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脇役王女の王国奇譚〜乙女ゲーム? いいえ、現実(リアル)ですわ~  作者: ぶるどっく
*脇役王女始動編

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第十七話



「ジェダ、ジェダイト……わ、わたくしは……!」


 青白かった顔を首筋まで真っ赤に染め上げ、セレスティナは何と応えていいか分からない様子で視線を泳がせる。


「わた、私は……こ、恋や愛は……その、異性を恋い慕う……ということが、わかりません……」


 赤く染め上げた顔、潤んだ瞳で困ったようにジェダイトをセレスティナは見上げる。


「そんな恋も愛も分からぬ私が、簡単にジェダの想いへ返事をしても良いのでしょうか……?」


「ならば悩めばいい。

 私への思いを考え、惑えばいい。

 焦がれるほどに愛する女の返事を待てぬほど、朴念仁ではない。」


 口角を上げ、冷たい微笑を浮かべながらジェダイトはゆっくりと体を起こす。


「焦が……あ、愛……」


「ほう……?

 余程、男慣れしていないらしい。

 この程度の言葉で戸惑うとはな。」


「致し方ないではありませんか……!

 私はもともと身体的な問題でも、政治的な問題を踏まえても、盤上に上がる予定ではありませんでしたもの!

 当然、綺羅びやかな王城の陰でひっそりと生きて、生を終える。

 そんな存在(セレスティナ)と婚約したい物好きはおりませんわ!」


 第一、とセレスティナは思う。


「(前世を引っくるめて恋愛などしたことがない私には未知の領域!

 せめて生まれ変わったからには結婚の一つもしてみたいと思っておりましたよ?

 でも!実際に恋愛感情を向けられるとは露ほどにも思っていなかったのだから致し方ないのです!

 ……昔から異性より同性にモテていましたし……)」


 服にシワができることも気にせずに、セレスティナはドレスをぎゅっと握り締める。


「(……前世の社会人経験はありますけど……仕事一筋だったお陰で同期みんなが結婚してもお相手なんていなかったし……。

 お陰で大きな企画とか完遂して職歴や経験は積めたけども……経験?)」


 そこまで考えて、セレスティナの脳裏に一つの考えが浮かぶ。


「……ジェダ」


「……なんだ?」


 何かを考えていたかと思えば、瞳を輝かせて己へ視線を向けたセレスティナに訝しげな視線でジェダイトは問い返す。


「私へ男慣れしていないと言える程度には、ジェダには恋愛経験があるのですよね?」


「…………」


「無言は肯定ということですか?

 では、その……ジェダ、私に恋愛を教えてくださいませ。

 どちらにしろ、私とジェダの婚約は決まっています。

 ならば、私が恋する相手は貴方がいいと思うのです。」


「…………」


 想いを告げられてワタワタしていた時とは真逆に、嬉しそうに微笑むセレスティナを前にジェダイトは脱力してしまいそうになる。


「セレスティナ、セレス……貴様は……いや、もういい……。」 


「どうしましたの、ジェダ?

 とても合理的な話だと思ったのですが……やはり私が相手ではお嫌でしたか?」


「……嫌ならば、最初から貴様の心配などせぬ。」


「心配してくださっていたのですか?」


「……くだらぬ問いに答える義理はない。

 くれぐれも……体を休めておくがいい。」


 ため息を一つついたジェダイトが、さっさとセレスティナへと背中を向けて扉へと向かっていく。


「ジェダ」


「……なんだ」


 しかし、その背に向かってセレスティナが名前を呼べば一瞬の間をおいて、ジェダイトは振り返ることなく答える。


「ありがとうございました」


「……ふん」


 そして、今度こそセレスティナの自室を後にするのだった。





「…………」


 背後でセレスティナの自室の扉が閉まり、部屋を出る前から気が付いていた気配へとジェダイトは視線を向けることすらなく立ち去ろうとした。


「お待ちください、ベルフォート騎士団長。

 ご教授を賜りたいことがあります。」


 しがし、その気配の持ち主であるアレクシェルが声をかけた。


「…………」


「え……ベルフォート騎士団長!

 私の声が聞こえていらっしゃいますよね?」


 声を掛けてきたアレクシェルへ視線をチラリとも向けることなく、当然ながらジェダイトは歩みを止めることもなかった。


「ベルフォート騎士団長!」


「…………」


 第二騎士団の詰所に向かって歩くジェダイトの後をアレクシェルは追い掛ける。


「………………」


「………………」


 途中より周囲の人間の目を気にしてか、声を出すことなくジェダイトの後に、アレクシェルは無言で付いていく。


「……何をしていらっしゃるのですか、ジェダイト様?」


「テレンスか。

 先ほどの件はどのように動いている?」


「ジェダイト様の予想通りに身柄は動いております。

 恐らくは、近日中に獄中死でもするのではないでしょうか。

 かの御仁は、その手の工作はお得意ですからね。

 ……死刑台へ登るよりも、かの御仁への恐怖に駆られ、自死を選ぶ者も多いと聞き及んでおります。」


 無表情のジェダイトに対して淡々と報告するテレンスの視線がチラリと動く。


「あの、ジェダイト様。

 彼女はいったい……?」


「知らぬ」


「っ……ベルフォート騎士団長、私はご教授を賜りたいことがあります。

 ご多忙かとは思いますが、どうかお時間を頂けないでしょうか?」


 よろしくお願いします!と頭を下げるアレクシェルに対し、ジェダイトは煩わしそうに眉間にシワを寄せる。


「私には護衛として足りないものがあるとおっしゃいました。

 騎士としての経験や実力は足りぬかもしれませんが、戦う者としての覚悟ならば私は……」


「話にもならんな……テレンス」


「心得ました」


 テレンスの名を呼べば、心得たとばかりにジェダイトへと頭を下げて応じる。


「っ……ベルフォート騎士団長、お待ちください!」


 興味もないと切り捨てるように騎士団の詰所へと入って行くジェダイトをアレクシェルが追い縋ろうとする。


「申し訳ありませんが、ジェダイト様は執務に向かわれます。

 ご要件はこのテレンスが承りましょう。」


 しかし、それをテレンスが大柄な体を持って物理的に阻止するのだった。




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