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戦国クラス転生  作者: 月本 一
278/299

277 ●朽木元綱と一条房基

感想、誤字報告いつもありがとうございます。

次回更新は11/30(日)

(1576 ●朽木元綱(27))

 一条公から名古屋遷都の知らせと同時に協力の要請があった。朽木家は一条公に多大な恩義がある。一条公は知らぬ間に朽木家を支えてくれていたのだ(234話)。松永久秀殿との取引で5万石まで伸長した後(238話)、本能寺の変後に松永陣営から織田陣営に乗り換えたのは松永久秀殿の勧めであった。織田陣営が上洛時に協力しただけで越前敦賀郡を得た訳ではなく、硝石製造のノウハウを織田陣営に伝授したことで敦賀港から京への利権を得た(251話)。これもまた松永久秀殿の了承と指図を受けてのことであった。織田陣営に乗り換えたように見えていても、隣接する若狭に敵対されることなく協力体制が維持されていた。周辺地域に脅威がないために、織田陣営の能登・越中侵攻にも多くの兵を参加させることができていた。


 敦賀郡を得た後は松永久秀殿が開拓した北海道と東北との航路から、多くの物資が朽木領を通って京に運ばれるようになり、津料や関料で大幅な収益向上となった。織田陣営が畿内を平定するために多くの物資が運ばれることと重なって、国持大名よりも羽振りが良くなった。土佐出身の文官を受け入れたことで領内も大きく発展させることができた。織田幕府が成立し、関を廃止する命令が下るまで稼げるだけ稼ぐつもりでいる。


 情報は重要な武器である。一条公から忍者衆を譲ってもらい育ててきたが、名古屋遷都の話は知らせがあるまで把握できていなかった。織田陣営からは旧松永勢力として距離を置かれているせいだろうが、ここで深く食い込まないわけには行かない。巨大な利権が動くし、投資するだけの余剰資産はふんだんにある。


 京へ入ると遷都計画のおおよその概要が判った。竹中重治、織田長益、小寺孝高、真田昌幸らとチーム朽木を組んで、朝廷と幕府の橋渡し役を担う。飛鳥井家との繋がりもあって、官位が最も上である私が最年少ながらチームを束ねることになるそうだ。京に来て名古屋遷都の実現が現実味を帯びて感じることができた一方で、幕府の仕事と領主の仕事の両立は難しいと判断した。周囲は同盟国に囲まれ、戦が無くなっていく中で、朽木家が大きくなる為には幕府中枢部で功績を積み上げるしかない。そこで異父弟に家督を譲って朽木領を任せ、私は衆議員の議員として中央に残ることに決めた。朽木組の他のメンバーと比べてみると、朽木家はずいぶん裕福だった。一条公からの褒賞による大量の裏金もあったから活動の力になっていた。褒賞として麻酔薬と殺菌薬の情報への対価が大きかった(264話)。たとえ知識があっても開発や材料の調達が出来なければ実現できない。なお、殺菌薬の原料として交易品目が増えたという理由で、駿府の今川義元殿からも褒賞が送られてきた。


 これまでと違い、転生者同士で会合を持つ機会が増大した。知識と大局観を持つ相手との会話は楽しかった。一条公ともようやく直接会うことができた。毛利隆元殿や今川義元殿ともお会いした。四国を統一した一条公とは27歳差。8ヶ国を勢力下に置く毛利殿とは22歳差。今川義元殿とは30歳差。生年のアドバンテージ差を痛感させられる。朽木組と呼ばれる若手転生者達との会合を終え、初めて一条公と2人だけで話をする機会を得た。


『織田陣営に疑われぬように2人きりで会わないようにしてきたが、何か重要な話があるのか?』

 足軽や文官の多くが土佐出身者が多いことは知られてはいるが、領地が離れているため転生者達以外の織田家臣達には重要視されていない。


「指示されたように織田家臣から側仕えとして小姓を受け入れています。誰と会ってどんな話をしたかは伝わっているでしょう。ここでの話もこの後で重治(竹中半兵衛)と長益(織田有楽斎)に話をしておきます。私は織田派だと信じ切っているはずです」


『こちらは隠すことは何もない。これからもこちら陣営の会合で得た情報は細かいことでも全て話すがいい。向こうが疑心暗鬼にならぬようにしてくれ』

 一条公は織田陣営で得た話を聞きたがらない。重治や長益がいる場所でしか話さないように言われている。逆に私が知らない織田陣営の情報を、重治や長益に確認することがあるほどだ。一条公の忍者衆は優秀である。


「今日は琵琶湖運河についてご相談したいのです」


『琵琶湖運河?』


「敦賀と淡海乃海(琵琶湖)を繋ぐ運河の開発です」

 琵琶湖と日本海、琵琶湖と大坂湾、琵琶湖と伊勢湾をそれぞれ繋ぐ大規模な流通網の計画の話をする。松永久秀殿により若狭から北海道・東北の航路は開拓されていたが、江戸時代に北前航路とも呼ばれた下関を廻って大坂へ至る航路はまだ確立されていなかった。大坂に至る前に防土芸経済圏で航路が折り返していたし、1年1航路の長い間隔であった。


『巨大な事業だな』

 これほど巨大な開発に取り組む資金力があるのは一条氏しかいない。朽木家では街道を整備するので精一杯だ。投資に見合うだけの利益があることを力説した。


『・・・・今は名古屋遷都が何より優先される。・・・・一色と織田は琵琶湖と伊勢湾の運河を優先するだろう。琵琶湖と日本海はその次。だが繰り返しになるが、名古屋遷都が先だ』

 やはり難しいか。遷都計画さえなかったら動いてくれたのかもしれないが。


『名古屋遷都が無くとも防土芸同盟があるから、瀬戸内海の海運発展の妨げになる計画に乗るわけには行かない。逆に織田陣営に提案した方が良いだろう。朽木の利益だけでなく、毛利や一条の力を削ぐ計画として話をすれば、織田陣営での信用度が増すだろう。名古屋遷都が成功すれば、琵琶湖と伊勢湾を繋ぐ航路の現実味が帯びる』

 朽木領だけでなく、もっと広い範囲を豊かにすることを考えなければならないということか。

 朽木元綱の異父弟とは母が叔父と再婚してできた子。叔父は野良田の戦いで戦死し、元綱はこの時に11歳で元服(234話)した設定。


 殺菌薬はヨードチンキのこと。カジメを焼いた灰を使う。カジメの分布先として駿府・遠江=今川領。今川の貿易赤字解消に一役買った設定。


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― 新着の感想 ―
ちょうど別作者さんの作品でも琵琶湖運河について計画されてますね。 天下人として京-近江を中心に考えるあちらの主人公さんと西日本中心の地方領主で地盤を持つ一条家ではむしろ自分たちの首を絞めかねない点でも…
有名武将ばかりが取り沙汰されるけど戦国のキーマンになるポテンシャルがあった人達って本当に沢山いたんだなあと痛感する
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