

 扉の前の騎士達やアスランの姿に一瞬だけ怪訝な表情を浮かべたが、アレクシェルを視界に映せば、その表情に喜色が浮かぶ。


「では、失礼します」


 深く一礼をした案内役の神官が退室し、部屋の扉が閉められた瞬間。


「アレクシェル嬢!

 良かった……貴女へ何度も手紙を送ったのに返事がないので心配だったのです。

 何者かにより貴女の元へ手紙が届いていないのかと……。」


 アレクシェルとアスランの元へと足早に近寄りサミュエルは微笑む。


「貴女ならば婚約者である僕のために必ず力を貸してくれると信じていました。

 ただ、この理不尽な神殿より僕を連れ出すために近衛を連れて来るよりも先に、か弱いステラを助けることを優先して欲しかったです。」


 か弱い乙女を助けることこそ騎士の本分だとばかりにサミュエルはため息をつく。


「……このサーデス神殿に神の教えも愛もありません。

 有るのは理不尽で過酷な環境ばかり。

 僕と同じように神殿に入れられたステラも同じように辛い思いをしていると思うのです。

 だからこそ、アレクシェル嬢とは違いか弱く可憐な乙女であるステラを助ける方が優先だと思っていました。」


 少女のように整った顔に困ったような笑みを浮かべるサミュエルに対し、アレクシェルの表情は一寸たりとも動かない。


「サミュエル・ビルス・ベルフォート殿。

 陛下よりのお言葉をお伝えします。」


「え……?

 もしや……私達の無実が晴れたのですか?」


 アレクシェルよりも一歩前に出たアスランの事務的な言葉に対し、サミュエルの笑顔が輝く。


「此度の度重なる()()()()のアレクシェル・バッファム嬢に対する手紙の数々は陛下並びにクリストフ神官長がご覧になりました。」


「それは……」


 王だけでなく父親であるクリストフまでが己の書いた手紙を読んだことに驚いたサミュエルは、アレクシェルへ責めるような視線を向ける。


「陛下も、クリストフ神官長も大層お嘆きとなり、我らに貴殿に対し忠告の言葉を伝えるように、と。」


「っ……」


「陛下より、これ以上の失態を重ねるならば王籍の除籍を含めて検討する。

 アーガスト侯爵が用意したサーデス神殿にて、生涯を通して神への祈りを捧げ、奉仕の心を養うように、とのことです。」


「そんな……」


 まるで死刑宣告でもされたかのような表情を浮かべるサミュエルは、簡素な黄土色の服を握り締める。


「……サミュエル殿、陛下よりのお言葉は以上です。

 今日、この場にバッファムを連れて来たのは、陛下よりのお言葉を彼女も把握していることを示すため。

 そして、貴殿と彼女の婚約は陛下の名の下に正式に破棄されていることを貴殿に理解させるようにとのクリストフ神官長からの嘆願があったからこそ。

 そうでなければ、この場に彼女を連れて来る予定はありませんでした。」


「…………」


 アスランの言葉に俯き、微かに震えるサミュエルに対し、アレクシェルは一貫して無表情のままだった。


「では、陛下よりのお言葉は確かにお伝えしました。」


 必要なことを伝え終わったアスラン達は、俯いたまま震えるサミュエルをそのままに退室しようとした、その時……


「お待ちください!

 アレクシェル嬢、僕と結婚してください!」


 勢いよく顔を上げたサミュエルが意を決した表情で叫んだのだった。




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