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作業終了と強制ログアウト

挿絵はざわまえという人に描いていただきました!


[スキル【採掘 Ⅳ(さいくつフォー)】が最終レベル【採掘 Ⅴ(さいくつファイブ)】に上昇しました]


「はは…やった…」

 

 採掘開始から数十時間後。

 

 つくりは生気を完全に失い、死んだ魚のような目をしていた。

 つくりの身体を取り囲んでいるのは、放置したことでスタックした赤い警告パネルである。いくつも表示されているせいでアラーム音が重複し、とてつもなくうるさいが、もはやつくりには何も聞こえていない。


「___上に上がれない…」

 ぽっかりと空いた穴の上を、つくりは見上げた。

 垂直に掘り進めすぎたせいで、自力で上に上がれなくなっている。

 

 つくりは黙々と側面に階段を掘り始め、そのままゾンビのような足取りで受付へと戻っていった。


「採掘お疲れ様で〜す♡ 集めた鉱石を拝見しますね〜」

「……ん」

 NPCは透明なパネルを操作しながら手続きを進めていく。

 

「お、レアな鉱石も手に入れてますね♡ おめでとうございま〜す! 鉱石以外の石などはこちらで換金することもできますが、どうでしょうか〜?」

「…うります」

「わかりました〜♡ 審査完了ですので気をつけてお帰りくださいね〜♡」

 受付NPCは満面の笑顔で呑気に手を振る。 つくりは見向きもせず、フラフラとした足取りで出口へと向かう。

 鉱山を行き交うプレイヤーたちは、壁際へサッと身を引いてその異様な姿を二度見した。


「な、なにあの子…てか何あの赤いパネル…なんであんなにたくさん表示されてるの?」

「初期装備だし初心者だろ…? 一体何をどうしたらあんな事になるんだよ……」

「ていうか顔が…顔が完全に死んでる…関わらない方がいいって…」

 

 その時、限界に達したつくりの意識がブツッと途切れ、どさっと鈍い音を立てて倒れ込む。


「たっ…倒れた!?」

「えっ、何!? 」


 つくりの身体は一瞬にしてまぶしい粒子へと変わり、そのまま空気中に溶けるように消滅した。 いわば『強制ログアウト』である。


「……一体、なんだったんだ……?」

 残されたプレイヤーたちは、嵐が去った後のような静けさの中で、ただただ困惑していた。

 


◆◇◆◇◆


 

 真っ暗な闇。

 強制ログアウトを喰らったつくりは、何もない電脳空間を漂っていた。



[ログアウトを開始…10%…50%…90%…ゲームを終了します。] 


 

 体に重力と現実の感覚が戻ってゆく。



 カチ、カチと、静かな自室に時計の秒針の音だけが響いていた。 ゴーグルを外し、むくりと身体を起こす。



「……ドーナツ…食べたい……」

部屋の壁をぼーっと見つめながら、つくりはボソッと呟いた。



「……ドーナツ食べたいっっ!!!!!!!!!!!!!!」

 その瞬間、さっきまで死んでいたつくりの目に光が戻った。


 バタン! と勢いよくドアを開け、ドタドタドタと階段を駆け下り、荒い手つきでキッチンの戸棚をガサゴソとむさぼる。出てきたのは、買い込んであったコンビニのドーナツたち。 全て開封して平皿に山盛りにすると、一瞬で自室へと持ち帰った。


「うまーっ!!」

 大きな口でドーナツを頬張り、さっきまでの疲労など嘘だったかのように笑顔になる。


挿絵(By みてみん)


「やっぱり、頑張った後のドーナツはいつもの何億万倍もうまいっ!!!!」

 ふと壁掛け時計を見ると、ゲームを始めてから数時間しか経っていないことに気づいた。


「あれ? 体感では何十時間も掘ってたのに、あんまり時間経ってないや。なんでだろ?」

 まあいいか、と深く考えるのをやめ、ドーナツを完食したつくりはそのままベッドへダイブした。 窓の外はすっかり夜である。


「この莫大な達成感…これだから作業ってやめられないんだよなぁ…」

 心地よい満腹感と達成感に包まれながら、つくりは一瞬で深い眠りについた。


◆◇◆◇◆


 

 そのころ、とある二人のプレイヤーが日課の鉱石集めのために坑道の奥へと歩いていた。


「いつもの場所でいいよな?」

「ああ。あそこは人がいなくて集中しやすいからな。採掘にピッタリだ」

「どうした…って、うおあ!?」

 そこで二人が目にしたのは、底が見えないほど不自然にドカンとくり抜かれた巨大な穴だった。


「な、なんだこれ!?」

「昨日来た時にはこんなものなかったぞ…!? 何かのバグか…?」

 焦る一人が穴の側面を覗き込むと、壁面に削り出された階段のような足場が見えた。


「…いや、これ人が掘ったんだ。 ほら、この階段…人が出入りした形跡だろ」

「ええっ!? ああ、本当だ…」

「どうせ大規模クランが素材集めにやったんだろ…まったく、荒っぽいことするぜ。まあ、今日は場所を変えよう」

 二人は呆れ顔でその大穴を後にした。


「あれ、まさか一人で掘ったって可能性はありますかね?」

「あるわけねえだろ。どこの変態だよ」

「あははは!」

「ははは!」

 冗談めかして言った相方に、もう一人は呆れ気味に即答した。

 

 

 _____ちなみに、この大穴を掘ったのは紛れもなくつくりである。



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