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戦国クラス転生  作者: 月本 一
275/299

274 遷都奏上と評議院

感想、誤字報告いつもありがとうございます。

次回更新は11/09(日)

(1575 一条房基(53))

 足利義元と将軍職返上の協議を重ね、なんとか義元の周防下向に漕ぎ着ける。御所守備に出していた一条兵を引き上げることができた。難問が一つ片付いたところで、四摂家の当主達を集めて遷都構想について伝えた。帝へ奏上する前に根回しが必要だったからだ。


 利点を強調する。戦のない世の到来、帝の下で国が一つにまとまり、帝の威光が高まる。寺社とのしがらみの多くを断ち切れる。変わろうとしなければ何も変わらない。遷都は10年20年単位の大事業であり、京に残る者も多いだろう。織田勢力の意志は固いが、武家はこれまで通り簡単にはまとまらない。公家に少しでも有利に進めるためには、公家側は一つにまとまる必要がある。譲位の話はまだ想像できる話だったろうが、遷都となると400年ぶりの事だ。それぞれに考える時間が必要であろうから、質問は受け付けずに解散をした。


 翌日には早くも朝廷から呼び出しがかかった。四摂家だけでなく、それぞれの前当主や左大臣、右大臣、内大臣などが待ち構えていた。

「昨日話してくれた遷都についての件だ。我らだけでは手に余る。申し訳ないが主上にお伝えした。聞きたいことが山ほどある」

 関白二条晴良が話を進める。


『お気持ちはわかりますが、遷都は幕府側の考えであって、私も驚いています。朝廷との橋渡し役を引き受けましたが、まずは少数の公卿にお伝えして、考えをお聞きしようと相談したまでなのです』


「房基公は賛成なのか?」


『400年ぶりですが、遷都はこれまで何度も行われています。京の地は度重なる戦乱で傷だらけです。今は平穏ですが、この先も何度も戦火が訪れるでしょう。新たな地で再出発することには意義があります。朝廷には力がありませんが、武家が望むならば任せてよいと思います』


「福原京のように失敗するのではないか?」


『福原京の時代は平清盛公一人に力が集中していました。それでも不完全でしたが、遷都は行われました。織田氏は足利氏とは違い、副将軍の織田信長は評議をまとめている代表者に過ぎません。仮に信長殿が倒れたとしても、誰かが後を引き継ぐ体制が既に出来上がっていますので、彼らの考えを止められるとは思えません。何より戦のない世を作る未来像を共有していることを私は高く評価しています』


「彼らを信用できるのだな?」

 帝が直接声をかけてくる。


『信用できます! 違えるようならば、私は全力で立ち向かうとお約束いたします!』

 強い意志を表に出して伝える。


「房基がそう言うのならばよいであろう。譲位の話よりも更に心が躍った。この先どのようになっていくのか?」

 帝が乗り気になってくれた。これまで信頼を積み重ねてきた甲斐があった。


『まずは名古屋に行宮(あんぐう)を建てさせます。内裏を移建し、八省院を再建します。順調に進んだとしても遷都が始まるのは5年先ですので、何度か行幸していただくことになると考えています』


「八省院?」

 誰かがつぶやいた。


『大極殿や朝堂など朝堂院を再建します。織田氏は朝廷と合議の上で政を進めるつもりのようです』


「仙洞御所はどうなる?」


『遷都にかかる費用は莫大で想像もつきません。譲位は遷都を済ませてから行い、仙洞御所は新都に用意した方がよろしいかと考えます。遷都は偉業ではありますが、混乱と困難が伴います。全てを終わらせてから、新しい世を親王様に引き渡すべきではないかと思います』


「京はどうなる?」


『平城京から長岡京、長岡京から平安京に遷都したように、都は移っても京の街は残ります。奈良のように寺社だけが残った古い都の跡になっていくでしょう。今の御所は離宮に改修され、数年に一度行幸なされる場所になるのではないかと思われます』


「我らはどうすればよいのだ?」

 関白二条晴良が問う。


『まずは幕府側とよく話し合うことです。内容次第では遷都を中止させ、仙洞御所を用意させて譲位を手伝わせる選択もありうると思います。譲位の準備のための官吏が動いていると思いますが、遷都の準備に業務を変更しても、それだけでは人員が足らなくなるでしょう。公になれば国中から寄進が集まるでしょう。寺社の多くは反対するでしょうから、陳情に対応する部署も必要になるでしょう。何が起こるか私にもわかりません。肝心なのは幕府側に主導権を完全に渡してしまわないことです』


「房基公はこちら側だと考えてよいのだな?」


『・・・・私は推進派です。最悪、必要最低限の物しか持ち出せないかもしれません。皆さまにも多少の痛みを伴う覚悟はしていただくことになります。ただ、幕府との仲介役が私一人だけでは難しいので、ご協力をお願いいたします』


「何をすればよい?」


『・・・・幕府側ではなく朝廷の味方になる武家を増やします。昇殿できる官位を数名に与えていただきたく思います。それから、なるべく早く現地の視察に人を派遣してもらいます。できれば陰陽道に詳しい者を加えていただきたい』

 まだ若い朽木元綱(26)や毛利配下の小寺孝高(黒田官兵衛)(29)に昇殿可能となる従五位下の官位を与えて、朝廷とのパイプ役を手伝ってもらうつもりだ。遷都が終わるのは少なくとも10年先。新都が落ち着くのは20年先だろう。私は最後まで見届けることができるかどうかわからない。次代を育てなければならない。


 その後も多くの質疑があったが、遷都に関してはわからないことばかりである。各家の蔵に保存されている過去の遷都に関する記録を調べてもらうこととした。帝が遷都に好意的な意向を示したことで、朝廷は遷都に向けて動き始めることになった。


 朝廷側の予想以上に早い反応は幕府側に驚きをもって迎えられた。信長達と相談の上、将軍不在となった二条城に朝廷と武家の代表者達との協議を行う場所を整えてもらった。朝廷側は中納言以上の参議が中心で、武家側は幕臣と相伴衆や御伽衆などに加えて、力ある大名が京に詰めさせていた京家老達も加えた。朝廷側だけで協議する場所は参議院、武家側の協議する場所は衆議院と呼んだ。相伴衆や御伽衆には隠居したり廃絶した大名の旧臣以外にも、商人や僧、茶人や伝統芸能の文化人までもがいた。そのため当初は席を用意するのに苦労するほどの大所帯だったが、数度の会合を重ねる間に職務の重責に耐えられず、辞する者が続出した。


 参議院と衆議院の代表者が協議する場所は評議院と呼んだ。衆議院の代表者はほぼ転生者が占め、参議院の代表者は四摂家当主と関白や大臣達であった。

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― 新着の感想 ―
結局朝廷は房基に丸投げじゃねえか。房基が協力してくれなかったら何もできなかったな
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