279 ●征夷大将軍織田信長
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次回更新は12/14(日)
(1576 ●織田信長(43))
名古屋遷都計画の情報が拡散し、全国から寄進が集まってきた。朝廷は武家からの寄進を幕府に差し戻した。足利義元が将軍職を返上していたため、幕府の重職を担っていた織田陣営に皆が押し寄せることになった。一条氏、毛利氏、大内氏が信長支持を表明したことで、越後の長尾氏、関東の北条氏、九州の大友氏、島津氏も親書を送ってきた。朝廷は宮将軍を立てることを断り、織田信長に副将軍から征夷大将軍への昇任の打診があった。受けざるを得ない状況に追い込まれたのだ。年が明けたら征夷大将軍に任命されることになった。急速に拡大した支配域の管理、日々の謁見、増え続ける書類に目を通し、サインしていく。その上で将軍になることでの各種行事が割り込んでくることでパンク寸前である。最近の転生者同士の会合はお互いに愚痴のこぼし合いの場になっていた。
「織田家から管領も出すわけにはいかないと言って、こちらにお鉢が回ってきたが、慣れぬ業務で苦労している」
京都奉行だった一色義龍がこぼす。管領代は弟織田信行だったが、地方の守護や守護代からの窓口は家格の高い一色家にしてもらうことになった。
「光秀が補佐してくれているからなんとかなっているが、仕事は増える一方だ」
明智光秀は足利義元襲撃の首謀者(271話)として政務執事を解任され、一色義龍の一家臣として補佐をしていた。
「お役所仕事ばかりはうんざりだ。俺は戦場に戻りたい」
新たな京都奉行には幾多の戦場を渡り歩いた戦馬鹿の前田利益が就いた。前田家は加賀と能登を得ていた。前田家の家督は前田利益が継いでおり、前田利家は分家として別家を立て越中を任されて、越後の長尾家と対峙していた。
「業務が増えているのは一時的なものでしょう。地方の大名からの使者も減りつつあります。多くの寄進のおかげで当面の資金繰りに不安がなくなりました」
松平元康を三河から上京させ、遷都計画の指揮を執らせることにしていた。
「混乱の元凶は一条房基殿です。公家に混乱がなく、名古屋京への要望が多い。全国の大名からの寄進が多いのも、一条の連絡網で遷都計画が知れ渡ってしまったからです」
情報収集し、情報操作を担当しているのは、伊賀だけでなく甲賀も取りまとめるようになった服部正成である。元凶とは言い過ぎだが、一条房基の仕事が早いせいで予想以上に遷都計画が進んでいるのが誤算なのは確かである。
『一条便にはこれまでずいぶん助けられた。父信秀の代からの貴重な連絡網だった。中央の動静だけでなく地方の動きまで知ることができた。最初は疱瘡の対処法と石鹸の製法(113話)だったが、最新の医療や調薬の情報が届いたことで、多くの地域で多くの命が救われたはずだ』
「その一条便が届かなくなった地域からの苦情が届くようになりました」
一条家が織田家に臣従するとなったため、一色・織田の領地にある武家への一条便が途絶えたのだ。大きな寺社には届くが、時候の挨拶程度で頻度が減ったという。曰く、織田家に臣従したからには諜報と疑われる活動を控えるためとのことだった。苦情を上げてきたのは守護代を務める有力国人達であった。
「一条との調整は済みました。検閲した上で幕府の役人を同行させることで決着しました。役人の経費を捻出しなければなりません。想定される費用を提示されましたが、莫大な金額でした。商取引と平行して行っていたそうですが、赤字事業だったそうです」
数十か所への数ヶ月の旅費と手当。収集した情報の整理と管理を行う部門の維持。一条の影響力を薄めるために必要ではあるが、一条の負担を軽減することになる。
「一条の縄張り内でどんな話し合いが行われているか掴めない。情けないことだが、一条側からの申し入れで訪問者記録を提供してもらうようになったから、京にいる間は動静の把握だけはできるようになった」
服部正成が肩を落とす。これまで多くの配下が行方知れずになっている。帝の御所内の話などは筒抜けなのだが、一条の屋敷内は鉄壁のため、身分がバレている駐在員を置かせてもらっている状況である。
「裏の話もそうですが、表の話も深刻です。大名からの寄進の多くは土佐金や土佐銀と呼ばれている金板や銀板の貨幣です。一条が発行している元禄通宝への両替が保証されていますが、四国限定だったはずの通貨が商取引の主流になってしまっていることへの対処が必要です。皆さんのお知恵をいただきたい」
長い間、一条房基と経済交渉を行ってきていた兄津田信広が問題提起する。今回の会合は金融システムについての意見を出し合うことになりそうだ。
徳川家康が征夷大将軍になったのは1603年。1605年には秀忠に譲っています。豊臣家は徳川家の家臣ではなく、1615年の大坂の陣で滅亡。徳川幕府が全国統一する前に家康は将軍職を退いています。
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