布教と友達
「え!? つくりちゃんFRO始めたの!?」
あれからしばらく経った月曜日の早朝。陸上部の朝練を終えたばかりのつくりと、少し早めに登校してきた紬は、まだ数人しかいない静かな教室で『FantasyRecord:Online』について話していた。
「うん!めっちゃ面白かったよあのゲーム!!!」
「面白かったですか!!!よかったです!!!!」
目を輝かせて食いつく紬と、ドーナツを頬張りながらノリノリで話すつくり。つくりでいう面白いの基準は『作業が面白いか』なのであまり当てにはならないが、紬は驚きと嬉しみが混じったような声で話す。
「 それじゃあ、今度フレンド登録しませ__」
「おはようございます。つくりさん、紬さん」
紬が言いかけたところで突然、教室の後ろのドアから丁寧な声が響いた。
「あ、綾愛ちゃん! おはよう!」
「おはよー綾愛ー!」
登校してきたのは、学校でも有名なお嬢様でありつくりたちの友達・鶴岡綾愛だった。綾愛がそばに近づいてくると、ふわっと甘い香水の匂いが漂う。
「ところでお二人とも楽しそうですけれど、何のお話しをされていましたの?」
「実はですね、かくかくしかじかで……つくりちゃんがVRMMOを始めてくれたんです!」
「まあ! それはとても素晴らしいことですわ」
状況を理解した綾愛の顔が、パッと華やかに輝いた。
「そういえば綾愛ちゃん、この前VRの環境を整えたって言ってませんでしたっけ?」
「はい。機材は揃えたのですが、忙しくてそれっきりプレイできておらず……」
「えっ!? もったいな! 一緒に始めようよ!!」
「ええ、ぜひ! よければ今日、みなさんで一緒にログインいたしませんか?」
綾愛が優しく微笑む。再びおすすめのゲームを布教できた喜びからか、紬は人知れずガッツポーズを決めた。
だが、すぐに申し訳なさそうな顔を浮かべる。
「ごめんなさい…私、塾のテスト勉強で忙しくてしばらくゲームできそうにないんです…。つくりちゃんとプレイしててもらえませんか?」
「承知いたしましたわ。ではつくりさん、今日はよろしくお願いいたしますね」
「うん! わからないことがあったら何でも聞いてよね!」
微笑む綾愛に、つくりは自信げに言った。
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