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第六話 異臭

洞窟内部はとてつもなく広く、まるで別の世界に来たかのようであった。


「こんな洞窟があったとは……」


「やっぱり広いすね……あっ……あそこ……親分、見えますか?」


「ん?ありゃあ……寺か?」


そこには一体いつからあったのか……外は苔や草木に覆われ、ボロボロになったお寺があった。


「?……あれはまさか人!?」


寺の横には、あぐらをかいて座り込んでいる人影があった。しかし、ピクリとも動かない……。


「お〜い!もしかしてあなたですか?さっ……き僕たちを……って、あああぁ!」


明次が尻餅をついて後ずさりした。


「なんじゃあ!?何があった!?」


「親分……これ……」


そこには白骨化した修行僧のような死体が座っていた……。


「こりゃあ……とんでもねえ宗教の一派かもしれねえなあ……」


「親分、もう帰りませんか?いくら何でもこれはただ事じゃないすよ……」


「いや……最後にこの寺の中だけは確認しよう。」


「親分……」


金丸は好奇心に歯止めが効かなくなり、ズカズカと前に進んでいく。

二人は苔が生えた寺の扉をこじ開け、中に入った。


「臭え……なんじゃ?死体でもあるんか?」


「入り口に骸骨ありましたし……あってもおかしくないんじゃ?」


中は薄暗く、鼻をつんざくような刺激臭が充満しており、大量のハエやウジが湧いていた。


「ゔぇぇ……本当になんでこんなところに……」


「おい、明次……前を見てみろ。」


正面には巨大な銅像が祀られていた。

しかし、その銅像の顔には、目と口と鼻が複数あり、それらを乱雑に配置したような異形の顔であった……。


「これは……何の銅像だ?」


「いや……顔も形も僕、こんな銅像みたことないすよ。」


「なあ……異臭はこの銅像からじゃねえか?」


「え?……まあ確かにここから臭いがしますけど、なんで臭ってるんすかね?」


「………おい」


「親分?」


金丸が驚いた顔で辺りを見回す。


「聞こえねえのか!?」


「何がです?」


「声だよ!声!もっと血が欲しいとか何とか言ってる声だよ!」


「いや?何処から聞こえるんです?」


「わからねえ。頭の中に響いてきやがる。だが……多分この銅像の腹の中からだ……」


「腹!?なんで腹から!?」


「知らねえよ!とにかく中を見てみりゃあ分かるだろ!」


金丸の目は、まるで何かに取り憑かれたかのように血走っている……。


「いや、見てみるって……どうやって?金属ですよ?」


「いや違う……金属じゃねえ……」


金丸は何かを決心したかのように銅像に向かって走り出し、勢いよく腹の金属部分を掴んだ。


すると……どういう訳か、銅像の腹はまるで生き物の皮膚のようにぐにゃりとひん曲がった。そして、金丸はそれを力一杯引っ張り、ついには引きちぎってしまった……。


金丸は引き裂かれたはらわたを片っ端から掻き出し続けた。腹の中からは、人間の衣服、腐った手足、臓器などが次々と出てきた。しかし、金丸はそんなものには見向きもしなかった。

まるで銅像の中から聞こえる何かを探し出すように……。


「親分!ソイツ何なんですか?」


「わからねえ……おい……あったぞ!」


「……あった?」


次の瞬間、中から大量の肉塊が津波のように押し寄せ、一瞬にして金丸を飲み込んでしまった。


「親分!」


「ヴォオオオン……ヴォオオオン……」


「ヒィィ!?コ、コイツ泣いてるのか!?」


銅像は顔にある複数の目玉から黒い液体を垂れ流し続け、赤子のように泣いている。まるで、人と動物が混ざり合ったような奇妙な声を寺の中に響かせていた……。


「親分はどこいった!?」


「……お〜い、ここだ〜」


「親分!?ご無事でしたか!」


金丸は、多量の返り血を浴びながら銅像の肉塊から出てきた。そして、その右手には血に染まった真っ赤な刀身が……。

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