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戦国クラス転生  作者: 月本 一
218/300

217 ●毛利元就土佐見聞録その2

感想、誤字報告いつもありがとうございます。

次回更新は10/13(日)

(1559 ●毛利元就視点)

 高智大学校での最初の講義は吉田郡山城の戦いについてであった。立体的に作られた吉田郡山の地形を中心に当時の状況を語る。驚くほど精密に作られた巨大な模型に鳥肌が立った。攻略相手である月山富田城の模型を贈られた時(208話)はその有用性に感謝の気持ちが先だったが、自らの居城の模型を前にすると空恐ろしい気持ちになる。20年ほど前の戦いではあったが、戦いの経緯をまとめた日記を幕府に送ったことがあり十分な資料があった。これまでに多くの学生が吉田郡山の戦いについて検討し、議論を戦わせてきたという。今回の講義には若い学生ではなく、教える側の人間が多く参加していた。質疑の内容は鋭いものが多かった。講義に参加していたのは土佐の人間だけでなく、留学中の毛利家臣の子や土佐で保護されている尼子家臣達もいた。多くの者にとっては生まれる前の戦いであったが、尼子家臣の一部には参戦していた者もおり、敵方からの貴重な証言を得ることもあり、濃密な講義となった。


 次の講義は月山富田城の戦い。尼子氏が敗けた戦いではなく、大内義隆殿が攻め寄せ、敗走した戦いである。これには尼子晴久の遺児である義久・倫久も参加していた。16年前の戦いであり、義久は当時3歳、倫久はまだ生まれていない頃の話である。大内軍が敗走し、多大な損害を出した戦いであり、大内義隆殿が謀反を起こされる遠因となった戦いでもある。土佐からは戸次鑑連殿が参加していた。当時、土佐からの後方支援を取りまとめていた将である。後方で何が行われていたのか、敗走時に何が起きていたのか、貴重な証言を得ることとなった。尼子側が勝った戦とはいえ、追撃戦で多大な損害を出した詳細を初めて聞くことになった。毛利勢が無事撤退できたのは土佐の遊撃のおかげであったと改めてはっきりと認識することになった。戸次殿の名前を知るようになったのはもっと後のことになる。豊後大友氏への傭兵部隊を指揮しており、各地で連戦連勝の猛将である。肥後では国人の謀反が頻発しており、戸次殿がいなければ大友氏は筑後・肥後を維持できなかったであろう。


 尼子家臣達と交流する貴重な機会を得た。仇敵として強い恨みを表に出してくることはなかった。もちろんこちらは十分に警戒している。彼らにしてみればここで私の首一つ取ったところで意味が無いとわかっているのだ。尼子3兄弟とともに土佐に移った人数は500を超える。彼ら全員を巻き込むわけにはいかないだろう。数カ所に分かれているとはいえ、それだけの人数を受け入れる一条家の懐の深さに驚嘆する。簡易的とはいえ衣食住を支える力の凄さは上に立つものでなければはわかるまい。尼子家臣達からは毛利家に対する恨みよりも、一条家への感謝の言葉が多い。妻や子だけでなく、年老いた親世代までも受け入れ、農業指導をして生活基盤をきめ細かく支援しているようだ。野分(台風)の被害には驚いたそうだが、雪のない冬を全員越すことができたらしい。もう出雲へ戻ることはないだろうと語った尼子義久の目には強い光が宿っていた。驚くことに尼子家臣達には鉄砲の教練が行われていた。訓練所限定とはいえ、槍や弓も持たされ、土佐流の戦のやり方が指導されていた。尼子氏の新しい安住の地を手に入れるために戦場で手柄を立てるために真摯に取り組んでいるらしい。そこには毛利家への怨讐に囚われずに前に向く姿があった。


 一連の講義を終えて土佐での滞在が終わったところで上洛の誘いを受けた。定期便に便乗して京へ行くつもりはないか、と。60歳を超え、この機会でなければ京へ上ることはないだろう。行くとなれば帝への拝謁の手配もしてくれるという。至れり尽くせりの旅になりそうだ。一条房基公への恩義は積み重なるばかりである。

尼子3兄弟は長い幽閉の後に毛利家の客分や家臣となり、尼子氏の血を後世に繋いていきました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 戦闘を後から振り返る事は敵味方ともにあるでしょう。 ですが学びとして敵味方双方の視点で当事者の意見が聞けるのは得難い経験でしょう。 どうしても自分たちの側から…
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